九龍ウソテク
マダム・バタフライのトレードショップで交換を100回すると、あるものが手に入ります。それは・・・?
『レイザーラモンHG』裁判官の石100個
マダム・バタフライの交換リストにそれがあった。てっきりコスタリカの石球で終わりと思ったのに。それに裁判官の石100個と交換とは、いったいどんなHGだろう?きっとガスよりも、スタンよりも強力なHGに違いない。
「・・・というか、俺はいやな予感がしてならないぞ」
皆守は乗り気ではなかった。八千穂だけは乗り気だった。
「え~、なんか面白そうじゃん!あたし絶対ほしいな~」
「交換に必要なブツは葉佩が集めるだろうが・・・」
きらきら☆
葉佩の目が輝いている。交換する気満々だ。
葉佩は天之羽衣と賢者の壺を装備し、黒塚とJADEをバディにし、シホタルを狩りまくり、苦労して裁判官の石100個をゲットした。
「・・・って、たった2行じゃねーか!省略し過ぎだっての!!」
「ありがとう・・・」
さっそくレイザーラモンHGを交換し、自室へ送った。
「いったいどんなHGかなぁ?」
「・・・俺は悪い予感がしてしかたがねぇが」
葉佩はわくわくしているが、皆守はあくまで不安そうだ。さて葉佩の自室にはどんなHGが待っているのか?
「どうも~!ハードゲイでーす!フゥーーーー!!」
目の前にはエナメルの服に、サングラスをかけた怪しい男が待っていた。まるで怪しい外国人ぽい格好だ。しかも腰を激しく振っている。
「さ~、下のほうを見てくださ~い♪腰をかくかく振ってますよ~」
「・・・あんた誰?」
「ハードゲイでーす。正確にはレイザーラモンHGでーす!!」
これがレイザーラモンHGなのか・・・。HGはハンドグレネードではなく、ハードゲイの略だったのか・・・。葉佩は目が丸くなった。
「あの人レイザーラモンの住谷だよ」
八千穂が言った。
「あたしね、奈良県出身だけど、親戚のおじさんによく大阪で吉本新喜劇見に行ってたんだ。あの人漫才師のレイザーラモンだよ、確か相方は出渕だったかな?」
「というか吉本の漫才師がなんでこんなところにいるんだよ?」
皆守がつっこんだ。
「それが自分にもよくわからないんです・・・。気がついたらここにいたみたいで・・・」
ここは葉佩の自室。彼らはこたつに囲んでいた。女子厳禁の男子寮で八千穂もいた。
レイザーラモン住谷も、今はハードゲイファッションを脱いでおり、素であった。丸刈りで体格のよい男である。プロレス同好会で学生プロレスに熱中しただけのことはある。
「ちなみにハードゲイの芸風は2002年からやってます。他にもビッグポルノというトリオも組んでいるんですよ」
「まあ、あんたのことはどうでもいいんだ。問題はあんたが部外者でさっさと出て行ってもらいたいんだよ。ここは生徒会が教師たちよりうるさい学校なんだ」
「でも甲太郎。住谷さんを呼んだのは僕なんだよ?それをこちらの都合で出ていけだなんて・・・」
「お前は部屋でこんなの飼うつもりなのか?朱堂と一緒に暮らすと同じなんだぞ?」
それはとても怖い。ライオンと同じ檻で一緒に暮らすのと一緒だ。でだがレイザーラモン住谷は心配ないと手をぶらぶらと振った。
「あ、心配しないでください。ハードゲイはキャラクターなんです。昔ステージで腰を激しく振っていた姿をケンドーコバヤシが『おまえはハードゲイか!』と突っ込まれまして、それで思い切ってハードゲイキャラを演じようと思ったんです」
住谷はみかんをむきながら答えた。というか、いつの間にかみかんを食べている。結構図太い神経だと思う。
吉本興業では芸人は何か持ちねたをもたなくてはならない。
チャーリー浜の「ごめんくさい、こらまたくさい、あ~らくっさ」とか、
島木譲二の「ぱちぱちパンチ」に「ぽこぽこヘッド」などのギャグが必要なのだ。
ハードゲイの場合、「何々、フゥ―――!!」と、フゥ―!を連呼するのだが、あんまり受けてない。
「まあ、せっかくですし、何か私にお役に立てればいいのですが・・・」
「そうだね。じゃあ、バディとして来てもらいましょうか」
「バディ?なんの?」
「この学園には墓場があって、その下に遺跡があるんですよ。僕はその探索に来た宝探し屋なんです」
