VFM(バリュー・フォー・マニー)


瀧口信二

VFMの考え方は公共事業にPFI方式を導入する際の判断基準として脚光を浴びました。即ち、従来の公共事業のLCCとPFI事業のLCCを比較し、VFMの優劣を判断します。以前からB/C(費用対便益)やV/C(費用対価値)の指標がありましたが、同類の考え方です。
今回は、VFMについて基礎的な考え方をおさらいしたいと思います。

VFMの内容

VFMは支払い(Money)に対して最も価値の高いサービス(Value)を供給するという考え方です。従来の方式とPFI方式を比較して、総事業費を削減できる割合を数値で示します。PFI方式の過程において5W1Hを当てはめ、VFMの内容を紐解いてみます。

  • Who(誰が)

  • 発注者 PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)は公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資金、経営能力、技術的能力を活用して行う手法です。国や地方公共団体等が直接実施する従来の手法と比較して、効率的かつ効果的に公共サービスを提供できる事業にPFI方式が適用されます。
    故に、公共事業の発注者がPFI導入の可能性を検討する時に、どちらが効率的で効果的かを判断する指標としてVFMを算定します。

  • Why(なぜ)

  • 前述の通り、国や地方公共団体等が直接実施するより、民間事業者が行う方が低廉かつ良質な公共サービスが提供される事業であることを確認します。
    PFI方式の導入の背景には、国・地方共に財政が厳しく、コスト縮減を図る必要性が高まったことと、小さな政府を目指すため可能なものは官から民へ事業主体を移行させるという行政改革の方針が打ち出されたことがあります。
    低廉かつ良質な公共サービスの尺度としてVFMが用いられるが、今のところ質を計る尺度がないため、同質であることを前提にコスト(マニー)を尺度として比較することになります。
    コストは数値で表せるので、客観的なようにも見えるが、使う側の意図により操作が可能なので、慎重な対応が求められます。

  • When(いつ)

  • VFMの算定は、企画段階のPFIを導入するか否かを判定する時の想定のVFMと民間事業者が決まった後の結果による実際のVFMがあります。
    企画段階ではPFIを採用した場合のLCCを求めるのが難問です。従来の公共事業のLCCは過去の実績等により推定できますが、PFIのLCCは民間ベースの実績を参考にして想定しなければなりません。PFIの実績が増えてくれば、想定の精度も上がってくるものと思います。

  • Where(どこで)

  • VFMの算定は実績等のデータが揃えば、どこでもできます。

  • What(何を)

  • VFMは、公共が行った場合とPFIで行った場合の、それぞれが提供するサービスの価値とLCCを比較します。
    サービスの価値を計ることは困難が伴うので、一般的には同じサービスの質・量を維持しながら、どれだけLCCに差が生じるかを比較することになります。

  • How(どのように)

  • まず、公共発注者において、どこに・何を・どの程度の規模で・どの位の費用をかけて・いつまでに建設するか等の建築企画を立案します。
    公共建築の類似の実績データ等を分析し、イニシャル・コスト(設計費・建設費等)とランニング・コスト(維持管理費・運営費等)から従来の公共事業のLCCを計算します。
    PFIにより民間事業者が実施した場合を想定し、民間建築の類似の実績データ等を調査し、同じ機能・性能を保持することを前提にPFIのLCCを計算します。
    従来の公共事業のLCCとPFIのLCCを比較し、その差額の大小でVFMを算定します。

VFMの算定

  1. 計算式

  2. VFM VFMは次の計算式で求めます。

    VFM(%)=(従来の公共事業のLCC−PFIのLCC)/従来の公共事業のLCC×100・・・・・式(1)

    ・LCCは、設定した事業期間にかかるすべての収入・支出を集計したコスト
    ・総支出は、設計費・建設費等のイニシャル・コストと維持管理費・運営費等のランニング・コストと金利等を集計
    ・総収入は、貸しスペースの賃貸料・利用者料金等の収入の集計だが、同じ機能・性能としているので、従来の公共事業とPFIの総収入は同じと仮定

  3. LCC(ライフサイクルコスト)

  4. 建物のLCCは建物の生涯に必要なすべての費用(施設の企画・設計から建設、維持管理、修繕、解体・撤去まで)だが、PFIのLCCはPFIの事業期間中の費用の合計だから、事業期間終了後から解体までの費用は含まない。
    また、事業期間のLCCを現在の価値に置き換えるので、将来の物価上昇率等を考慮した割引率を設定して計算する。

