バラ作業こぼれ話
薔薇日和
6月11日、凋花切りが始まりました。
毎年のことながら、ピーチブラッサムが咲き出すと、毎朝この作業に追われます。次から次へと咲いては散る花。ほぼダブルの花弁は風が吹いただけでひらひらと舞い落ちます。
大輪花のように地面を汚すわけでもなく、まあそれだけの理由なら慌てて切ることも無いのですけど、実はこの花、すぐに結実してしまうのです。
凋花切りに愛用しているサセックストラッグ。
最近中国産のまがい品みたいなものが出回ったりしていますが一目見れば英国製のものはわかります。
ヴィクトリア女王御用達で、長きにわたり英国で愛用され続けてきました。ベテラン職人がひとつひとつ手作りしていて材料にはチェストナッツや柳が使われているそうです。
お値段はちょっと張りますが頑丈で長持ちするところが愛され続ける所以でしょう。
私も薔薇をはじめてまもなくからずっと、もう10年近く愛用しています。
そもそも、そのオレンジの実が見たくて約10年前に植えた花です。最初の2年くらいはなんとか実を見たいと必死で、花後はほったらかしでした。でも大輪種であることと気候のせいか、「あふれるような結実」は見られず、ぽつりぽつりとつく程度。結局それよりも毎回きちんと凋花切りをして、何度も花を見た方がいい、ということがわかりました。今では大輪多弁種がたくさんあるので、ピーク時は一日にバケツ何杯もの凋花が出ます。
実はこれがサセックストラッグそのままの姿。
木肌がむき出しで、汚れが付きそうだなあ〜と最初に思いました。
汚れて泥の色になることが、ひとつの「味」なのですけど・・・英国と違って湿気の多い日本。カビでも生えたらなぁ・・・と考えた末、上のように塗装して使っているわけです。
リビングルームの窓の前にソファーとテーブルがあります。
ここで窓から庭のバラを眺めながらお茶を飲む時間が至福のひとときであることは言うまでもないのですが、時には視覚だけではなく嗅覚によってもそれを感じることができます。部屋を通り抜けていく風が、香りのプレゼントを運んでくれるのです。
今日その思わぬプレゼントに、初めとまどいました。窓のすぐそばに咲くヌルマハルはあまり香りのない花だと思いこんでいたからです。
どうやらこの花、果物が熟すと濃厚な臭いを発するのと同じで、咲き進み何日もたつと気温の上昇に伴って甘く強い香りを発するようなのです。
最初それに気がつかなかった私は思わず外へ飛び出し、香りを嗅いで、そのことを知ったのでした。
6月19日 本格的な凋花切りが始まりました。
本当はいつまでも付けておくとあまり良いことはないんです。いつもの年だとバンバン切っちゃうんですが。今年は21日にチャリティのオープンガーデンがあるのでそれまであまり豪快に切るわけにはいかないのです。とにかく30度近い暑さが一週間も続き、6月としては異例のことなわけでして・・・花の疲れ方が尋常ではない感じです。
6月21日 チャリティのオープンガーデンです
二ヶ月も前に期日を設定したためバラはピークを過ぎていましたが、昨日までのような猛暑ではなく思ったよりもたくさんいらっしゃいました。トールペイントの先生をしていらっしゃるMさんから素敵なガーデンプレートを頂きました。(感謝!)