「ほう、面白そうですね。がんばりますよ~、フゥー!」
レイザーラモンHGはやる気満々であった。一方皆守はやる気ゼロ状態であった。
第13話
「・・・転校生か」
ここは遺跡の最下層。待ち受けるは墓守の長であり、天香学園生徒会長阿門帝等。
「どうも~、ハードゲイでーす。フゥ―――!!」
葉佩の後ろでレイザーラモンHGが激しく腰を振っていた。
いや、HGだけではない、葉佩と皆守も彼と同じ衣装に身にまとい、腰を振っていた。BGMとともに踊っている。
「宝探し屋、フゥーーー!!」
「天香、ふぅ・・・」
葉ははのりのりだが、皆守はまじで嫌そうだった。これが他の人に見られたら、自分はHG,ハンドグレネードのように爆発してしまいそうだ。八千穂あたりがビデオカメラで撮影して、マミーズでみんなと観て、大笑いしているかもしれない。そんな気がしてきた。
「九ちゃん、がんばってー!!」
考えが甘すぎた。八千穂は観客を多く引き連れて、見学に来たのであった。
「皆守君・・・、あんな格好で寒くないのかしら?気は確かなのかしら?」
「甲太郎の奴も、けっこう弾けているじゃないか。きっと寒さに気合を入れているんだろうな。風邪をひく確立は限りなく高いが」
白岐と夕薙は言いたい放題だ。舞草は観客にお煎餅とキャラメルを売っていた。肥後はデジカメで撮影し、ホームページに掲載していた。皆守は穴があったら、その上にコンクリートで埋めてもらいたいほどであった。そのくせ葉佩は平然とみんなに手を振っているから、世の中何か間違っている気がしてならない。いや、絶対そうだ!!
「・・・そいつは誰だ?」
「俺に聞くな・・・」
皆守は頭を抑えていた。阿門も額に右手を当てた。青筋まみれの顔が、さらに青筋が青筋が増えた気がした。頭が痛む。
だが二人は知らなかった。これがレイザーラモンHGのパッシブスキル『フゥ―――!!』であることを。周りの敵を一定の確率で頭痛状態にするスキルなのだ。今この状態で阿門を攻撃すればダメージが25%増えるのである。
「この人はレイザーラモンHGさんで、僕がマダム・バタフライの交換で・・・」
「説明しなくていい」
皆守につっこまれた。
「まあいい。墓を侵すものには呪いを・・・。この遺跡とともに眠るがいい・・・」
「ばっちこーい!!」
突然HGが阿門に尻をむけ、ぱんぱんと尻をたたいた。
HGのアクティブスキル『ばっちこーい!!』である。
「・・・ぐぅ」
吐気がしてくる。人型は風邪や悪寒、耳鳴、吐気などの状態異常になりやすいのだ。
「・・・なんか盛り上がりに欠けるな」
皆守はあさっての方向を見ていた。これで阿門が倒されたなら、学園史上の大恥になる。というより墓守の恥だ。
「神撫手・・・」
阿門の力が炸裂した。
「フゥ――――――!!」
断末魔を上げて、レイザーラモンHGは跡形もなく消えてしまった。葉佩たちもHPゼロで仰向けになって倒れてしまった。
まさにHGのごとく、刹那に消えた幻のバディであった。
「・・・あんなの一生流行らないよな」
薄れ行く意識の中、皆守はそう思ったが、2005年レイザーラモンHGは一躍ブームになったことを彼は知らない。というか知りたくもなかった。
『ハンターの死亡を確認』おまけ
名前:レイザーラモンHG
能力
身体+15
知性+10
生命+15
学科
体育+10
美術+10
論理-15
「・・・って、あいつ知性あるのかよ!!」
「そうみたいだよ。同志社大学出身みたい。それに特技がイラストで、昔は漫画家を目指したくらいだって」
さすがは八千穂。吉本タレントに詳しい。というか彼女はパソコンの前に座っている。
「まあ論理が-15は納得できるがな」
終わり
この小説はフィクションです。
あとがき
一日でさらさらと書いた小説です。つうか2006年最初の小説がこれとは・・・。
ネタは単にマダム・バタフライの交換で裁判官の石で、パルスHGとか交換できるから、ならば裁判官の石100個でレイザーラモンHGが交換できるのでは?と思っただけです。
八千穂は奈良県出身だから、大阪に近いわけで、吉本にも詳しそうだったからです。
では。
2006年1月10日