ネギま脇役列伝:ココネの日記帳

 

○月×日。

私の名前はココネ。フルネームは不明です。自分の名前なのにフルネームがわからないなんておかしいでしょう?実際、私の日記にフルネームは必要ありません。

私は麻帆良学園の魔法生徒のひとりです。主にシスター・シャークティの元で修行をしています。私にはパートナーがいて、名前は春日美空といいます。

彼女は中学2年生で、私より背が高く、髪の毛は私と違ってショートカットです。肌は私と違って真っ白です。つまり私は背が低くて、髪が長く、肌が黒いということですね。

ちなみに現実の私は片言しかしゃべれない性格です。日記では饒舌なのでそこのところを頭に入れておいてください。

 

 

「おーい。ココネ〜」

ここは教会。私は放課後にはお勤めをしています。美空も放課後になればここに来て教会内の掃除などをしています。

今日の美空はにやにや笑っています。たぶん、久々にいたずら甲斐のある相手を見つけたのでしょう。彼女のクラスには鳴滝風香さんと史伽さんの双子の姉妹がいて、よく、いたずらをして怒られています。彼女らは美空と同年代なのに背丈や精神年齢が私に近いです。

「どうしたミソラ・・・」

「いや〜、今日は面白い先生が来たのさ〜。イギリスから10歳の子供が先生として赴任してきたんだわ。あっはっは〜」

10歳。しかも先生。一体どんな人なのだろうか?私はその人の名前を聞いてみた。

ネギ・スプリングフィールドという。スプリングフィールド?

「・・・もしかシテ、あの伝説のサウザンドマスターの身内・・・?」

「サウザンドマスター?誰それ?」

毎回のことだけど、美空はあまり魔法生徒として自覚がない。両親には大学までの約束で魔法生徒になっているのだ。

「とっテモ、有名な人・・・」

20年前の大戦で大活躍した人です。もっともこの世界ではなく魔法世界の話です。確か魔法先生の高畑先生はサウザンドマスターのパーティにいた人です。美空は担任教師のことなのによく知りません。知ろうとしません。

ちなみに美空とクラスメイトの近衛木乃香さんのお父さんも、サウザンドマスターの盟友です。確か神鳴流剣士だったとか。今では関西呪術協会の会長です。魔法生徒でもこれくらいは知っています。

サウザンドマスターの本名はナギ・スプリングフィールドといいます。ネギ先生とは一文字違いです。

「ネギ先生はサウザンドマスターの息子ですよ」

横から声がした。声の主はシスター・シャークティ。私たちの先生です。

「彼は立派な魔法使いになるために、修行としてこの学園にやってきたのです」

なるほど、そういうことだったのか。それにしても10歳で先生をやるのは大変だろう。賞賛に値します。

「まったく何考えているんだかね〜。子供なのになんで先生にならなきゃいけないのかねぇ。私には理解できないや」

美空はけらけら笑っている。自分には無関係だといわんばかりだ。

ぴくり。

シャークティのコメカミがぴくぴくしています。怒っています。でも美空は気付いていません。私は美空のスカートをくいくい引っ張っても無駄でした。

「美空・・・」

「えっ、なんですか?」

シスターの怒りが頂点に達しました。

ちゅどーん!!

魔法が炸裂し、美空はお空の星になりました。

 

     月□日。

 

明日から美空は修学旅行に行きます。

お土産は生八橋を頼みました。

「うーん、明日から修学旅行。楽しみだな〜」

美空は本当に嬉しそうです。授業がなく、遊びに行けると思っているのでしょう。修学旅行は一応授業の一環なのに。

「楽しいことばかりではありませんよ」

そこへシスター・シャークティが後ろから声をかけました。

「今回の修学旅行は少々危険かもしれませんよ」

「危険・・・?」

「今回はネギ先生が関西呪術協会の特使です。向こうから何かしら妨害があるかもしれませんから、注意するように・・・」

くいくい。

私はシスター・シャークティのスカートのすそを引っ張った。

「これは持ったし、これも持った。おっと、あれを忘れちゃいけないなぁ」

美空はノンキに荷物の整理をしていました。

ぴくり。

シスターのコメカミがぴくぴくしています。怒っています。

「あっ・・・」

さすがに美空も気付きました。

「美空・・・。先ほどの私の話を聞いていましたか?」

美空はうんうん唸りながら、思い出そうとしています。でも、答えはきっとこれでしょう。

「すみません。聞いていませんでした!!」

思いっきり開き直った笑みでした。相変わらず美空は空気を読むのが下手です。

ぴくぴくっ!

