「ねぇねぇ、聞いた?中等部に新しい先生が来たんだってさ」

「知ってる知ってる。10歳の子供先生なんだって。この間電車の中で見たことあるよ」

「うーん、うらやましいなぁ」

ここは麻帆良学園聖ウルスラ女子高等学校、2−D。女生徒たちが今話題の子供先生の話をしていた。

「高音はどう思う?」

グループのリーダー格英子が教室の隅で本を読んでいる生徒に声をかけた。髪の毛は長く、ツーテールにまとめている。外ではよくナース帽を被っている少女だ。

「知っています」

高音と呼ばれた少女が短く答えた。

「実際は教育実習で3月まで正式に決まるかどうかは分かりませんが」

それを聞いた英子がぽかんとした。

「よく知っているわね・・・」

素直に感心している。

「別に・・・」

そのまま高音は本を読むのに夢中になった。

(そう、彼が何者かをね・・・)

 

ネギま脇役列伝:高音・D・グッドマン編

 

「お姉さま!!」

世界樹広場で高音は後ろから声をかけられた。声の主は女子中等部1年生の佐倉愛衣。美化委員でいつも箒を持っている。高音をいつもお姉さまと慕っている少女だ。

「何かしら、愛衣?」

「いえ、お姉さまが見えたからつい声をかけたくなって。すみません・・・」

芽衣はしょんぼりとなった。

「別に謝ることではないわ。たまにはそうゆうときがあるものよ」

すると、愛衣はにっこりと笑った。普段は内気だが彼女の前では笑顔になる。

「そういえば今度うちの学校に新任の先生が来たんですよ。しかも・・・」

「かのサウザンドマスターの息子・・・、でしょ?」

「は、はい!!それで高畑先生の代わりに2−Aの担任になったそうです」

「まあ魔法先生なら妥当でしょうね・・・」

サウザンドマスターだの魔法先生だのこの二人は何を言っているのだろうか?傍から見れば彼女らは電波系の会話をしているように見える。だがこのふたりには人には言えない秘密があった。

それは彼女らは愛し合って・・・。

「違うでしょ!!」

「お、お姉さま、いきなり何を?」

「あ、ごめんなさい、なんでもないのよ」

高音がほほほと笑ってごまかした。

このふたりは魔法使いであった。アニメに出てくる魔女っ娘とは違う。この学園都市には彼女らのほかにも魔法使いがいる。生徒であったり、先生であったりと様々だ。学園長も魔法使いなのである。麻帆良学園は関東魔法協会という裏の顔を持っている。この学園は魔法使いたちが作った学園都市であり、学園の警護をしているのだ。

「2−Aには学園長のお孫さんもいるし、神鳴流の剣士もいる。それに・・・」

「闇の福音もいる・・・」

ふたりは口をつぐんだ。

闇の福音。ダーク・エヴァンヴェル。吸血鬼の真祖である。彼女は15年前サウザンドマスターの呪いにより、ずっと女子中学生として勉強をしていた。もっとも彼女はサボりがちでよく屋上で昼寝をしている。呪いのせいで魔力は極限まで封じられ、無力な少女であるが、その瞳の奥には野望を捨ててはいなかった。他の魔法先生は彼女を危険視しているが、学園広域指導員の高畑は彼女にタメ口を聞いている。同級生だった名残だそうだ。

それに彼女にはパートナーに絡繰茶々丸という女子生徒がいる。だが彼女は人間ではなかった、肌には何の温かみもなく、表情も冷たい少女であった。だが奉仕活動を積極的に行っているので町の人たちの人気者であった。

彼女はロボットであった。同じクラスの葉加瀬聡美と超鈴音が彼女の制作に関わっているという。とても今の時代に作れる代物ではなかった。さらにチャオという生徒は2年以降の記録がどこにもないのだ。魔法先生たちもお手上げの問題児であった。

「あのクラス、きっと学園長が問題児を一箇所に集めるために編成されたのでしょうね・・・」

「そうそう、お姉さま聞いてますか?2−Aの生徒で神楽坂明日菜という人がいるのですけど、彼女が授業中に突然服を脱いだそうです。ネギ先生がくしゃみをしたその瞬間に」

「・・・おそらく風花・武装解除が暴発したのでしょう。まだまだ子供ということですね」

「一体あのクラスどうなるのでしょうか・・・」

それは誰にもわかならいことであった。

 