一週間続いた猛暑の後、昨夜の非常の雨・・・。折しも梅雨入りのニュース。早朝、庭に出て細雨の中凋花切り。雨後のバラは脆弱なガラス細工のよう。触っただけではらはらとこぼれ落ちる・・・
そんな幕開けで始まったこの日でありましたが、その後は雨にも降られず、終えることが出来ました。
今日の人気者、ゆきあかり。
レディ・エマ・ハミルトン
凋花切りも一息、ほっ。
6月29日 梅雨らしい雨の一日。
イングリッシュローズやオールドローズの一番花がほとんど終わり、ここ一週間は凋花切りに追われる毎日でした。今年はオープンガーデンがあったため、いつもですと無情にバサバサ切ってしまうような花も出来るだけ残しておきましたので、実はひやひやしていました。やっとの思いでしがみついている花、そこへ雨が降ると右のような惨状になるからです。案の定、オープンガーデン(この日はなんとか一日持ちました)の晩、雨が降って翌日は見るも無惨。花を見に来たいという方々のお申し出もこの日はお断りしなければなりませんでした。
慎ましやかな遅咲き種
ノワゼットのラマルクです。これをはじめ、ノワゼットは全般に遅咲きが多く、デプレを除いてこれからが見頃です。デプレも以前はそうでしたが、成長するに従って開花時期が早まってきたよう。でもこのラマルクやアリスター、クレパスキュルなどは今からどんどん蕾を付けてきます。
昨年一度にノワゼットを増やしました。寒冷地では難しい品種と言われ、なかなか一筋縄ではいかないのがこの品種です。でも今年、素晴らしい花付きを見せたデプレを見て、時間がかかってもやっぱり育てたいな、と思うのです。
たおやかで楚々としたこれらの品種は決してイングリッシュローズやオールドローズの最盛期に一緒に顔を並べたりしません。自分の魅力、役割を理解している花、とでも言いましょうか、きちんと庭が寂しくなった時期を見計らって咲いてきます。あでやかなイングリッシュローズたちと一緒だったら思わず見過ごされてしまうでしょう。ある意味とても賢いバラです。
またこのほかにもつる性のシュラブ、シーフォームやポールアルフはやはり小ぶりでたおやかな花。きちんと時期をずらして咲き始めます。すごく賢いなあと思うのは、シーフォームやポールアルフ、とても花付きが良く見栄えもしますが、ちょっと遅れると今度は大型ランブラーのクリムゾンが咲いてくるのです。小花ですが鮮やかな赤でとても目立つ花。だからこのクリムゾンともダブらないように、本当に上手な立ち位置で咲いてくるのです。
クリムゾンが満開になる時期はいつも梅雨のさなか。雨水を含み重そうに垂れ下がりながら、それでも夏の庭が寂しくならないよう、存在感を示します。やはり自分の役割がわかっている花なのです。
10年の間に品種はどんどん増えました。自分が好んで入手しているわけですから少なくともそれぞれの品種の名前ぐらいはもちろんすぐに言えます。解説せよと言われれば、簡単な性質なども。
ただ実際これだけの品種に水や肥料をやり、剪定をし、鉢のものは植え替えをし、その上どの品種がいつ咲いたかなどを覚えておくなんてことは聖徳太子ではないので到底出来ません。そこで数年前から自分なりに出来るだけ簡単にそれらのことを把握しようと、工夫はしています。
私の方法は表による管理方法。これですと一目瞭然、いつでも簡単にデータを知ることができます。
EXCELによる開花表。年間を通じて、いつどの花が咲いていたかわかります。
オリジナル作業表。消毒や施肥などバラ作業をするときはこの作業表を持って庭に出ます。気づいたことも何でもメモしておきます。
細かいことは庭に持って出た作業表に書き込み、家にはいるとすぐにパソコンへ。EXCELで作った管理表のショートカットをデスクトップに置いておき、即開いて記録します。
毎年の気候や開花状況、病気の有無、その他バラの様々な様子を記録しておくことによってよりいっそうバラの性質がわかります。一見面倒そうですがとっても簡単にすべてのバラのことを把握できるのです。また、同じ失敗を繰り返さないためにも必要な作業です。私は「バラのカルテ」と呼んでいます。
