番外編1

パソコンの消費電力に関して

2006/6/21

昨今、パソコンの消費電力が取りざたされるようになりました。
確かに、最近のパソコンは、やたらと電気を食います。
しかし、自作パソコンは、複数のパーツの組み合わせなので、簡単に消費電力などを知ることはできませんね。
でも、電気を食うパソコンは、それだけで維持コストが高いものとなってしまいます。
そこで、自作パソコンでの消費電力の押さえ方を解説したいと思います。


パーツ毎の消費電力

まずは、どのパーツが電気を食うかを見ていきましょう。

パーツ 消費電気の量 備考
CRTモニタ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
液晶モニタ ☆☆☆☆☆☆
CPU ☆☆☆☆☆☆☆☆ 非アイドル時
ビデオカード ☆☆☆☆☆☆
メモリ
HDD ☆☆ 3.5インチの場合
光学ドライブ ☆☆ 読み書きしている場合
マザーボード ☆☆
サウンドカード
電源 ☆☆☆☆
※非アイドル時の比較です

大体の相対値ですが、大まかに言ってこんな物です。
パソコンによっては、こうは成りませんが、電気屋さんで売っている、デスクトップパソコンの場合は大体こんな物です。
ご覧のとおり、モニタがかなり食います。
場合によっては、全体の半分をモニタが食う事もあります。
意外な物としては、電源が電気を食う事でしょうか?


消費電力の法則

次に、消費電力の法則に関して、ご説明します。

パソコンパーツは、必ずではありませんが、消費電力に関して、大体の法則があります。
それは、高速大容量のものほど、電気を食うと言う事です。
これは絶対の法則ではありませんが、大体は合っています。

これと逆行して、もう一つの法則があります。
それは、最新の物ほど消費電力が少ないと言う事です。
これは、半導体製品では特に顕著です。
理由は、技術の進歩により、どのパーツも小型化が進みますが、小型になればなるほど、電気を食わない傾向に行きます。
実際には、使用している技術の世代による物ですが、あまりに難しい話になるので、ここでは省きます。
詳しく知りたい方は、それぞれのパーツの構造などを調べるといいと思います。

ここで言えることは、消費電力は、容量(速度)と技術進歩との間のトレードオフの関係にあると言うことです。

それと、もう一つの法則(これは迷信に近い物がありますが・・・)として、熱くなる物ほど電気を食います。
電気は、通常その大部分が、消費されると(消費しきれずに?)熱に変わります。
つまりは、熱をもつものほど、電気を食っていると言う事になります。
必ずしもそうとは言い切れないものも在りますが、これも一応の目安にはなります。


アイドルと非アイドル

パソコンパーツには、動作中(アイドル時)と待機中(非アイドル時)という、2つの状態があります。
これは、そのままの意味で、CPUならば計算中、HDDならば読み書き中など、動作状態を表す言葉です。
目で見て解りやすい物としては、Windows2000などでは、タスクマネージャのパフォーマンスと言うタブで、CPUの動作状況をモニタできます。

これは、消費電力と大きく関係があります。
通常、パソコンパーツは、アイドル時には、あまり電気を食わない構造になっています。
CPUなどは、普通にパソコンを使っているのであれば、その大部分の時間はアイドル中になっていることがほとんどです。

通常、パソコンの消費電力は、非アイドル時の値を元に比較しますが、ここではランニングコストに注目しますので、むしろアイドル時の消費電力を元にします。
ちなみに、上記の表の比較表は、非アイドル時のものです。


省電力パソコン

通常の電気屋さんで買える市販品パソコンの中で、消費電力の少ないパソコンと言うのはどう言った物なのでしょう?

それは、ノートパソコンです。
ノートパソコンは、はっきり言って、究極の省電力パソコンでも在ります。
バッテリで動くんですから、当然と言えば当然です。
お手軽に省電力パソコンを購入したい人は、ノートパソコンを選ぶのが良いでしょう。
ただ、ノートパソコンは、通常のデスクトップと違い、省電力の為にいろいろな部分で、いろいろな物を捨てています。
通常のデスクトップの代わりとしての購入を考えているのであれば、それは止めた方が良いでしょう。

では、ノートパソコンと通常のデスクトップパソコンとの大きな違いはなんでしょうか?
それは、アクセス性能です。
アクセス性能とは、パソコンの使用者が、パソコン上で何かの作業をした時の、その反応のすばやさです。
ノートパソコンは、通常、消費電力を抑える為に、色々な機器の電源をオフにしている事が多いのです。
ですので、たとえば、HDDのファイルにアクセスしようと思うと、まずHDDの電源を入れ、回転数が上がってからアクセスすると言うように、色々な手順を踏む必要が出てきます。
ノートパソコンは、その利用目的が、通常は、外出先でのメールチェックや、データ表示程度と考えられているので(一概にこれが全てとは言えませんが・・・)、
ノートパソコンの上で、バリバリ作業するようには出来ていません。
ですので、バリバリ作業するには、やはりデスクトップパソコンの方が有効です。

さらに、ノートパソコンは、省電力の為に、小さい部品が多く使われています。
これにより、通常のデスクトップパソコンよりも、耐久性がかなり低下しています。
落とすのはもちろん、何かにぶつけるなどの強い衝撃でも壊れる事がままあります。
大事なデータを守るという意味においても、通常の作業をするパソコンは、デスクトップの方が安全であるとはいえます。

では、デスクトップパソコンの中で、省電力なパソコンとはどういうものなのでしょうか?

