葉佩の独裁者

 

どがぁん、どがぁぁん!!

学園内に響き渡る砲声、立ち上がる煙。その中から生徒たちが白旗を振って降伏してきた。

「ふははのは!この学園は僕が支配したぁ!!」

突如、天香学園は葉佩九龍のクーデターにより、支配されてしまった。八千穂を含めた3−Cは九龍の手足として働くことになった。ある意味特権階級といえた。

「今日から僕が法律だ!お前らは僕の奴隷だ!誰もかれも校庭十周走るんだ!!」

その日から九龍の独裁政治が始まったのである。何しろ銃を構えれば話は早い。すべて力の世の中だからだ。

 

「さぁ、僕に捧げ物をよこすんだぁ!!」

九龍は学園のみんなに捧げ物を強要した。

取手は地上最強オムレツを。黒塚はいくら丼を献上した。

「・・・なんだこれは?」

九龍は夷澤が持ってきたミルクを見て、言った。

「何って、こいつは俺の好物っすよ」

ばちぃぃん!!

突然、九龍が夷澤をファラオの鞭を打った。あまりの痛みに思わずうずくまる夷澤。

「こんな貧相な物でごまかす根性が気に入らない!!お前は重いコンダラを引っ張りながら校庭十周しろ!!今すぐだ!!」

哀れ、夷澤は泣く泣く重いコンダラを引きながら、校庭十周を強制されたのでした。

「ふはははは!!ケチな夷澤は見せしめに、重労働の刑だ!!」

ちなみにリカはキャラメルを、肥後はポテトスナックを献上したが、夷澤ほど重い罰にはならなかった。なぜならリカは女の子だし、肥後は好物を献上しただけで、九龍の忠誠心を示したからである。

 

「ちくしょう!!ふざけやがって!!」

夷澤は九龍の顔入りの旗がそよぐポールの下で毒づいていた。

「九龍くんの学園で生きるより、死ぬ事由を選ぶべきだと思いますね」

そこに神鳳と阿門がやってきた。

「けっ!そんなことで自殺したくありませんね!!ああ、むかつく!!」

夷澤は九龍の旗をひき降ろすと、旗を足蹴にしはじめた。

「けっ!!ふざけやがって!!このむかつく顔を踏んでストレス解消だ!!」

ぴぴー!!

そこに笛の音が鳴った。八千穂であった。

「そこの3人!!九龍くんの旗を足蹴にしたね!!死刑にするから連行するよ!!」

「旗を踏んだだけで死刑とは・・・。というより踏んだのは夷澤だけなのだが・・・」

阿門の呟きを無視して、八千穂は3人を連行していきました。

 

夷澤と神鳳、阿門は校庭に用意された磔台に括りつけられた。

「ちくしょう!ふざけやがって!!こんな最後は冗談じゃねぇよ!!」

「私たちはあなたの巻き添えになったのですよ。私のほうこそ冗談ではありません」

「これも遺伝子の導きによるものか・・・。呪われた一族に終止符が打てるな」

ぎゃーぎゃーわめく夷澤とは対照的に、神鳳と阿門は冷静であった。というより諦めているようにも見える。

かちゃり。

夕薙と皆守は銃剣のついたライフルで狙いを定めた。

「さぁ、レッツゴー!!」

日本刀を掲げた八千穂が、処刑の号令をかけようとした。

「待って!!」

そこへ双樹が割って入ってきた。

「お願い阿門様を助けてあげて!!私、九龍様と結婚するから!!」

「ちょっと待ってくださいよ!!なんで阿門さんだけなんすか!!俺たちの命はどうでもいいんスか!!」

「あ、おまけで神鳳も助けてあげて。夷澤は自業自得だからどうでもいいけど」

「ふざけるなぁぁぁ!!」

夷澤の絶叫がこだました。

「うーん。夷澤も助けてあげてといわないと、3人まとめて死刑にしちゃうよ?」

九龍はにやにや笑いながら言った。

「そんな!!そんなひどいことを言うなんて・・・」

双樹は地面にぺたりと力なく座り込むと、涙をぼろぼろにこぼして泣いた。

「双樹さんを辱めるなんて・・・」

「転校生、見損なったぞ。元からだが」

3人ともひどいことを言っている。夷澤はもちろん憤怒していた。

「なんで俺を助けることが辱めになるんスか!!そんなに俺のことが嫌いなんスか、答えてくださいよ!!」

「だって君は副会長補佐役という、あってもなくてもいい役職だしね。仕事も金魚の餌やりだけだし」

止めの一撃は九龍が放った。がっくりと頭が垂れる夷澤。

 

かくして九龍と双樹の壮大な結婚式が行われた。生徒たちはいやいや祝福させられていた。牧師は白岐が努めている。

「では葉佩九龍は双樹咲重を一生愛すると誓いますか?」

「うーん。浮気するかもしれないけど、一応、誓うよ」

「新婦の双樹咲重は、夫、葉佩九龍を一生愛すると誓いますか?」

「誓います」

「では、新郎新婦は誓いのキスをしてください」

誓いのキスをしようとする刹那、双樹の手にはメイスが握られていた。

「うふふ♪」

どがぁ!!

「ぐえぇぇ!!」

メイスでぼかぼかに殴られる九龍。

「馬鹿ね。私があなたと本気で結婚するはずないでしょう?すべて演技よ」

それに合図に、手には長槍や戦斧を抱えた生徒たちが一斉決起した。双樹は学園の解放者だ。さぁ生徒たちよ立ち上がれ!!

「おのれぇぇ!!夕薙、皆守!!あいつらを取り押さえろ!!」

しかし夕薙や皆守も銃を捨てた。驚愕する九龍。

「悪いな。俺は前の学園が好きなんだ」

「いつまでもこんな馬鹿なことに付き合いきれねぇよ」

二人は九龍と八千穂に殴りかかった。

そして九龍は人間スイカ割りの刑にされました。九龍を地面に首だけ出して埋めて、棒の代わりに日本刀を使うものだ。スイカを割る役目は八千穂。目隠しをされ、残酷スイカ割りをさせられた。

ざく、ざく、ざくぅ!!

「ぎゃあぁぁ!!」

八千穂は目隠しを恐る恐るとると、そこにはぼろぼろの九龍の姿があった。九龍の目は失明し、顔に大きな傷が残った。

阿門と神鳳は解放されましたが、夷澤だけ磔にされたままになってました。

かくして革命によって成立した九龍政権は、やはり革命によって覆されたのであった。

 

「・・・というプロパガンダ作品で転校生を陥れる作戦ですが、どうでしょう?」

ここは生徒会室。今、神鳳が転校生がどれだけ危険かを漫画研究会に頼んで漫画にして説明したのである。

「ちょっと待ってくださいよ!転校生はともかく、なんで俺が汚れ役なんスか!!扱いがあんまりすぎですよ!!」

夷澤は抗議した。

「というより、これが夷澤のキャラだしねぇ」

「・・・問題ない」

双樹と阿門は賛成した。

「ふざけるなぁぁぁ!!」

夷澤の絶叫だけが、生徒会室に響き渡ったのであった。

 

終わり


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九龍小説です。

こいつは30分程度で書き上げました。

前のくれくれ葉佩より反社会的な内容です。

普通はかっこいい九龍の小説を書くものですが、私はあえてこんな作品を書いてみました。

九龍本編小説も止まったままで、こんな糟みたいな作品を書いてていいのか、自分でも悩みます。

 

2006年12月10日