ラマルクの魅力
このページで一度ご紹介済みですが、あらためてラマルクの魅力について・・・しつこいようですが・・・。
うちのラマルクをとても好んで下さっている仙台の友人がいます。この春、たまたまうちに来て下さる機会があり、その時ほとんどのバラはまだ咲いていませんでした。でも忘れずに「ラマルクは!?ラマルクはどれ?」と。いつもHPを見てくださっているのでちゃ〜んと覚えていてくれたのです。
写真写りの良いバラというのは他にもたくさんありますが、中にはベストショットチャンスがほんの数時間なんてものも。
実際の花を見るとあれ・・・?というくらい違っていたりして。でもラマルクは実際の花も期待を裏切りません。
さてこのラマルクの魅力ですがなんと言っても透明感です。白バラはたくさんありますし、褪色して白くなるものもたくさんあります。でもこのラマルクの白はちょっと他のバラには真似できないような清雅で楚々とした趣があります。
この花にそういった奥ゆかしさ(源氏物語に『おくゆかし』という言葉が何度となく使われますが、まさにそこで使われているような意味合いの奥ゆかしさであります!)を与えているひとつの理由に枝振りというものがあります。
棘が少なくスレンダーで、五枚葉は手指をすぼめたようにまとまって俯きます。なんだか『和』とか『禅』とかいったものをを感じさせる風情があるのです。もしも和風庭園を計画している人に「何かバラを」といったアドバイスをするとしたら・・・私はこのラマルクをお薦めすると思います。
今年の夏に思うこと
まずは下の写真をご覧ください。
この夏の記録的な猛暑で起きた葉焼けの写真です。
出来るだけ日当たりの良いところに植えていますので、例年多少の葉焼けは見られます。
日陰の方が花は綺麗ですが花付きは悪くなりますし病気にもなりやすくなるのでどうしても日当たり条件の良い場所を選んできたわけです。昨年家の前の空き地に新しい家が建ち、夏場は影響ありませんが早春や晩秋以降は庭に大きな影が出来るようになりました。
でもそれも庭の半分まで。もともと「空き地にはいつか家が建つ」という予測のもとに植えてきたので、バラはすべて家寄りの半分の方に植えてきたのです。
そんなわけで昨年の大きな環境の変化にも大した影響は受けていないのですが・・・とにかく今年の暑さは酷い!
消毒のあと、たまたま気温が上がりすぎたりすると薬害が出たり、そういう葉焼けは今までにもありましたが、ことしはまず最初の開花時期がすごく暑かった。
ちょうどバラの開花に合わせたかのように皮肉な・・・六月にしては経験したことのない暑さでした。(28度越えが10日、30度越えが4日)ですからその時点ですでに若干の葉焼けは出ていたのです。
でもバラはいつものように花を咲かせ、その後順調に新芽を伸ばして二度目の開花が始まったわけです。しかしこの夏の暑さはあまりにも過酷で30度越えが13日、そのうち何日かは35度を超える猛暑日でした。
また、寒冷地特有の「朝の涼しさ」がなく、8月2日から17日まで連続で最低気温が20度越えでした。(酷暑が過ぎたら今度は傍若無人な雨続き・・・涙・・・)
そんなわけで初めて「暑さで葉を落とす」という経験もしました。今まで関東以南の現象だと思っていたのですけど。これまでは「寒さに弱い品種」をなるべく避けて品種選びをしてきましたが、これからは暑さに弱いものもNGのようです、トホホ。
11月。剪定・誘引作業が始まりました。
クレプスキュル
今期は(昨年もそうでしたけど)大幅な庭の改造を考えています。去年物置を移設した後、庭の様子がかなり変わったので、色々手を加えたいところが出てきました。それと雑草対策・・・。やはり芝生はもう無理かもしれません。かといって土の地面がむき出しでは草ぼうぼうになりますし、泥ハネもします。
まあでもその前に・・・バラたちの冬ごもり支度です。いつもツル性の大変なものから始めるのですけど、なんだか11月に入って雨が多い。
雨の時の誘引作業は厳禁です。枝は乾燥しているときに誘引しないと折れやすいからです。
