リカの実験室

 

「こんにちは。椎名リカですの。今日は理科の実験室へようこそですの。では今日の実験対象は・・・」

「あ〜、だるい」

「やぁ」

皆守甲太郎と黒塚至人であった。

「何を実験したいか知らないが、さっさと済ませてくれ」

「僕もなるべく石たちと過ごす時間を割かれたくないんだよね」

「では、実験開始ですの」

 

『実験その1』

 

『皆守にカレーとアロマを禁止させたらどうなるか?』

 

「なっ、なんだとぉ!!」

皆守は驚愕した。しかし、夕薙によって、特殊な部屋に放り込まれました。そこには台所に電化製品、トイレやシャワーが完備された部屋であった。

「この部屋にはカレーとアロマはありませんの。何時間耐えられるか実験しますの。では、スタート」

「やめろ、やめてくれ!!俺からカレーとアロマを取らないでくれ!!」

皆守の悲痛な声など無視されて、実験は開始した。

 

1時間。

 

「うぅ、うぅぅ」

皆守はかなり不機嫌であった。冷蔵庫には様々な食べ物が入っている。テレビもあるし、雑誌や文庫本などいろいろ揃えていた。しかし、皆守はそれらに手をつけず、ただ寝ているだけであった。

「あれ?皆守くんはぜんぜん寝付こうとしませんわ?」

皆守はかなりいらだっていた。普段なら寝てしまうのに、ぜんぜん眠ろうとしないのだ。暖かい布団も用意しているというのに。

 

2時間後。

 

「うぅぅ、がぁぁぁぁ!!」

皆守はついに暴れだした。壁を殴り、電化製品を壁に叩きつけたりと、かなり凶暴になっていた。口からよだれが垂れ、目はらんらんと光ってます。

「まぁ大変ですよ。たった2時間でここまで狂暴になるなんて。まずはアロマを与えてみましょう」

小窓からリカはアロマを入れた。床にころころと落ちる。それを皆守は拾って火をつけた。

「ふぅ、ふぅ・・・」

皆守はかなり落ち着き始めた。

「やはり、皆守くんにとってアロマは精神安定剤みたいなものでしたのね」

 

4時間後。

 

「ぐぅ、ぐるるるる・・・」

皆守はおなかをすかせて、ゴリラのようにうっほうっほと歩き回っていた。

冷蔵庫の食品には一切手を触れていなかった。どれも新鮮なものなのに。

 

24時間後。

 

「ぐぅ、ぐぅ・・・」

皆守はおなかがすきすぎたのか、布団に包まって寝ていた。腹がすいているから、寝つきは悪い。

「どうしてもカレー以外のものを食べようとしませんわね。このままでは皆守くんが死んでしまうから、もう実験は終了しましょう。ではこれを」

そういってリカは新商品アロマカレーを皆守に与えた。

ばくばくばくと一気にカレーを食べた。

「ふぅ、うまかった。カレーとラベンダーの香りが素晴らしい一品だったな」

皆守は正気を取り戻しました。

結論:皆守に面白がってカレーとアロマを禁止させるのはやめましょう。きちがいのように暴れるから。

「きちがい、言うな!!」

 

『実験その2』

 

「次の実験は黒塚くんですの」

「黒塚に石を取り上げるというのか?」

「違いますの。黒塚くんの石に対する愛を調べますのよ」

ここにひとつの石があります。中庭で拾ったただの石です。

 

ステップ1。石につばを吐きかける。

「ぺっ」

皆守が石につばを吐きました。女子生徒のだとマニアがほしがるので。

「ぎゃあ!」

黒塚くんが悲鳴を上げました。軽いめまいがしたようです。

「ああ、かわいい石につばを吐きつけるなんて・・・」

 

ステップ2。石を壁に投げる。

「えーい」

皆守は石を壁に投げました。こぉんと石は壁に当たりました。

「ぎゃあ!!」

黒塚くんはさっきより甲高い悲鳴を上げました。気絶しかけたようです。

「ああ、かわいい石を壁に叩きつけるなんて、君は人間かい?」

 

ステップ3。石を金槌で砕く。

「じゃあいくぜ。せぇの・・・」

皆守が金槌で石を砕こうとしました。しかし、

「ひぎゃあぁぁぁ!!!」

黒塚くんは言葉にできないような悲鳴を上げました。

「ああ、いけません。黒塚くんの心臓が止まってしまいました。ルイ先生〜」

「うむ」

非常事態のために待機していた瑞麗先生が心臓マッサージを施しました。まもなく黒塚くんは蘇生しました。

「ああ、かわいい石を砕くなんて・・・」

「いいえ、皆守くんは石を砕く寸前でしたのよ。実際には石は砕かれてないです」

「ああ、かわいい石が砕かれると思うと、心臓が止まりそうだったよ!!」

「・・・。実際、心臓が止まったがな」

この後、裁判官の石とイカストーンも用意してましたが、つばを吐いただけで心臓が止まりそうなので中止にしました。

 

結論:黒塚くんの前で石を悪戯するのはやめましょう。殺人になりますよ?

 

「他にも七瀬さんから本を取り上げるとか、夷澤くんにミルクを飲ませないなど企画してましたが、つまらなそうでしたのでやめました。やはり、皆守くんと黒塚くんは面白いですわね」

「人を実験動物みたいに扱いやがって・・・」

「実際、実験動物だったよね。なかなか見物だったよ」

 

終わり。


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あとがき。

 

以前、ブログで書いた九龍小ネタを合わせたものです。こうしてひとつの作品としてまとめると、又違った味わいがありますね。

あんまり、毒のある作品ではないですね。ちょいと地味だと思います。では。

 

2006年12月15日