ああ、シスターの顔が阿修羅の顔になりました。私は思わず顔を背けてしまいました。

ちゅどどーーん!!

爆裂魔法が繰り出されました。美空は再びお空の星になりました。修学旅行まで戻ってこられるかな?

 

     月○日。

 

「どうシテ、ミソラはイタズラが好きナノ?」

ここは教会内。いつもの礼拝堂の掃除に勤しんでいます。

いつも思うのですが、美空はいたずらが好きです。別に深い意味はなく、興味本位に聞いただけです。

「そりゃあ、面白いからでしょ?」

美空はきっぱり答えました。自信満々です。

「魔法を使えば高度ないたずらができるでしょ?」

ああ、やっぱり。そんなことじゃないかと思った。

「私って、本当は魔法使いにはなりたくないんだよね〜。親に無理やりさせられたみたいな〜。その憂さを晴らすためにいたずらを楽しんでいるみたいな〜」

「・・・」

「あっ、でもココネのことはほっとかないよ。アンタは私のマスターだからね」

そう私は美空のマスター。美空は私のパートナー。朝のお勤めも、休みの日もいつも一緒。

どんな時も二人はいつも側にいる。そんな仲です。

「そうそう、私の今一番の目標が何かわかる?」

唐突なネタフリだ。私には美空の考えていることがわかる。

「麻帆良祭でいたずら100人斬りを目指すのさ〜。去年は50人達成したからね〜」

そういえば鳴滝さんたちと楽しんでいたっけ。ちなみに今日は麻帆良祭の前夜祭。美空は陸上部なのでクラスの出し物の制作をしていました。

「どうせならシスター・シャークティにもいたずらしてみたいよね〜。あっはっは〜」

そうやって能天気に笑っていると、後ろにシスター・シャークティが立っていそうな気がする。

いない。気の回しすぎだったか。

「そういや知ってる?世界樹伝説」

私はコクンとうなずいた。麻帆良祭に世界樹の下で告白すると100%成功するという話です。私はあんまり興味ありません。だって花より団子な年頃ですから。

「美空。ちょっといいですか?」

シスター・シャークティがやってきました。

「今すぐ世界樹前広場へ一緒に来てもらいます。おそらく生徒による世界樹伝説の告白行為の阻止についてでしょう?」

告白行為の阻止?よくある迷信だったのでは?

「ココネがそう思うのも無理はありません。世界樹は強力な魔力をその内に秘めている魔法の樹です。即物的な願いはかないませんが、告白に関しては呪い級の威力を発揮します。詳しくは学園長が説明してくれると思います」

なんと恐ろしい話だろう。

「というわけで、いたずら100人斬りは諦めてもらいます」

やっぱり訊かれていたのか。もう目の鋭いこと。眼光だけで美空の身体が木っ端微塵になりそうな気がする。

美空は乾いた笑みを浮かべていた。

「事態は急を要します。あなたが私に対する思いも不問にします」

美空はどんよりと暗くなりました。去年は結構大騒ぎしていたのに、今年は自粛しなくてはいけないのです。

美空はシスターと一緒に出かけました。教会には私一人だけが取り残されました。

「告白阻止・・・。がんばロウ」

私は小さな胸のうち決意を硬く誓いました。

たぶん、告白する生徒たちの邪魔をするのが目的なのですが、まさか、あのような大事件が起きる前哨だったとは、誰も気付かなかったのです。

 

終り

 

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あとがき。

 

ひさしぶりのネギま脇役列伝いかがだったでしょうか?

原作のほうは魔法世界で大忙しです。一体どうなることやら。

ココネは麻帆良祭編で美空といつも一緒にいる女の子です。

なんとなく美空が中心ですね。彼女はろくに出番がないので、こうやって二次元でフォローしているみたいな。

では。

 

2008年3月8日