「誓い」〜番外編〜 
『覚悟』









『手塚、本当にいいのか?』



との結婚を決めたとキムラに打ち明けた時、彼は真剣な顔で俺に聞いた。
頷けば、一つ溜息をついたキムラ。



『お前の想いの深さには恐れ入ったよ。おめでとう!』



そう言って、俺の肩を叩いてくれた。





 私は、国ちゃんと一緒の時間は生きられないの!
 いつかは・・いつかは、国ちゃんを置いて死んじゃうんだからっ!





恋人は言った。
俺のもとから去っていた理由は薄々感じていたけれど、実際に彼女の口から聞くと僅かながらショックをうけた。


だが、もうとっくに覚悟は出来ていたんだ。
真実も知っていた。


が命をかけて手術に臨んでいる間、俺はの母親から医師の説明を聞いていた。
それは、そう。が俺に言った通りのことだった。


手術さえ成功すれば健康体になれると勝手に思い込んでいた俺には衝撃だった。
辛い手術に耐えて尚、延ばせる時間に限りがあるだって?
普通に人が得る全てに制限があるなんて。



「命さえ助かってくれればと思っていました。命が救えたら、今度は一日でも長く。
 そして、人並みの幸せを・・・と、際限なく願ってしまう。人って欲深いものですね。」



の母親は閉まった手術室のドアを見つめながら涙を流した。


その願いが欲深いとは思えなかった。
切実な親の願いを誰が非難できるだろう。俺だって、同じ思いなのだから。



俺は心臓疾患と手術、術後の後遺症や生活について調べ始めた。
もちろん、には内緒でだ。


知りたくもない真実が目の前にある。
それでも目を逸らすわけにはいかなかった。



が帰国してから後の時間は、にとっても俺にとっても必要な時間だったかもしれない。
俺は彼女の身体のことを知り、俺にできることを考え覚悟をする時間だった。
も自分の体を知り、それでも俺と共に生きるための覚悟を決める時間だった。



後悔などするものか。
俺は今までも、これからも、自分の信じた道を歩いていく。
信じて歩く道にの命が加わった。



俺はもっと強くなるだろう。
守るべき人がいる。


時間は一秒も無駄にはしないだろう。
愛する人を愛するために。


明日の事など誰にも分かりはしない。
のことだ、なんだかんだと言いながら俺より長生きするかもしれない。
いや、明日には突然の大地震でもやってきて二人一緒に死ぬかもしれない。



未来があると思うから限りある全てが悲しい。
だが、限りがあると知っているから、全てが愛しく輝かしくもあるんだ。





「国ちゃーん!」



今日もが笑う。
俺の名前を呼ぶ。
甘えて腕に手を絡ませる。



この幸せを俺は一日でも長くと願う。



何があろうと受け止める。
強い覚悟と共に。




















誓い番外編『覚悟』

2006.05.03




















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