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病院・診療所火災

H5-04       07'11/11                  転載を禁ず  

 病院・診療所火災の主な事例
年月日 場所 名称 死者 傷者 焼損床面積 推定原因
1 S30,06.18 市川 市 式場精神病院 18 947 不明
2 S35,01,06 横須賀市 衣笠病院 16 2,566 石油ストーブ
3 S35,03.19 久留米市 国立療養所 久留米病院 11 1,223 不明
4 S35,10.29 守山市 香流精神病院 5 429 放火
5 S37,01.25 狛江市 佐藤病院 7 3 979 放火
6 S39,03.30 伊丹市 常岡病院 9 3 681 不明
7 S44,11.19 阿南市 藤井精神病院 6 5 606 放火
8 S45,06.29 佐野市 両毛病院 17 1 305 放火
9 S45,08.06 札幌市 手稲病院 5 1 224 放火
10 S46,02.02 岩沼町 小島病院 6 299 不明
11 S48,03.08 北九州市 済生会 八幡病院 13 3 888 蚊とり線香
12 S52,05.13 岩国市 岩国病院 7 5 465 ローソク
13 S59,02.19 尾道市 青山病院 6 1 160 不明
 主な病院・診療所の火災です。原因推定は、主に消防白書から取っています。
 東京消防編「火災から学ぶ−安全へのアプローチ−<病院・社会福祉施設編>」から参考しています。 
  病院の火災による法令改正

 @ S48,03.08  北九州市・八幡病院火災
      (1階診療所で使用していた蚊とり線香が原因とされている。)
    通報の遅れと初期消火の失敗で、延焼拡大しさらに、防火区画の不備で
   耐火一部木造5/1の2F,3F,4Fへと拡大し、多数の死者がでた。
     S49.07.01法令改正。SP等消防用設備の設置強化。
                 
 病院・診療所
 ☆ 医療法(昭和23年7月30日法律第205号)により、病院とは、20人以上の患者を入院させる施設を有する
   ものであり、診療所はそれ以下の施設となっている。
   また、助産所は妊婦等10人以上の入所施設となっている。
   病院、診療所以外に、産院、療養所、診察所、医院があるが、これらの名前は他に使用してはならないことに
   なっている。
 ☆ 病院は、近代的なビルの形態を有するものと、旧来の施設に木造等の看護師寮や給食施設を渡り廊下など
 で接続しているものなどがあり、その形態はさまざまです。

 ☆ 消防設備がSPを中心として設置されている病院は、階段等に対してもホース式の2号消火栓が設置されてい
 るなど、設備的に完備している所も多くあります。
 
 ☆主な火災事例では、消火の失敗が延焼拡大を招き、その後の「避難誘導」ができていないことから、多数の死傷
 者を出しています。特に、精神病院は、建物内の各病室の構造的な制約から、避難が遅れて惨事となっています。
  病院・診療所の火災の実態      転載を禁ず

 @ 病院別火災

 H9年〜H18年の10年間の
 東京消防管内の264件の火災から。

      
 
  
  図1のように、一般病院が
 54%と最も多く、次いで精神病院です。
 一般病院の母数が多いことから比較す
 ると精神病院での火災件数が多と言え
 ます。また、一般診療所や歯科診療所
 などもそれぞれ10年で30件近い火災
 が発生しています。

 

 A 出火場所別火災
  
  H9年〜H18年の10年間の
 東京消防管内の264件の火災から。

 
 
 
火災件数
病室 68 26%
玄関・廊下・階段 33 13%
便所・洗面所 26 10%
診察室 24 9%
休憩室・詰所 22 8%
手術・処置室など 17 6%
電気・機械・ELV 16 6%
台所・湯沸し室 13 5%
その他 45 17%

 図2から、1/4は病室からの出火です。
 玄関ホール・階段、便所、診察室などが
 平均して出火場所となっています。
 つまり、病院・診療所内であれば、
 どこが危険化と言うより、どこからも
 火災の危険がある、と考えるのが普通で
 です。
 
 B出火原因の実態
 
H9年〜H18年の10年間の
東京消防管内の264件の火災から。


 

 図3のように放火が47%と最も
 多く、特に精神病院の火災では
 87%が放火による火災です。
 また、最近は配線・配線器具から
 の火災、医療用機器からの火災
 も増える傾向にあります。
 このため、出火場所も電気・機械
 室からの出火が増えています。
 特に、病院は高度医療機器が
 増え、それに伴う、電気配線など
 も増えていますが、十分な施設
 管理がなされていない所でこれら
 電気に関する火災が増える傾向に
 あります。
 医療機器では、消毒機器6件、
 X線装置4件、光線治療器3件、
 が多いです。
 
 C 初期消火活動

 
10年間の消火した火災242件に
  ついて見ると、
 消火あり・成功 73%
 消火なし     21%
 消火あり・失敗  6%
 となっている。 つまり、9割は消火でき
 ている。
 消火あり・失敗を見ると、
 H9年〜H13年の5年間と
 H14年〜H18年の5年間では、
 {H13}では、8%であったものが
 {H18}では、5%と逓減しており、
 結果として、消火あり・成功の率も
 {H13}では66%が{H18}は80%と
 なつている。
 防火管理における病院・診療所の
 高い認識が表れている。

 D 初発見後の活動
 
 火災を発見ごの行動では、
  火事ぶれなどを優先   39%
  消火活動を優先      35%
  119番通報を優先    18%
  その他            8%
 と、なっている。
 火災を発見したら、まず「火事ぶれ」に
 より多くの職員への報知をしている。
 これらは、火災の状況にもより、どれが
 適切かはさだかではないが、結果として
 このような統計結果となつている。      

 E 避難誘導の活動

 H9年〜H13年の5年間と
 H14年〜H18年の5年間では、
 {H13}では、431人の避難であ
 ったが、
 {H18}では、1,107人の避難を
 している。それだけ、粗衣禁の火災
 では、適切な避難がなされている
 とも言えるし、また、避難を必要と
 する「火災」が増加しているとも
 言える。
 
 ☆ 有人直接通報システム
 これは自動火災報知設備が作動
すると連動して、音声装置で119番
 通報がなされるもので、火災時通
 報の遅れを防止するために病院等
 に設けられている。
 年間約10件近くの通報がなされ
 ています。だいたいが、初期消火
 に成功しているケースが多いです
 が、万一の場合は、早い消防活動
 が確保されます。

 本資料は、東京消防の「火災の実態」から、取ったものです。