それは、比較的値段の手ごろな物が、比較的に省電力であると言えます。
これは、なぜかと言うと、あまり大容量高速なパーツを使用していないからです。
消費電力の法則でも解説したように、大容量高速なパーツは電気を食います。
それと逆行する位置にいる物こそが、省電力になるということです。
それとは別に、小容量タイプ(小型パソコン)も比較的省電力ではあります。
これも、やはり、ケース容量の都合で、大容量高速な物が積めないので、電気の消費量も小さくなっていきます。

それとは別に、たまに見かける、省電力を売りにしているパソコンも在ります。
これらは、かなり効果があります。
これらのパソコンは、消費電力の小さいパーツを集めているので、消費電力は当然小さくなります。
ただし、ハイパワーな割には、消費電力が小さいという事ですので、絶対的な量としては、一概に良いとはいえないことも在ります。


省電力パソコンを作るには?

それでは、本題の、自作パソコンで、消費電力の押さえ方を解説したいと思います。

まず、第一に、いらない物を付けない事が重要です。
HDDなど無闇に台数をつけずに、容量の大きな物1台で賄うほうが効率的です。
HDDなどは、当然ですが、大容量で食う電気の量の分よりも、1台を動かす上で最低限かかる電気の量の方が大きいです。
ですので、120GのHDDを2台つけるよりも、250GのHDDを1台付ける方が電気は食いません。
他のパーツも同じことが言えます。
ただ、パーツごとで食う電気の量が違いますので、何でも減らせばいいというわけでもありません。
メモリなどは、さして電気を食いませんので、メモリを減らして消費電力を減らす効果以上に、メモリを減らした事で発生するスワップでのHDDアクセスの方が、
電気を食ってしまう場合もあります。

第二に、消費電力の少ないパーツを選ぶ事が重要です。
特に問題になるのは、CPUです。
最近は、モバイル系のCPUをデスクトップにつけることも可能になってきています(PentiumMやCoreDuoなど)。
そういった物を選ぶと、通常のデスクトップよりも、かなり電気の食わない物になります。

省電力の裏技?

通常は、上記の物だけで、大きな効果をもたらしますが、これではあまりにつまらないので、もう少し突っ込んでいこうと思います。

まずは、不要パーツの取り外しに関してですが、自作パソコンで、通常必要になるパーツは、CPU・メモリ・HDD・マザーボード・電源です。
ここには、FDDはありません。
FDDはWindows2000以前のOSを入れる際には必要ですが、最近の物では、必ずしも必要になるものではありません。
つまり、はっきり言っていらない物です。
FDDは無くてもパソコンは動きます。
Windows2000以降であれば、OSのインストールでも、まったく問題は出ません。
微々たる物ではありますが、無いに越した事は無いものです。
さらに、OSのインストールが済んでしまえば、CDドライブもいりません。
しかし、CDドライブは、それなりに使う物でも有りますので、手元には置いておきたい物です。
そこで、5インチIDEドライブを外付けに出来るUDB2.0の接続キットなどが在るので、それらを活用すると良いでしょう。
OSインストールまでは、IDEとしてCDドライブを接続し、OSのインストールが済んだ時点で、それをUSB化すれば、常に電気が入らなくなるので、消費電力を抑える事が出来ます。
ビデオカードなども、マザーボードにVGA機能が乗っていれば、それを使うようにすれば、ビデオカードの分の電気を消費しなくて済みます。

通常のデスクトップの改造だけで行う省電力は、ここら辺が限界です。
ここからは、省電力パソコンを自作する事を前提に解説します。

まず、省電力を考える上で、選ぶべきポイントからです。

マザーボードですが、当然、省電力CPUを搭載できる物であることが前提です。
どのCPUが有利かは、個人の趣味になるところが大きいですが、私的には、性能と見合わせるならば、IntelのCoreシリーズが有効だと思います。
どのCPUを選ぶかは、個人の自由として、選ぶべきマザーボードは、出来るだけ小さい物が有効です。
MicroATXやMiniITXなどの方が、当然回路が小さいので、消費電力も小さくなる事が予想されます。
必須な機能としては、LAN、出来るだけ高速なLANがあることが望ましいです。

