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2003年春から初夏にかけて、日本の豪華客船「ぱしふぃっくびいなす」が2度目の世界一周クルーズに
旅立ちました。 
その長い船旅の中、私たちはヨーロッパの寄港地を中心に撮影取材し、「豪華客船でゆくシネマクルーズ」
というドキュメンタリー番組に仕上げました。
タイトルどおり寄港地ごとに名画にゆかりの深い場所を訪れ、名画が作られた背景や様々なエピソードで
つづる1時間番組です。
映画の解説には戸田奈津子さんを迎え、いろんなおもしろいエピソードも披露していただきました。
寄港地順に、ウクライナ、ギリシャ、イタリア1.2、フランス1.2、モロッコ、アメリカ、と計8本の番組に仕
上げ、BSiデジタル放送「ハイビジョンのひととき」で8回にわたり放送されました。

第1回のウクライナでは、黒海に向かって開かれた港町=オデッサを訪ねました。
ここには映画史に残る不朽の名作=セルゲイ・エイゼンシュテイン監督の「戦艦
ポチョムキン」で有名になったその名も「ポチョムキンの階段」があります。
この階段を使って撮影されたシーンは映画の編集技法=モンタージュを駆使し
た傑作と言われ、多くの映画人に影響を与えたました。



      
ウクライナ第2の都市オデッサは、19世紀女帝エカテリーナの命によって再開発された港町です。
エカテリーナは、ロシアのヨーロッパ化を画策し、たとえば当時のロシア宮廷ではフランス語を使っていた
ほどであるといわれています。
オデッサの街づくりにもヨーロッパ化の夢が見え隠れします。
フランス人の知事を招聘しオデッサの行政・治世を委ね、街はどこまでもヨーロッパ的を目標とし作り上げ
られました。
オデッサは、ロシアの文豪プーシキンが暮らした街としても有名です。
プーシキンが暮らした家は、現在プーシキン記念館として一般に公開されていま
す。

第二次世界大戦の戦後処理案が討議された場所として有名なヤルタ・・そうです
歴史の授業で習った「ヤルタ会談」です。
ここは黒海に面したロシア有数のリゾート地でもあります。
また、チェーホフが病気療養のため晩年ここに移り住み、戯曲「桜の園」を書き上
げた場所として知られています。
旅行者に人気の高い「ツバメの巣城」・・。
黒海に向かって堂々とたたずむその姿は中世の古城を思わせますが、実際は裕
福なドイツ人が酔狂で建てたフェイク城です。
現在はレストランとなっています。



 

街の中心に世界遺産アクロポリスがそびえるギリシャ・
アテネ・・。
様々な神話に彩られたアクロポリスですが、歴史的には
時の権力者の力の象徴でもありました。
たとえば、オスマントルコ支配の時代には、かのパルテ
ノン神殿は武器庫として使用されていたそうです。





     
アテネの港町が舞台となった名画は「日曜はだめよ」です。
主演の女優メリナ・メリクーリは進歩的な女性として知られ、ギリシャでもっとも有
名でもっとも信奉者の多い女性と言えるでしょう。
女優活動で成功を遂げた彼女は、ギリシャの文化復興に尽力し、晩年には文化
大臣にまで上り詰めます。
「日曜はだめよ」の監督であり出演者(ホーマー役)でもあるジュールズ・ダッシン
氏に、番組ではインタビューを行いました。
メリナ・メリクーリの夫でもある氏は、現在アテネの街で静かに暮らしていました。
元々はアメリカ人であるジュールズ・ダッシン氏・・。
ハリウッドの「赤狩り」に嫌気がさし故国を離れました。
おだやかな人柄と、どこかシニカルで独特のユーモアセンスをにじませるダッシン
氏へのインタビューはこんな挨拶から始まりました。
        
Hello,nice to meet you.
My name is Fujikuma Jun.
I am a director of this TV program.
.
Director? What a life !


            
アテネの郊外は、目を見張るばかりの歴史的建造物や遺跡の宝庫です。
大地を切り裂いたかのような「コリンソス運河」・・。 
ローマ時代皇帝ネロの命でつくられた運河で、エーゲ海とイオニア海を結んでいます。
歴史学者シュリーマンの推理どおり発見された「ミケーネ遺跡」・・。
様々な歴史的事実が、神話に語られる世界と符合することが証明されました。



エーゲ海に浮かぶ島ロードス島・・。
ここは名画「ナバロンの要塞」の舞台です。
「ナバロンの要塞」に出演していた名優アンソニー・クインは、
ことのほかロードス島が気に入り、映画の撮影終了後も何度もここを訪れたそうです。
なかでも彼が気に入ったビーチは、ギリシャ政府から彼に正式に寄贈され、いまでは
アンソニー・クインビーチと呼ばれています。



            
ロードス島の旧市街は「ヨハネ騎士団の街」と呼ばれ、現在世界遺産に登録されています。
トルコに近いロードス島では、対トルコ防衛が重要なミッションだったのです。
十字軍の時代、キリスト教国は連合し、強大な力を誇るトルコに対抗したのです。
キリスト教対イスラム教の対立は、私たちの想像以上に根深いものがある・・ということが伺えます。
いまではのどかな雰囲気が漂う旧市街です。



      
同じくエーゲ海に浮かぶ美しい島・・イドラ島・・。
ここは名女優ソフィア・ローレンの「島の女」の舞台となったところです。 
撮影当時のことを昨日のことのように覚えている島の老人たちに、様々なエピソードを教えてもらいました。
老人たちは一同に、目を輝かせてソフィア・ローレンの美しさを語ってくれました。
いくつになっても「ひと夏の思い出」は心から消えることはないんだな・・と思いました。

次回は、「ローマの休日」の舞台・・ローマ、「旅情」の舞台・・ヴェネツィアでのエピソードを紹介します。