「絶対ネギ先生をドッジ部にスカウトするわよ!!」

教室内で英子が息巻いていた。取り巻きの少女たちもおーと雄叫びを上げる。

「なにかあったの?」

「あ、高音。実はね・・・」

なんでも英子たちが女子中等学校の屋上で、2−Aの生徒たちとコートの取り合いをしたという。高音は参加しなかったのでわからなかったが、2−Aの生徒たちとドッジ勝負をしたという。そういえば英子たちがドッジ部所属だということを思い出した。

「結局私たちが負けたんだけど、英子が神楽坂って子にボールをぶつけようとしたのよ、それが・・・」

ネギがそれを受け止め、打ち返した。英子たちの体操着は破れ、下着だけになってしまったのである。それで英子たちはネギをドッジ部にスカウトしようというのだ。

高音はネギが魔法を使ってボールを打ち返したのだろうと思った。一般人に安易に魔法を使うなど、魔法先生にあるまじき行為だと思った。

 

新学期。ネギは正式な経論として迎えられた。もっとも高音には関係なかった。あるのは学園の警護のみ、魔法生徒としての使命のみであった。

「あ〜グッドマンくん、少しいいかな?」

肌は褐色で、髪を刈り上げ眼鏡をかけている。魔法先生のひとりだ。

「何か御用でしょうか・・・?」

「うん、実はね・・・」

先生の話は最近寮ではやっているうわさのことであった。

桜通りの吸血鬼。しばらく前からある噂だが、満月の夜に寮の桜並木に真っ黒なぼろ布につつまれた血まみれの吸血鬼が出るという話だ。生徒のひとりが桜通りで寝ているのを保護されたという。甘酒でも飲みすぎたのだろうと言われているが、魔法使いたちには答えはひとつ。

闇の福音の仕業だと。

だが証拠がない。また彼女が仮に血を集めたからといって魔力を取り戻せるほど、呪いはやわではないのだ。学園長は釘を刺しておくと言っているが、彼女に対して生ぬるいと思った。なにしろ彼女は15年前まで魔法界で600万ドルの賞金首であった。女子供を殺した記憶はないが、闇の世界でも恐れられる極悪人なのだ。それをサウザンドマスターが警備員の代わりにしたのである。そのため彼女は関東魔法協会の預かりとなり、賞金は打ち切られたというわけだ。だが魔法先生たちは彼女を信頼などしていなかった。魔法のうでは確かに折り紙つきだが、どうしても心を許せないのだ。

「ネギ先生にも注意しなくてはね。エヴァンジェリンにとっては彼は仇みたいなものだからね。君も気をつけてほしい」

「わかりました」

だが魔法先生の気遣いはむなしく、事件は起きてしまった。学校側にも知られず水面下で熾烈な戦いが繰り広げられていたのである。

 

6月の文化祭準備期間。もっとも学園が活性化するイベントが始まろうとしている。麻帆良学園の文化祭は学園祭の名を借りたテーマパークに近いものであった。大学部では3日間の文化祭で数千万を稼ぐサークルもあるという。そのうえ2億近い金が動くともいわれているのだ。それゆえに警備がもっとも忙しくなる3日間でもあった。

高音は魔法先生に世界樹広場へ来てくれと言われた。彼女は芽衣と一緒にやってきた。学園長や魔法先生、魔法生徒たちが集まっていた。もっとも全員ではないが。

今回緊急収拾されたのは世界樹伝説の実行、告白を阻止することであった。普段ならそんなことはしないが、今回世界樹、正式名称は神木・蟠桃といって強力な魔力をその内に秘めているのだ。22年に一度の周期でその魔力は極大に達し、木の外へあふれ出し世界樹を中心とした6ヶ所の地点に強力な魔力だまりを形成するのだ。その魔力は人の心に大きく作用し、即物的な願いは叶わないが、こと告白に関する限り、成就率は120%、呪い級の威力を発揮するのである。本当は来年のはずだったが異常気象の影響で1年早まったそうなのだ。魔法使いは魔法で人の心を操ることは許されない。そのために警備をすることになったのである。

広場に10歳くらいの少年と、中学生くらいの少女が現れた。

少年はネギ・スプリングフィールドであり、少女は教え子の桜咲刹那であった。

ネギは初めて会った魔法先生や魔法生徒たちに驚いていた。裏の仕事をする刹那も同じであった。瀬流彦先生が魔法先生だということに驚いていた。ただ魔法生徒の中でシスター服の女子がフードで顔を隠し、うつむいていた。

