朝陽が差し込むベッドルーム。

ほんの少し早めに目覚めた朝は・・・あなたを観察するのが私の楽しみ。   










寝起きのあなた 〜忍足編〜










くーくーと。気持ち良さそうに眠ってる彼。
起きている時は色々な表情を見せる瞳も今は閉じられている。


長めの前髪が頬にかかるのを、そっとどける。
男の人にしては柔らかな髪。


『何の手入れもしてないんやけどなぁ』と悪戯っぽく笑った顔を思い出して、ちょっと悔しかったりする。


ねぇ?あなたの無防備な寝顔。私以外に何人の人が知ってるのかしら?
思うたびに切なくなるの。


私が知らない時間。約束のない夜。
あなたは誰の傍で眠るのかしら。


そんなことを考えてたら、目の奥がつーんとしてくる。


馬鹿ね。
あなたにとっての私と。私にとってのあなたは違うことぐらい知っているのに。


想う気持ちを秤にかければ、明らかに私の方が重い。
けれど、それをあなたに知られたら。
すぐに別れが訪れるだろう。だから・・・儚い繋がりを少しでも長引かせるために心を隠してる。



遊びのフリ。軽く別れられるフリ。



彼の前では決して呼ぶことのない名前を呼んでみる。
今だけ、ホントの想いを込めて。



「侑士・・・綺麗に別れるから。もう少しだけ・・・傍にいさせてね。」



囁けば。自分の掠れた言葉が胸に迫って泣きたくなった。
溢れる涙を我慢していたら詰まった息が声になりそうで。
慌てて温かいベッドから起き上がる。


リビングで泣こう・・・と、薄い陽射しが射すフローリングに素足をおろした時。
後ろから腕をつかまれた。


振り向けなかった。振り向けば、涙を見られてしまう。
体を硬くして呼吸を整え、できるだけ普通の声を出した。



「ごめんなさい、起こしちゃった。私、喉が渇いたから水を飲んでくるわ。」
「・・・。こっち向いて。」


「いやよ。忍足君に朝の素顔見せるの恥ずかしいわ。」
「ええから、こっち向いて。」


「顔・・・洗ってからね。」
っ」


「イヤッ」



つかまれた腕を引っ張られて、無理矢理体を捻られる。
強い力で後ろを向かされと思ったら、顎をつかまれて固定されてしまった。


私の顎を掴んでる彼の手に、頬の涙が落ちていく。



「俺・・・寝起きが悪いんやけど。」
「そう・・ね。」



マジマジと私を見つめてくる彼の瞳。
泣くような女は嫌いでしょ?
そんなうっとおしい女とは、すぐに別れるんや。って、酔って話してたよね?


私。そんな女なの。だから、もう。傍にいられないね?



「けど今朝は、あまりの衝撃で一気に目が覚めた。」
「そう。」



ポロポロと。もう、涙は止まらない。
ああ、侑士の髪が跳ねてる。
これが最後になると思えば、そんな姿さえ愛しくて。



「綺麗に別れるって?その前に名前を呼ばれたのにもビックリしたけど。それ以上のビックリや。」
「そう・・」



もう何の言葉も見つけられないの。
私の顎を押さえていた手は滑り落ちていって肩に置かれた。
薄い布越しに感じる彼の体温も愛しいの。



「俺な、」
「ん。」



私は目を閉じた。彼の終わりの言葉を聞くために。



「絶対に別れんで。」



え?なんて・・・言った?



「絶対、離さへん。は・・・俺のやからな。」
「おしたり・・」



混乱する私が名前を呼べば、肩に置いた手が体を引き寄せて。
一瞬で彼の胸に抱きしめられた。



「侑士って呼ぶんやないの?っていうか、呼んでくれ。」
「どうして・・・」


が遊びや言うから。仕方なく、そんなフリしてただけ。いつか本気にさせてやるつもりやったん。
 本気になってくれたと思うてええんやろ?やっとやのに・・・絶対離してたまるか。」



ぎゅうぎゅうと抱きしめながら、余裕なく早口で話す彼。
私は唖然としながら、されるがままに抱きしめられていた。



「ゆ・・うし?」
「ん?なんですかぁ?」



返事をしながら耳にキスしてくるのがくすぐったい。
彼の声が弾んでいるように聞こえるのは気のせいじゃないみたい。



「寝惚けてないよね?」
「当たり前やっ。そっちこそ。寝起きでおかしくなってたとか言うんはナシやで?」


「大丈夫・・・だと思う。」
「だと思うは、やめてくれ。なぁ、好きって言うて?本気で・・・俺が好きやって聞かせて?」


「侑士・・・は?」



ガバッと、胸から引き剥がされた。
涙は止まって、鼻をグズグズ言わせながら彼を見つめる。



真っ直ぐ私を見て、瞬きもしないで・・・彼が口を開く。



「寝起きでもっ大好きやっ!」



泣き笑いで告げよう。子供みたいな恋人に。


すれ違った想いは同じだったのだと。
ずっとずっと、本気で愛しているのだと。


寝起きのあなたに。


素直に告げよう。


それが許されるのだと・・・寝起きのあなたが教えてくれたから。




















「寝起きのあなた 〜忍足編〜」

05.2.24

きゃっ/////(by 沙羅)




















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