小さな庭に ー 夏 (2007)


ベロニカ




ベロニカ

園芸上ベロニカとよばれている植物には、クワガタソウ属 (Voronica)とルリトラノオ属 (Psudolysimachion)のいくつかの種が含まれているようである。わが庭のものは、ルリトラノオ属と思われるが、種名は分からない。少々蒸し暑くなった庭に、涼しげな淡い紫の可憐な花を咲かせている。とりあえず「六月のベロニカ」ということにしておく。



フクシア



フクシア(Fuchsia hybrida Voss.)

初夏から咲き始めるが、品種によってはこれから花盛りになる。ヨーロッパでは、冬季は温室で育てるのであろうか、夏には大きな鉢植えとして街角を飾っているのをよく見かけた。わが家では、軒先で越冬させている。案外耐寒性があり、春になると新しい芽がでてくる。家には温室がなく、大きく育てることはできないが、それでも毎年美しい花を見ることはできる。




セダム

セダム(Sedum spp. )

自分で植えたり、播種したものではない。一昨年、庭に変な植物が生えているので、雑草ではないと判断して、鉢植えで育ててみた。マンネングサの類の多肉植物である。昨年は鉢の中で植物が広がるばかりで、一向に花が咲きそうになかった。丈夫で花も咲かないのに、繁殖力の旺盛な植物で、どういうわけか、よく見ると、庭のあちこちに見つかった。今年6月、鉢植えのものがやっと花を咲かせた。インターネットでいろいろと検索した結果、どうやら Sedum pallidum M. Bieb. という園芸種であるらしい。いまだにどこからやってきたのか不明である。



アジサイ

アジサイ(Hydrangea macrophylla Ser. )

梅雨の季節を代表する花は、なんといってもアジサイであろう。各地にアジサイをたくさん植えた公園があり、またアジサイで有名な寺もよくある。アジサイの原産は日本であり、日本人もまたアジサイを好む。アジサイを植えている家も、もちろん多い。白いのも、青いのも、紫のものも、雨に濡れたアジサイはいとも美しい。それぞれの庭には「わが家のアジサイ」があるだろう。写真は、「小さな庭のわが家のアジサイ」である。少しうすぼけたような色合いは、最初もの足りない気がしたが、今ではなかなか上品な色ではないかと思っている。




アガパンサス

アガパンサス(Agapanthus africanus Hoffmg. )

南アフリカ原産の植物。園芸植物でムラサキクンシランともよばれる。6月中旬から下旬に花が開き、うす紫の花は、蒸し暑い季節の中で、幾分か涼しさをただよわせている。この住宅地では、この季節、道端の並木の下にアガパンサスの花をよく見かける。花好きの方々が植え込んだものであろう。日本では、季節を表すなじみの植物になったが、南アフリカでは、どんな季節に、どんなところで咲いているのだろうか。



インパチエンス

インパチエンス(Impatiens sultani Hook. f. )

アフリカホウセンカともよばれる。東アフリカ原産で、多数の園芸品種がつくられている。さまざまな花色があり、花壇を花で覆うのにふさわしい。インパチエンスが日本で普及したのはいつごろだったのだろうか。私が学生時代には、まだ見かけなかったように思う。春から秋までずっと咲いているが、梅雨時分が草の形も花の色も最も美しい。宿根草ではないので、うっかりすると新苗を植えるのを忘れてしまう。忘れっぽいので、来年はわが庭にあるかどうかわからない。



クチナシ

クチナシ(Gardenia jasminoides Ellis)

今は7月初旬、八重のクチナシが大きな花を咲かせ、甘い香りを周辺に漂わせている。クチナシの花は開きたてがきれいだが、開いてしまうと、アザミウマがわんさと花にたかる。そばで見るといささか興ざめであるが、離れて眺めるには、なんら差し支えなく、アザミウマを退治するつもりもない。アザミウマより困るのはオオスカシバというスズメガの一種で、その幼虫はもっぱらクチナシの葉を食い、ときには、クチナシを丸坊主にしてしまう。オオスカシバもそろそろ飛び始める時期である。



