お見舞い 〜乾編〜










「やあ。。どうだい?」
「い・・・乾君?」
「ん?どうした?そんなに驚いて?」



そりゃ、驚きもするでしょ?片想いの相手が、突然自分の部屋に現れたら。



「どっどうしたの?」
。どもってるけど大丈夫かい?俺は・・・お見舞いだけど。」



言いながら。スポーツバッグの中をごそごそとやっている。



「お見舞い?」
「風邪で休んでいると聞いてね。我が部のマネージャーが休むとは大変なことだと思って・・・
 ほらっ。乾特製のスープをね。」
「・・・・・・。」



ベッドに起き上がって乱れた髪を直しつつ。つい、無口になる。


乾君は好きだけど。彼の作るものは・・・ちょっと。
いや。でも、どんな理由であれ、彼が私を心配して来てくれたことは嬉しい。本当に。



「で?症状は?」
「あ・・・熱と喉が痛いのと咳。」
「ふむ。まっ、いいだろう。予想どうりだ。今、流行している風邪の症状だね。」



何かしきりに頷いている乾君。
テニスだけじゃなく、巷に流行っている風邪の症状までリサーチしてるんだ。凄い。



「じゃっ。飲んでもらおうかな。」
「えっ・・・あっ・・うん。」



一瞬ひるんでしまった。その一瞬を乾君は見逃さない。



。心配しなくてもフツウの味だよ。
 不二に飲ませたら、しっくりしてなかったようだから大丈夫だ。
 アイツが『うまい』と言ったら作り直すつもりだったんだけどね。」



そ・・それって。不二君はどういう基準なわけ?


目の前で大きな水筒のカップに注がれるスープを見つめていた。
差し出されたカップから昇る湯気。コンソメの柔らかい香りがした。


それより。大き目のカップを包んでも、まだ余ってる乾君の大きな手。
節ばってるのに長くて綺麗な指に見入ってしまう。



?」
「あ・・・いただきます。」



乾君の指に触れないように、注意してカップを受け取る。
ドキドキする胸を押さえつつ。スープに口をつけた。


乾君はベッドサイドの脇に膝をつくと、じっと私を覗き込む。



「美味しい。」



美味しかった。野菜を煮込んであるんだと思う。あっさりしてて、とても飲みやすかった。


目に見えて乾君が脱力した。



「よかった・・・」と小さくつぶやいている。


「乾君?」
「いや・・・。不味くて、君に嫌われてしまったらどうしようかと。良かった。」



驚いた。まさか、乾君がそんなふうに考えていると思ってなかったから。



「ああ。気にしないでいいから。飲んでくれ。」
「・・・うん。」



気になる。もの凄く・・・気になる。


でも。私がスープを飲んでるのを、乾君は飽きもせずに、じーっと見つめるから。
なんだか緊張してくる。



「ご馳走様でした。」
「どういたしまして。」
「今度。なにか・・・お礼するね。ありがとう。」



乾君が手を差し出すから。また、その綺麗で長い指に触れないようにカップを渡そうとした。


が。渡そうとした手は、乾君の綺麗な手に掴まれる。
空のカップがフローリングに音をたてて落ちた。



「いっ、乾君!」
「風邪のとこ悪いんだけど。お言葉に甘えて、お礼を貰ってもいいかな。」
「え?あっ・・・何っ」



もう頭はパニック。掴まれたままの手。膝立ちの乾君の顔はすぐそこだし。
頭に血が昇ってきて、何が何やら分からない。



が欲しいんだけど。」
「え?」
「だから。君がお礼に欲しいんだけど。ダメかな?」



・・・・・・ワ・タ・シ?



固まった私の指を。今度は両手で包み込んだ乾君が少し俯いた。



「こんな言い方じゃ・・・ダメか。じゃあ、次のパターンで。」
「へ?」
「お礼というには図々しいのだけど。付き合ってくれないか?」



・・・・・・つきあう?



「これもダメか。じゃあ、最終パターンで。」
「あ・・・いや・・・」



。君が好きなんだ。何とかならないかな?」



・・・・・・なんとでも。なります。





そうして私は。スープのお礼に、乾君に貰われた。




















          「お見舞い〜乾編〜」

          2004.11.15




















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