学園長の話が一通り終わると、愛衣が異変に気がついた。

「誰かに見られています」

その瞬間魔法先生のひとりが後ろを振り向かずに右腕を振るった。無詠唱魔法であった。魔法の力を感じなかったので多分機械なのだろうと判断した。

「追います」

高音が言った。学園長は深追いはしなくていいといったが、そうはいかない。なんとしても捕らえねばならないのだ。

高音は魔法先生と共に敵を追った。相手はステルス迷彩を装備しているが、問題はない。そんなものを作れるのは大学のロボット工学研究部の人間だ、そして魔法を知っている人間でもある。

超鈴音、十中八九彼女であろう。一般人でありながらある事情でリークしているが、2度も問題を起こしている少女だ。

「どうしてわざわざ魔法を知りたがるのでしょうか?そんなにありがたいものなのでしょうか?」

「それは彼女に聞かねばわからないさ。グッドマンくん、君の影法師の出番だよ」

すると高音の影から彼女の倍以上背丈のあるマントを羽織った仮面の男たちが現れた。彼女の魔法である。

「魔法使いを怒らせた罪、償わせますよ?」

数体の影法師たちがチャオを追いかけていった。だがその数分後花火が上がった。普通の人なら聞き逃すところだが、花火の前に魔法の射手による爆音がしたのである。

『魔法の射手!?相手に魔法使いがいます。17対の使い魔が一瞬で・・・、なかなかの手練です』

愛衣の念話が聞こえた。相手は花火の音に紛れて魔法を使ったのである。

「天才超鈴音に魔法使いの仲間がいたのか?まさか闇の福音じゃないよな・・・」

魔法先生は不安そうに言った。なにしろチャオはエヴァンジェリンに力を貸しているのだ。ただエヴァンジェリンはかなり気まぐれで、同情でチャオを助けるとは思えない。でも油断は禁物だ。高音たちは3方に別れ、敵を取り囲む戦法を採った。だが念話で会話していたのに突然ノイズがかかったようになった。おそらく敵が念波妨害の魔法を使ったのだろう、一刻の猶予もならない。だがその瞬間雑踏の中からなにやら飛んでくるのが見えた。それは街灯を蹴り、自分に武装解除の魔法を放ったのである。高音の杖は飛ばされた、だが彼女も負けてはいられない。彼女は魔法を唱えようとした。が!!

「え?」

襲ってきたのはネギであった。念話を使うと魔法先生や愛衣の相手もネギの仲間だったという。チャオはネギの教え子であった。教え子が襲われそうになったからネギは彼女を助けたというのだ。どこぞのごろつき魔法使いが忍び込んだと思っていたが、真相を知りほっとした。

ネギはチャオが問題児であることを知らなかった。彼は記憶を消されそうになったチャオを自分に任せてほしいと頼んだ。魔法先生は今日のところはネギに任せると言って引き下がった。

「いいんですか?」

高音は不満そうであった。もう少しで問題児のチャオの記憶を消すことが出来たのにと。

「うんまあね。ふふ、しかしさっきの戦闘あれはなかなか見事だった」

魔法先生はご満悦であった。最後にさすがは彼の息子と評価していた。

「・・・でも納得いきませんわ。ネギ先生は彼女がどういう人間か、まるで理解していないから、あんなことが言えるのですわ」

高音は魔法先生たちが、ネギをサウザンドマスターの息子とひいきしているように思えた。だから甘いことばかり言うのだと。

「お姉さま・・・。仕方ありません、ネギ先生はまだ10歳ですから・・・」

10歳だから何をしても許されるわけではありません!!」

高音は逆にご立腹で、芽衣に当たっていた。

 

学園祭当日、彼女らはパトロールをしていた。外部からは関東圏を中心に家族連れでにぎわっている。事前にもらった探知機で告白寸前の人間を探し出せるのだ。最終日になると世界樹の魔力がピークに達してしまうが、初日でもかなり呪いの影響がある。時刻は午後1時半。

「あら高音じゃない、後輩とふたりで学祭見学?」

高音の同級生英子であった。隣には男子生徒がいる。

「直哉君。学校は違うけど同じドッジ部なのよ」

直哉と呼ばれた生徒は高音たちに挨拶した。

「それじゃあね」

英子たちと別れた。二人は世界樹広場のほうへ向かったようだ。高音たちはパトロールを続けていたが・

きゃああ!