とりあえず茂り放題になっていたクレプスキュルにオベリスクをあてがいました。すでに上部までツルが来ています。今年は伸びるばかりであまり咲きませんでしたが、そういう年は来年に期待して割り切った方が良いのです。
デプレも葉を落として丸裸にしました。これは葉が付いていると枝の見極めが非常に難しいのです。しかし葉を取ってみてもなお難しい・・・。どの枝を切って良いものか。今年すごくたくさん花をつけてくれただけにより慎重になってしまいます。
オフの作業も今後、ここに少しずつ紹介していきたいと思います。
デプレアフルールジョーヌ 整枝後。
今はここまで。あとは春に枝先を切ります。
アブラハムダービー、テスオブザダーヴァービルズ
古い枝は思い切って根元から切ります。なるべく均等に日照を得られるように誘引。硬い枝はとりあえず仮誘引。切った枝は危なくないよう、下のように米袋に入れて捨てます。
上↑ グラハムトーマス整枝前
下↓ グラハムトーマス整枝後
うちのバラでもっとも枝をたくさん切る株はこのグラハムトーマスです。毎年この株一つで大きな30キロ用米袋に二袋分のゴミが出ます。整枝作業にもっとも時間がかかるのはデプレとこのトーマス。とにかく葉が大量に茂っているのでそれを落とすのにひと苦労です。でもオフ作業で葉をすべて落とすのはもっとも大事なこと。病気の菌は葉の上で越冬しちゃうからです。
落ち葉を掃くのには、雪用のプラスチックほうきが便利。葉をしっかり集めてくれます。
初冬に行う剪定・誘引作業は『腹八分目』です。本当はすべて春先にやった方が良いのでしょうけど、春は時間がない!雪解けの状況や気温など、毎年違うので時期を見極めるのも難しいし突然暖かくなればあっという間に芽吹いてきてしまいます。
ですから私はおおかた12月までにやっておいて、春は整える程度にしているのです。あまり切りすぎても、冬が寒いと枝先がかなり枯れ込みます。本当は丁寧に冬のコートを着せてあげればいいのでしょうけどそこまで手をかけてはいられない。
春先に枯れ込んだ枝を切り、さらに細い枝を減らしてもっとスッキリさせます。ブッシュのものはさらに深く切り込みます。仮誘引しておいた枝は形状記憶しているので固くなっているうちにさらに強く誘引します。
11月末 まだまだ作業が続きます・・・
プロスペリティ 東側に地植えしました。
シーフォーム これも東側に地植え。うどんこに弱い面があるので東端の方が良いのです。
レディエマハミルトン。四季咲き性が良さそうなのと、あまり背丈が高くなさそうであること、直立性で枝が暴れないことなどを考慮して玄関の脇に地植えしました。
キャサリンモーレイ。前から地植えしたいバラでした。直立性で枝は暴れませんし、四季咲き性も良い。なんと言ってもその容姿の美しさはピカイチです。アプローチでも特に目立つところ、クロッカスローズの隣に地植えしました。場所を取らないようオベリスクをあてがいました。
雨が続いたと思ったら突然寒くなり18日には積雪・・・。地植え作業がほとんど進んでいなかったのでそのあと天気の日に慌てて進めました。地植え作業は穴を掘ったり土を運んだり、労力がいるので一度にひとつ。鉢植えのように見えますが実は45pの鉢の底を抜いてあります。その後の草取りですとか管理がしやすいよう、そして急激に大きくなりすぎないよう、最近はこの方法で地植えします。
ポールアルフ。素晴らしく美しい多花性のバラ。ほぼ一季咲きですのでこれも東側。
クリムゾンシャワー。一季咲きですが遅咲きです。すでにアーチに一株ありますが、あまりに存在感があるので二株目を植えることにしたのです。周りにはU字型の鉄パイプを三本、上から見て三角形になるように組みました。
ラマルク(手前)とヌルマハル(奥)
鉢植えのものも枝が伸びるものはオベリスクを添えました。鉢替えのものはひとまわり大きな鉢に。そのままの大きさのものは土を少し入れ替えます。庭のあちこちに置いてある鉢は12月に石灰硫黄合剤で消毒してからすべて家の周りに並べます。家の熱が伝わりやすいのと風よけになるからです。