オーロラの夜彼女は街並を見下ろしていた。まだ電気のきていない場所もあるけれど、取り敢えずは街は以前の生活を取り戻しつつ合った。 「ここにいたんですか、ローズさん」 背後からほんわかとした声がかけられ、ゆっくりとソルティが彼女の許へ歩み寄る。 「何、見てたんですか?」 少し、窺うような気配を滲ませソルティが訊ねる。夕方に、あのビルを訪れたローズを迎えにきたロイから…何かきいているのかもしれない。 「ただ…オーロラを見ていただけ…」 「そうですか」 素っ気無い応えにもソルティは素直に頷き、ローズの隣に並ぶ。同じように街と、頭上を覆う輝くカーテンを眺めた。 彼女達は黙ったまま、しばらく静寂が支配する。 ローズの横顔にソルティの視線が向けられるのを感じる。そして、 「好きだったのかもしれません」 (――っ!?) 不意のソルティの発言にローズは息を飲み、すぐに否定しかける。だが、 「エウノミアは…あの人、アシュレイのことを…」 ソルティはそんな突拍子もないこと口にした。 「何言ってるのよ、機械がそんな感情持つなんてバ――」 バカらしい…と云うのをローズは何とか飲み込んだ。だが、ソルティはそれを察したように微笑む。 「変ですよね」 自分でも変なこと言ってると思います…、そう呟きながらもソルティは続けた。 「…エウノミアはあの人を、どうしてそのままにしてたんでしょうか。自分に逆らおうとしてることはわかってた筈なのに」 確かに12年前のブラストフォールを引き起こすこととなったのは、アシュレイの造反とも思える行為の所為だ…。 「自分の手足となる部下が必要だったから…でしょ」 「ええ、でも…幾らでも取り替えることが出来たはずなんです。データを移して、新しい…忠実な部下を作る事だって出来たのに…」 「それは、面倒だったから…」 「機械が、ですか」 そう云って、ソルティが笑うので、ローズは少し赤くなり目を伏せた。 「もしかしたら――エウノミアにとって、あの人でなければならなかったから…。私に取ってのロイさん…みたいに…」 掛け替えのない存在…そう告げるソルティの眼差しは真剣だった。 「………生かし、直して…側に置きたがった?――そうね、恋愛…みたいよね」 目を閉じて、ゆっくりと息を吐きローズもまた笑った。 「バカよね…アイツ――想ってくれる人がこの地上【ここ】にだって…いっぱい、いたのに」 シルビア達に慕われて、もしかしたら、この地を司る―神のような―存在にも慈しまれて…。それでも、彼が望んだのは求めたのは―決して手に入れることの出来ない―過去の想い人との失われた未来だった。 「――いつか、いつかさ…」 独り言のようにローズは呟いた。 彼がこの街を、人々を―管理の名の許にではあるが―守ってきた、それもまた事実だ。 人懐っこくて、寂し気な笑み…その全てが嘘ではなかったからこそ…彼は、彼に想いを寄せる“彼女達”がいたのではないか―― 「――ローズさん?」 黙ってしまった彼女に問いかけるソルティに答えずに、ローズは空を…彼が目指した遥かな高みを、天涯を見上げた。 「お墓、作ってあげようか…いつか、」 彼の犯した罪は大きい、それによって失った命もある…。だが、彼の苦しみを――200年もの歳月を覚えている人がいないのは…可哀想だから―――。 ソルティは何も云わない。ただ、その顔に微笑みが浮かぶ…それで、彼女には充分だった。 了 仮面の男、アシュレイ(本名ロック…って ^^;)追悼として不意に思い立って書いてみました(という割には本人出てないですが… 笑)。 本編も実はちゃんと観てなくて…飛田さん目当ての斜め観で、公式サイトで知識を補いつつ、乙女的(充分に乙女的で突飛)な発想で強引に捏造…なので、設定など信じてはいけません。 でも、間違っててもいいんです。ただ、書きたかっただけだから!(鉄は熱いうちに打たないとね♪) あと、2つほどネタを思い付いてますが書くかどうかは謎…。 鈴蘭
2006/04/01
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