「お見舞い 〜景吾編〜」










「おい。毎年毎年、よく飽きもせずに風邪ひくな。」
「好きでひいてるんじゃないもん。」



私の枕もとで、すんごく偉そうに仁王立ちになって腕を組んでいる人。
幼馴染で、同級生で、恋人で、婚約者の彼。



「毎日遅くまで何やってたんだ?ああん?」
「へっ?」
「お前の部屋に明かりがついてんの、俺の部屋から見えるんだよっ」



げっ。おそるべし。
あの広い敷地の跡部邸。私の家が向かいにあるとはいえ、距離がある。



「望遠鏡でも持ってるの?」
「バカかっ!」



真面目に聞いたのに、怒られた。
熱があって頭痛いのに酷い。布団を鼻まで引き上げて、肩をすくめる。



「で?何やってたんだ?」
「内緒。」



途端に景ちゃんの眉間に皺が寄る。ブルーがかった瞳が細められて・・・綺麗だけど、怖いかも。


だって。今、言ってしまってはダメなの。せっかく頑張ってるんだから。
なのに。景ちゃんときたら・・・ちっとも分かろうとせずに怒り出す。



「はーん。俺に隠し事をする気か?いい度胸だな。」
「そうじゃないけど・・・今は言えな・・・。ケホケホッ。」



私が咳をしている間に。事もあろうに人の机を物色し始める景ちゃん。
思わず飛び起きた。



「景ちゃんっ!いくら景ちゃんでも、私の机を勝手に荒らさないでよっっっ」
「やかましいっ!お前は、俺のもんだ。俺に隠し事なんかしていいわけねぇだろっ」



うそ・・・。なんて・・・独占欲。


呆気にとられているうちに。机の下に置いてあった紙袋を見つけられてしまった。



「あっっ!ダメっ!景ちゃん!」



ガサガサガサ。



言って聞く人ではないと。物心ついたときから知っていたけど。
人間、少しは成長するものでしょ?景ちゃん。外見ばっかり成長して、中身はあの頃のままじゃないっ。


景ちゃんは、袋を覗き込んで。少し手を突っ込んでマジマジと見つめた後。
黙って元に戻して、紙袋を机の下に置いた。



そして一言。



「見てねぇから。」  見たじゃないっっっっっっっ!



けれど。振り向いた景ちゃんが。笑ってた。


笑いながら近付いてくると、大きな手で私の頭を撫でた。
ベッドに起き上がった私の後頭部に手を添えて。そっと、背中を倒してくれる。


寝かせた私の額に手をのせると。ちっ・・・と舌打ちをした。



「バカ。慣れねぇことするからだよ。」
「酷いよ。せっかく、驚かそうとしたのに。」



恨み節でつぶやいたのに。景ちゃんは目を細めて笑う。



「クッ・・・。心配すんな。先取りで驚いたからよ。」
「そんなの。バレンタインデーじゃないと意味がないもんっ」


「いや。バレンタインデーに出来上がってたら、また驚くぜ。」
「ホント?」
「ああ。」



仕方ない。見られてしまったからには、せめて・・・絶対っバレンタインデーまでに仕上げて見せる。





景ちゃんにプレゼントするためのマフラー。



「とにかく寝ろ。まだ熱が高いぜ。」
「うん。」



言いながら。景ちゃんが額に軽く触れてくる。さらっと前髪を寄せられた。



「無理すんな。」
「うん。」


「あと・・・」



景ちゃんの顔が近付いてきて。思わず、ぎゅっと目を閉じた。


軽く額にキス。



「あんま、可愛いことすんなよ。我慢できねぇ。」



囁きに目を開けると。すぐ近くに景ちゃんの顔。


次に降ってきたキスは唇に。



また。熱が上がった。




















          「お見舞い〜景吾編〜」  

          2004.11.15




















          テニプリ短編TOPへ