ローカルの極み、方言

 

ローカルなものこそ、われわれの血と肉と心の基礎をつくったものです。

「方言」などはローカルな文化の最良なもののひとつでしょう。当地の

方言は、名古屋弁とか尾張弁とかいわれるものです。当地が、政治的に

経済的に社会的に一体となってしまったいま、何が名古屋弁で何が尾張

弁かを区別することは、ほとんど意味がないように思います。

 

名古屋弁

 

さて「名古屋弁」は、コメディアンの南利明氏や落語家の三遊

亭円丈師などの口をかりて、全国にすこしは知られる存在に

なったようですから、それ自体は喜ぶべきことなのでしょう。

でも彼らが発するのは、あくまで滑稽を演出するための手段

であり、誇張が強く、観客、視聴者に媚びようとする目的が明

らかでして、当地に住まうものとしては、耳に馴染むものでは

ありません。全国的に言語文化の画一化が進み、残念なが

ら当地でも、標準的な名古屋弁を聞くことは大変むつかしくな

りました。しかし名古屋弁は、地域文化のきわめて重要な一

部です。これからもできるだけ使うようにし、若い人にも後の

世にも何とか伝えてゆきたいもの。これが私の念願です。

 

具体例 <ア行です>

アグム 倦む、飽きる
アジナイ 不味い
アダニ 割合に、思ったより
アタンスル 仇にする、仕返しをする
アブタレル 煽られる、打たれる
アヤスイ たやすいの転訛
アヨブ 歩くの転音
アラス 新品
アンノジョウ 案の定、思案のとおり
アンバヨウ 塩梅よく の訛り
イカツイ 短気で怒りやすく、挙動も粗暴なこと
イザコザ もめる、紛糾
イチコロ 一度で負けてしまうこと
イッコク エゴイスト、融和を欠く
イッチョウラ 一枚きりの薄着、即ち晴れ着
イノク 動くの転音
イリャーセ おいでなさい
イロム 果実などか色づく
イワシテヤル 制裁を加える
インデカンデ 往んで還んでの転訛か、差し引きなし
ウケス めだか
ウザル 叱りつける
ウッソ
ウッツカッツ 同じような、甚だ似ている
ウッツクシュウ 何も残らず、洗いざらい
ウワマイ 上前、上前を取るとか撥ねるとか使う
ウツル よく似合う
ウデコキ 敏腕家
ウワッパリ 上被り、エプロンと同じ用途に使われる
ウンナシ 同じの訛り
エーコロカゲン よい頃合いと加減の意か、諾否判然としないことば
エイダナイカ イイジャナイカ、グズグズのうちに済ます気持あり
エートコ 適当なところ、または良家、富家の意
エカ ヨイか、ヨイダロウの意がある 念押し
エゲツナイ 欲深い、露骨な、人情のない
エシキシ 会式師のこと、縁日商人、大道商人
エテシテ ままあること、エテシテ若いころは云々
エドル 彩色する
エライゾ ひどい目に合わせてやるぞ
オーゲンダラ おやじから大目玉(オーゲンダラ)を食った
オーソウヨク 大掃除
オエベ 機嫌の良いこと(恵比寿さんの連想か)
オシヤイゴンボ 混雑のさま(押し合い揉み合いで牛蒡の皮をむくことから)
オジョロマムシ お女郎蝮、一見上品温和、しかし巧言の裏に針ある女性
オゾイ むさい、悪い
オソガイ 恐い
オダイ 富裕で名望のある家(お大尽か)
オチャワカス 答えを出す、白状する
オッサワラ 髪の甚だ乱れたさま

注:「名古屋言葉辞典」 山田秋衛編著

昭和36年8月名古屋泰文堂刊から

引用させて頂きました。

 

以上