甲高い声が上がった。英子の声だ。

さっき出会った直哉という少年が担架に運ばれていった。英子も付き添っており、話によれば直哉が自分に何か言おうとした瞬間、彼が吹っ飛んだそうだ。始めは何かのアトラクションかと思ったが、何か頭を撃たれたようである。

「3−Aの生徒龍宮真名さんの仕事ですね。彼女手加減しませんから・・・」

その噂を聞いた愛衣がつぶやく。よほど彼女が怖いのだろう。少し怯えている。龍宮真名の名前は魔法関係者では恐れられているようだ。

時刻は午後4時。ふたりはパトロールで忙しく、遊んでいる暇はなかった。

「ですがそれくらいやってもらわねば困ります、私たち魔法生徒は一般生徒を守るのが義務で・・・」

「お姉さま、あれを・・・」

愛衣が何かに指を指した。古本市だ広い広場だからたくさんの本が並べられている。そこにはネギと女子生徒がふたりで楽しそうに話している。ネギとデートしているのか?探知機も危険な数値を示している。早く止めねばならない。

「子供がこんな本読んじゃいけませーん!!」

なにやら女子生徒がネギが読んでいる本を取り上げた。そういえば眼鏡をかけた女子生徒がなにやら本を置いていた。あまり子供が読んでいい本ではないようだ。

女子生徒は本に躓くと、前のめりに倒れてしまった。ネギと抱きつくような形となった。ふたりは見つめあい、頬を赤くしている。

「何をやっているんですか?ネギ先生」

高音と愛衣だ。ふたりとも目の前のラブシーンに顔が赤くなっている。

「みんながパトロールをしている時に女生徒とデートとはいい御身分ですね」

高音は思い切り皮肉った。

「最終日の120%とは言いませんが、初日でも60〜80%の効果があるんですよ、軽率じゃないですか」

ネギたちは真っ赤になった。必死になって否定するが、高音はネギたちを引き離そうとした。愛衣の持つ探知機はすでに危険域の数値を示している。一刻も早く彼らを引き離さなくてはならない。

高音が女生徒の腕を引っ張ると、彼女は痛がった。それを見たネギはむっとしたのか、彼女を連れて逃げ出した。高音と愛衣は彼らを追い始めた。だがネギは女生徒を抱きかかえるとジャンプした。まるで飛行機が滑走路から飛び立つが如くだ。たぶん自らの魔力を供給し、身体の力を増したのだろう。高音と愛衣はネギたちを見失ってしまった。

 

世界樹が光りだした。誰か告白した生徒が出てしまったのだ。観測班からの念話が来た。カフェテラス辺りに光の柱が見える。指定された広場より少し離れているが、そのために対象外と決めてしまったのかも知れなかった。

「まさかお姉さま・・・」

愛衣は不安そうである。さっきのネギと女生徒かもしれないのだ。ふたりはどう見てもラブラブに見えたから。

「くっ、急ぎますわよ!!」

 

世界樹の魔力に囚われたのはネギであった。だがネギの様子がおかしい。初日なのに異常なまでに女生徒にキスを求めている。さっき桜咲刹那と戦っていたが、すさまじい戦闘力であった。さっき魔力供給の魔法を使ったから、そのせいで世界樹の魔力にかかりやすくなったのかもしれない。

「魔法の射手・戒めの風矢!!」

高音の魔法が炸裂した。だがネギはよけてしまった。屋根の上に高音たちが立っている。

「こんなことだと思っていました。ミイラ取りがミイラとは」

高音は使い魔たちを呼び出し、ネギの前へ降り立った。彼女は昨日の雪辱を晴らすためネギに戦いを挑もうとした、そのとき!!

たん!!

ネギが使い魔の一人を倒した。まったく目では追えなかった。八極拳の一種だろうが、ネギはそれらを屈指し使い魔たちを屠った。小柄なネギが3倍以上大きい使い魔たちを吹っ飛ばす。

一人、また一人。最後には使い魔たちを一掃してしまったのだ。一方的であった。

高音たちは圧倒的なネギの戦いに動くことすらできなかった。ネギは簡易式の杖を取り出すと、高音たちに魔法をかけた。

「風花・武装解除!!」

その瞬間高音たちの服は花びらの如く舞い散った。あとは彼女らの真っ白な身体のみ。思わず高音たちは高い声を上げてしまった。

「いやぁぁん!!」

その後はネギと同室の神楽坂明日菜が割り込み、女生徒こと宮崎のどかとキスをしたければ自分を倒してからにしろと言ってしまい、ネギの標的が明日菜に代わり、そして明日菜はネギに言葉では尽くせないことをされてしまったのであった。その後のネギもそれ相応の報いを受ける羽目となった。