HDDに関しては、低速で、そこそこの容量の物がいいでしょう。
これは、大容量のものや高速な物は、それだけで消費電力が上がる事もさることながら、熱の問題が生じます。
熱を逃がす為に、無用なFANを付ける事を要求されるので、出来るだけ熱の発生しない物の方が、消費電力的には有利になります。
当然ですが、載せる台数は1台だけです。

電源は、なるべくならば、低容量のものがいいですが、粗悪品はダメです。
電源は、高級品であればあるほど、熱として消費してしまう電力量が小さくなる物が多いので、あまりケチらずに、いいものを用意した方が良いでしょう。
電源の消費電力は、結構馬鹿にならないので、ここは押さえどころでもあります。
ACアダプタタイプの電源と言う手もありますが、容量が小さい物がほとんどですので、その容量でまかなえるかをきちんと確認する必要があります。

メモリに関しては、あまり気にする必要はありません。
なぜなら、メモリが消費する電力自体がかなり小さいからです。
ビデオカードは、はっきり言って要りません。
と言うよりも、ビデオカードを入れる時点で、省電力は諦めた方が良いでしょう。
オンボードのVGAで我慢できない方は、省電力は諦めましょう。

これらのポイントを押さえて、パソコンを作ると、小容量パソコンが出来上がります。
当然ですが、FDDやCDドライブなどは、取り外します。

さて、ここからが本題です。
出来上がったものを見てみると、CPUやビデオ機能は、まあしょうが無いとしても、HDDの容量に不安を覚えてくると思います。
ですが、小容量では、増設もままなりません。
USBでも増設できる台数に限界があります。
そこで、登場するのが、LANです。
LANを有効活用することで、HDDの台数を、仮想的に増やします。

インターネットに接続している方ならば、大体ルータを使っている方が多いと思いますが、そのルータのDHCP機能を有効にし、ホームネットワークや小規模ネットワークを構築します。
ネットワークは、必ずしもサーバーが必要と言うわけではありませんので、これを使えば、簡単にネットワークを作る事が出来ます。
詳しいやり方は、詳しく解説している書籍やHPなどにお任せします。

さて、ネットワークを構築できたら、このネットワーク上にLanDisk機能付き外付けHDDやNSA(ネットワークストレージアダプタ)という機器を接続します。
これらは、ネットワーク上にデータサーバーを仮想で構築する機能を持つ機器です。
通常は、データサーバーと言えば、1台のパソコンをサーバーとして、共有HDDにネットワーク越しにデータを出し入れする物ですが、これらの機器は、これをつなぐだけで構築してくれます。
LanDiskの方は、通常は外付けHDDとして販売されていますが、物によっては、外付けケースとしても販売されていますので、HDDが余っている方などはこれを活用すると良いでしょう。
NSAは大体は、USB2.0の外付けHDDをその機器に接続すると、LanDiskとしてネットワーク上に見えるようにしてくれる機器です。
ちなみに私はIOデータ製のUSL-5PというNSAを使用しています。
機器によって違いますが、通常2〜5台のUSBハードディスクを接続できます。

これらの機器を活用する事によって、パソコン内にHDDが接続されていなくとも、別にHDDを接続する事が可能になります。
LANですので、IPアドレスに空きがある限りは、どんどん増やす事も可能になります。
一つ難点を言えば、LANの速度がそのまま書き込み速度となるので、遅いと言う事ですが、これも、最近はGigaBitLANの普及により、解消されつつあります。
これらの物は、小規模であれば比較的簡単に入れられますが、大規模なネットワークになってくると面倒になってきます。

LAN接続の最大の利点は、自分の使用しているパソコンとはまったくの無関係なところで、LANに接続されている機器の電源を自由にオン/オフできることに在ります。
LanDiskにより、必要な時に必要なだけ、電源を入れることが出来ますので、消費電力的には、かなり効果があります。

その他のネットワーク機器

HDDのネットワーク接続だけ取ってみても、かなり有効なのはお解りいただけると思いますが、ネットワーク化の有効性は、それ以外でも大いにあります。
例えば、プリンターやスキャナーなども、ネットワーク対応の物が古くからあります。
ネットワーク化をする事により、複数のパソコンで、1台の機器を共有しようと言う発想です。
また、LanDiskの中には、LinuxをHDDにインストールして使うタイプの物もあり、これらにいたっては、もはや、外接機器ではなく、リモートサーバーの域に到達しています。
リモートサーバーといっても、外接機器として設計されていますので、その省電力性は抜群に高いです。
これらの機器の活用によって、同一ネットワーク上に必要な機能を分散させ、必要な時に必要なだけの電気を入れて使用することが可能になります。
また、分散させる事により、パソコンの増設や、買い替えにも柔軟に対応できるようになります。
ネットワーク接続は、いわば、究極の省電力化とも言えるかもしれません。


番外編:締めくくり

今回は番外編として、パソコンの省電力化を解説してみました。
ネットワーク化の進めと言えなくも無いですが、参考にして頂ければ幸いです。

[先頭へ] [次へ]


[トップへ] [パソコンガイドトップへ]