ケース・スタディ

これまで建築生産のプロセスをケース・スタディしてきた可部駅ビル(仮想)をPFI事業として整備すると仮定します。
オーナーであるJR西日本(公営と仮定)が主体となって整備するのではなく、民間事業者(特別目的会社・SPC)に施設等の建設、維持管理、運営等を任せて、JR西日本は駅関係室をリースして賃貸料を支払う事業方式(BTO)と想定し、VFM算定を試算してみます。
なお、BTO(ビルド・トランスファー・オペレート)は民間事業者が建設し、所有権をオーナーに移してから維持管理・運営を行う方式で、オーナーが公共の場合は固定資産税・不動産所得税・都市計画税が免除されます。

    配置図
    建物配置図
    可部駅ビル
    建物機能図
    パース
    建物パース
  1. PFIの対象施設の概要

  2. 1.所在地 : 可部駅構内
    2.建物規模 : 鉄骨造2階建て、延べ床面積600u
    3.建物用途 : 駅ビル
    4.収容機能 : 駅関係室、コンビニ、レストラン、喫茶店、理髪店等
    5. 事業期間 : 2009年11月から20年間
    6.事業方式 : BTO方式、駅関係室はサービス購入型、それ以外は独立採算型

  3. 従来の公共事業のLCC

  4. JR西日本がオーナーとなって駅ビルを建設し、テナントを募り、オーナーが自ら維持管理・運営を行うと仮定する。
    • 初期投資

    • 規模・用途等の類似建物の実績データを分析し、設計費・建設費等を算出
      ・設計費 : 700万円
      ・建設費等 : 9.000万円
    • 運営中費用

    • 駅関係室は自社の過去のデータを参考にして積み上げる。テナント部分は維持管理会社・運営会社等に参考見積りを取る。金利は国債等の金利2%と仮定
      ・維持管理費 : 8.300万円
      ・運営費 : 2.700万円
      ・金利等 : 220万円
    • リスク調整

    • 事業期間中に事故・経済状況の変化・天災等の予測できない状況により発生するリスクの損失額を想定
      ・リスク額等 : 500万円
    • 合計(LCC)

    • ・従来の公共事業のLCC=21.420万円

  5. PFIのLCC

  6. SPC(特別目的会社)が民間資金を調達して、設計会社・建設会社・維持管理会社・運営会社にそれぞれ業務を発注する。
    • 初期投資

    • 性能発注に基づくデザイン・ビルド、民間仕様等の民間のノウハウに期待して従来方式の1割カットを目標
      ・設計費 : 630万円
      ・建設費 : 8.100万円
    • 運営中費用

    • 維持管理費と運営費は民間の企業努力に期待して従来方式の2割カットを目標。プロジェクト・ファイナンス金利は取引銀行のマージンが上乗せされるため10%と仮定。リスクは従来方式の5割アップ
      ・維持管理費 : 6.640万円
      ・運営費 : 2.160万円
      ・金利 : 880万円
      ・リスク等 : 750万円
    • 利益

    • 利益は駅関係室の賃貸料を計上。その他の営業収入は従来方式と同一と仮定するので、プラス・マイナス0
      ・利益 : 1.000万円
    • 合計(LCC)

    • ・PFIのLCC=20.160万円

  7. VFM算定

  8. 上記の式(1)にそれぞれのLCCの値を入れると

    VFM(%)=(21.420−20.160)/21.420×100=5.9

    VFMは5.9%となる。
    *(注)この試算の数値には裏付けとなる根拠がありません。

雑感

PFIは民間主導の公共事業として、もてはやされていた時期がありましたが、今はひと頃の熱気が冷めつつあります。メリット・デメリットが共存するようですが、VFMの考え方は評価されてよいと思います。

以前の公共事業選択は分捕り合戦で、声(権力)の大きいところが優先されていた嫌いがあります。国民に説明責任を果たす上で、公平性・透明性・客観性を保つためには広くVFMの考え方を浸透させる必要があります。

しかし、提供するサービスの質と投入する費用を事前に掴むことは至難の技です。例えば、美術館を作るとして、どれだけの効果が上がるかを予測し、それを貨幣換算することができるでしょうか。苦肉の策として、PFIでは提供するサービスの質を同一として、投入する費用の多寡でVFMを評価することにしています。

相対的にVFMを比較するのではなく、そのプロジェクトの価値そのものをVFM(提供するサービスの質/投入する費用)として評価できる手法の開発が求められます。サービスの質を貨幣換算するツールさえあれば、それが可能となるのですが。

*ちょっとコーヒーブレイク : 『のんびり行こうよ

  (2009.11.1 記載)   
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