 

「ひどい目に遭いましたね、お姉さま」

愛衣が言った。高音はむすっとしている。ふたりは体操着に着替えていた。

「でもあの可愛さであの戦闘力は反則だと思いますね」

「・・・」

高音は答えない。服をチリに変えられたことよりも、ネギの戦闘力だ。無意識とはいえ使い魔たちを屠り、凄まじい戦闘力を見せ付けられたのだから。サウザンドマスターの息子は伊達ではないということか。

あのあとネギに説教し、自分たちはパトロールに戻った。魔法先生から休憩しなさいといわれ、ふたりは龍宮神社辺りを歩いていた。この辺りは露店も多く、学園の関係者以外も店を出しているのだ。金魚すくいや、射的、ヨーヨー釣り。わたあめやりんご飴、屋台ならではの食べ物が勢ぞろいだ。

「お祭りの後はゴミが増えるから大変です」

愛衣がぼやく。彼女は美化委員だから、麻帆良祭の後片付けが頭に浮かんだのだろう。

「私も手伝ってあげるからぼやかないの」

「はい、お姉さま!!」

すると愛衣はわたあめを買ってきた。

「どうぞ、お姉さま・・・」

愛衣は頬を染めている。

「ありがとう愛衣」

その瞬間愛衣は茹蛸のように真っ赤になった。

『ただいまより予選会を始めます』

スピーカーからびりびり響くような音量が流れる。見ると龍宮神社の前には人が大勢並んでおり、何かのイベントを始めたようである。

看板には、「まほら武道会復活!!優勝賞金一千万!!」と書かれていた。

まほら武道会。20年前までは麻帆良祭の目玉であったが、近年の格闘ブームで衰弱の一途を辿っていたようだが、何者かが権利を買収したという。その人物は。

「超鈴音・・・、ですね」

意外な場所で意外な人物の名前が出てきた。ほうっておける状況ではない。ふたりは偵察のためにそのまほら武道会を見てみることにした。

ずぅん!!

巨漢が空を飛んだ。いや吹き飛ばされたのだ。やったのはネギであった。相手は体重10倍以上もある巨漢であった。その後もネギは次々と大人たちを倒していった。他にも広域指導員の高畑先生や、闇の福音、エヴァンジェリンも参加しているのだ。

「うわぁ、やっぱり強いですネギ先生」

愛衣は素直に感心したが、高音には愛衣の声は届いていなかった。あるのは身体の芯からこんこんと湧き上がる怒りの炎であった。そのオーラに愛衣は怯えた。焼き芋が焼けそうな怒りのオーラだ。

「・・・反省しますと言いながら、すぐこんないかがわしい大会に出るとは・・・」

「お、お姉さま?」

「愛衣!!」

「は、はい!!」

「私たちもこの大会に参加しますわよ!!」

「ええ!!」

愛衣は驚いた。いきなり何を言っているのだろうか?

「魔力を供給し、障壁を張っていれば私たちに敵う相手はいません。優勝して一千万は寄付しますよ!!」

「え、ええ!!」

ルールでは飛び道具及び、刃物の使用禁止。そして呪文詠唱の禁止。この2点を守ればよいのである。なら無詠唱魔法なら大丈夫というわけだ。ルールに呪文詠唱禁止と出ている時点でおかしいと思ったが、高音は気づいていない。

「ふっふっふ、ネギ先生。そのたるんだ職務態度に私が愛のムチを贈りますわよ!!」

おーほほほ。高音の高笑いが響いた。

「予算参加するなら、もうじき締め切りだよ」

受付のおじさんがふたりに声をかけた。

「も、もちろん参加しますわ!!」

「・・・いいのかな。一般人の目の前で魔法使うなんて」

高音はネギのおしおきに頭がいっぱいだが、愛衣は不安を隠しきれなかった。特に高音が一番不幸になる。そう思った。

 

終わり

 
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これが初めてのネギまの単品小説です。

高音・D・グッドマンて誰!?という人がいるでしょう。彼女は単行本9巻から登場した魔法生徒です。ほらナース帽を被った女生徒のことです。

名前自体は10巻でトーナメント表に出ております。彼女(平成17521日)11巻に収録されると思いますが、武道会では素っ裸にされちゃってます。対戦相手を赤松健先生の代表作ラブひなのヒロイン、成瀬川なるのなるパンチに似ているんです。

今回は単行本10巻のラストにあたります。

他にも脇役を出したいと思います。では。