モッコク

モッコク(Ternstroemia gymnanthera Sprague)

わが家の庭に1本のモッコクがある。自生の若い木である。近所の公園や小学校の庭には大きなモッコクの木があり、秋にはたくさんの実をつけている。多分わが家のモッコクは、ヒヨドリが落としていった種子から生まれたものだろう。今は高さ2メートルあまりになって、葉をつやつやと輝かせている。2年前の今頃、このモッコクがはじめて花を咲かせた。スケッチはそのときの枝である。しかし、花はすぐにぽろぽろ落ちてしまって実はつかなかった。そして、去年も今年も花をつけなかった。



アサガオ



アサガオ(Ipomoea nil(L.) Roth )

何の変哲もないアサガオであるが、毎年5月に種子を播いて育てている。夏の朝、雨戸をあけて最初に見るのはアサガオ。アサガオが咲く朝は気分も爽快になる。アサガオは古来から日本人に愛されてきた植物で、江戸時代からたくさんの園芸品種が作られてきた。七夕前後の頃に催される入谷の朝顔市は、クールな日本の情景である。アサガオを材料にした遺伝学や生理学研究の主流はもちろん日本である。





ミズヒキ ミズヒキ2

ミズヒキ(Polygonum filiforme Thunb.)

ミズヒキは7月頃から咲き始め、10月頃まで咲いている。花穂は30〜40センチも伸長し、点々と小さな赤い花(あるいは白い花)をつけるので、進物などに使う水引になぞらえてミズヒキという。果実は花柱が鉤状に変形し、「くっつきむし」となって人や動物にくっついて伝播される。庭のミズヒキも近くの薮かげに実った果実がそのようにして伝播されてきたものかも知れない。日本人はこんな植物にも美を見出し、挿し花や活け花にする。季語は秋だが、花の少ない8月は、この花の地味な美しさに目がとまる。



チシャ


チシャ(Lactuca sativa L.)

これは昨年の今頃撮ったチシャ(サラダナ)の花の写真である。昨年の春、チシャの苗をもらったので、プランターに植えておき、葉っぱはときどき摘んで、サラダにして食べていたが、茎の方はそのままにしておいたところ、8月になって花がたくさん咲いた。なかなかきれいだった。今年のプランター栽培はインゲンマメにしたので、チシャの花はない。チシャと同属、すなわちLactuca属の野草の代表格はアキノノゲシ (L. indica L.) で、花序や花のかたちは、チシャとよく似ている。こちらは秋になったら、「道草の時間」に登場させよう。





スベリヒユ ハナスベリヒユ

スベリヒユ(Portulaca oleracea L.)とハナスベリヒユ(Portulaca spp.)

スベリヒユは雑草、ハナスベリヒユは栽培種だが、わが家の庭では隣どうし仲良く咲いている。花が咲かなければ区別できない。ハナスベリヒユは、スベリヒユを改良した園芸種という話があるが、確かかどうか分からない。ハナスベリヒユは数年前から庭にあり、こぼれ種で毎年育っている。最初は花色の違うものが混じっていたが、現在は、黄色の花ばかりになった。



クワクサ


クワクサ(Fatoua villosa (Thunb.) Nakai)

今夏は連日の猛暑で、草取りをさぼっていたら、小さな庭にも雑草がはびこってしまった。8月も終り頃やっと涼しくなったので、草取りをする気になった。一番多いメヒシバにまじってエノキグサやクワクサが生えていた。クワクサはクワ科の草本で、畑の雑草であるが、庭にもよく侵入してくる。葉がクワに似ているのでクワクサというらしいが、葉柄の基部についた花の集合もクワの実みたいにみえる。雌雄異花で、この集合の中には、雄花と雌花が混じっているはずである。



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