だいすき










「凛ク〜ン」



声をかけて家の裏にまわれば、開け放した居間の真ん中で凛クンが大の字になって寝転がっていた。
沖縄では鍵をかけるとか窓を閉めるなんて考えはないのだろうか。
まるでオープンハウス状態だ。



「凛クン?おーい!」



庭から声をかけたけど凛クンはピクリともしない。
タンクトップと短パンからは日に焼けた長い手足が気持ちよさそうに伸びていた。



「寝てるの?入っちゃうよ?おじゃましまぁす。」



一応は声をかけてサンダルを脱ぐとお家にお邪魔する。
そろそろと膝で這うようにして凛クンに近づけば、やっぱりと溜息が出た。


この暑い中で思いっきりお昼寝してる。
凛クンの勝気な瞳は閉じられ、薄く開いた唇からは穏やかな寝息が洩れていた。


めったにない部活のお休み。
デートの約束を忘れて寝てても無理はない。
体の心配をしてしまうほどにハードなテニス部の練習を毎日のようにしているんだもの。


起こすのは躊躇われ、私は凛クンの頭もとに座って起きるのを待つことにした。
居間から見る庭は、鮮やかなハイビスカスやブーゲンビリアの花と一緒に濃い緑の草木が好き放題生えている。
都会で見る様な手をかけられた庭ではない。だけど居心地の良い自然の調和に心が安らぐ。
何処からともなく潮の香りを含んだ風が吹いてきて頬を撫でていった。



「いい風・・・」



独り言を呟いて視線を落とせば、初めて見る凛クンの寝顔がある。
そよっと吹いてきた風に綺麗な金髪の前髪が揺れた。


ちょっとした好奇心。
凛クンの髪に触れてみたいと前々から思っていた。
私の髪には何かと理由をつけて触れてくる凛クンだけど、私からは恥ずかしくて触れたことがなかった。
そっと伸ばした指で畳に流れる金髪をすくう。



「うわ・・・サラサラなんだ。トリートメントでもしてるのかな。」



嫉妬しそうな髪の手触りを楽しんでクスクス笑い。
凛クンがお風呂でマメにヘアケアしてる姿を想像したら可笑しくなった。


今度は凛クンの睫毛がとても長いことを発見。
つけ睫毛なんか絶対いらないよねと羨ましく思いながら顔を近づける。
正座した膝の上に肘をついて、マジマジと整った顔を観察した。


普段は見たくても見れない顔。だって恥ずかしい。
キスをする時だって凛クンに笑われてしまうほど必死に目を閉じているんだもの。



「凛クン、綺麗な顔してるんだ。美人さんだね。」



うーん、なんか私って負けてる気がする。
私なんてフツーの容姿だものとヘコミそう。
それでも『お前、可愛いしよ』と他所を見ながら言ってくれるのが凛クンだけど。



「ゴメンね。私は美人じゃないけど・・・凛クンのことは大好きだから。」



普段なら言えないコトをボソボソと呟いて、少しだけ汗ばむ凛クンの額の髪をどけようとした。


その時だ。
畳に投げ出されていたいたはずの凛クンの手が一瞬で私の手をつかむ。



「なっ!?」



いったい何が起こったのかも分らないうちに引き寄せられ前のめりになった私。
咄嗟に凛クンの上に倒れてしまうと片手をついたけど、その努力も虚しく顔を彼の胸にぶつけてしまった。
温かい手のひらが私の頭と肩をしっかり押さえているのを感じて一気に頬が熱くなる。



「捕まえたぜ。」


「待って、あの・・放して!」



寝ている凛クンの胸に抱きしめられてバタバタと暴れるけれど逃げられない。
胸からは鼓動と一緒に凛クンの笑い声が響いてくる。



「ここで放したら、やぁは飛び逃げるだろ?」
「だって、」


「わんのこと大好きなんだろ?なら、おとなしくするやっし。」



ハッとして顔を上げる。
そこには憎らしいほど嬉しそうに笑ってる凛クンの瞳があった。



「い、いつから起きてたの?」
「さぁなぁ。ま、トリートメントなんて面倒なコトはしてないけどよ。」


「ええっ、」



ほとんど最初からじゃない!
恥ずかしさのあまり暴れる私を無視して、凛クンは余裕綽々で笑っている。



「やぁは充分に美らさんさぁ。わんが言うんだから間違いない。」
「も・・もう分かったから放して?お願い。」



恥ずかしさのあまり半分泣きが入ってる私の髪を撫でては笑う人。
こんな真昼間に開け放した凛クンちの居間で抱きしめられているなんて、考えただけで顔から火を吹きそうだ。


フッと腕の力が抜けた。
解放してくれたんだと急いで身を離せば、凛クンが起き上がる。


良かったと思ったのは僅か数秒。
起き上がった凛クンに肩を掴まれたと思った時には視界が回っていた。
目の前には凛クンの真剣な顔と肩から落ちてくる金髪。
凛クンの後ろには木目が年代を感じさせる天井が広がり、背中には畳の感触。


自分の状況が分かった時には頭の中が真っ白になっていた。



「好きさ」



凛クンがボソッと呟く。



「わんもが大好きさ。」


「凛クン・・・」



凛クンの真っ直ぐな瞳から目を逸らせない。
そっと優しく頬を撫でられて、ゆっくりと近づいてくる凛クンに瞳を閉じた。





大好きよ。
とてもとても大好きなの。


だから、ずっと私のことも好きでいてね。





柔らかく重なってくる凛クンの温もりに心から願った。




















だいすき 

2007.06.29




















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