間接よりも










カタカタ・・・と、静かな部屋にキーボードの音が響く。
生徒会の規約変更をまとめている私。


その横、手塚君は難しい顔で書類に目を通している。
テニス部のレギュラージャージで、遅れて生徒会室に入ってきた彼。
こもった生徒会室に、外からの風を連れてくる。


彼がいるだけで。ピン・・・と空気が締まる。
会長の登場に、皆が一斉に書類を持って集まってきた。


その横で、私はひたすら書類作りをしていた。


しばらく周りに集まっていた人々も、彼が用件を片付けるたびに減っていく。
そして、気がつけば。副会長と、私と、手塚君だけになっていた。



「じゃあ、俺。このぶんを先生に確認してもらって、いくつかコピーして渡してくるよ。」
「ああ。頼む。」



副会長が、手にした書類を束ねると出て行った。



そして、静寂の生徒会室。
キーボードを打つ音と、手塚君の紙をめくる音しかしない部屋。



さすがに肩が凝って。手を休めて、肩に触れる。
ふと、唇が乾燥しているのに気がついて、リップクリームを出してきた。
ディスプレイに隠して、さっと唇に塗ったところで。



、できたのか?」



机に置かれた大きな手。
後ろから覗き込んできた、手塚君の手だった。
自分の肩が、手塚君の体に触れそうで。ドキドキしてしまう。



「あ・・・うん。今、打ち間違いがないかチェックしてるところ。ただ、ここがね。気になって・・・」



言いながら、手にしたリップクリームをキーボードの上に置いて。
手塚君の手がすいたら聞こうと思っていた件を訊ねてみる。



「かまわない。が言ったように直してくれ。」
「了解。」



忘れないうちに直しとこ。



早速、打ち直そうとしたら。節があるけれど綺麗な指が、キーボードに伸びてくる。
その指は、私のリップクリームを持っていってしまうから。



「借りるぞ。」



慌てて振り向けば。なんでもないことのように、リップクリームを自らの唇に塗る彼。



「て・・・手塚君っ!」
「なんだ?」


「それっ、私のっ」
「知っている。外にいると、どうしても唇が荒れる。」



そんな問題じゃないでしょう?と、言いたいのに。
あまりに平然としている彼を見て、言葉も出ない。



「何を今さら恥ずかしがってるんだ?」



手塚君が、リップクリームをキーボードに戻す。
そして、事務椅子を後ろから強引に反転させた。キュッ・・・と椅子が悲鳴を上げる。



「ちょっ・・・」



抗議しかけた言葉は、彼の唇でふさがれて。
肩に置かれた手塚君の手が、やけに熱かった。


彼の体が離れていくと、ギシ・・と事務椅子が鳴る。
咄嗟に閉じた、瞳を開ければ。


ほんの少し、口元を緩めた彼の顔。



「信じられないっ。ここ、生徒会室よ?学校で・・・。会長自ら・・・もうっ。」
「生徒会の規約に加えておくか?」


「手塚君っ」



く・・・と笑って。また、伸びてくる手。
髪を撫でて。その手が頬に下りてくる。



「これでも気を使ってるんだ。荒れた唇では悪いかと思って。リップクリームも塗った。」
「それも、私のをね。」


「重ねれば、どうせ・・・同じになる。」



言いながら、また近づいてくる彼に。
今度は、おとなしく目を閉じて。柔らかな口づけを待つ。



「間接よりも。やっぱり、直接がいい。」



彼の囁きに。



もちろん・・・と。私も答えた。




















間接よりも 2004.12.04 沙羅も?

沙羅もっっ!!




















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