112. 吹雪刑事の格闘について

267話 Gメン対世界最強の香港カラテ  .

1.合気道の吹雪杏子

吹雪刑事を語るとき忘れてはならないのは、杏子が得意とする合気道がある。 "合気道" は、吹雪杏子の代名詞の1つでもある。

それまでのGメン75には、あまり強い女刑事は登場していないし、格闘シーンにもこれというものはない。
しかし吹雪杏子には、何度かの格闘シーンがあり、実力もSP出身という経歴により高い実戦能力が与えられて、新しいタイプの女刑事となった。

     注)右上は、香港で領事の娘を護るため、カラテ使いと対決する吹雪杏子。

2.吹雪刑事との比較で

最初に書いておこうと思うが、彼女は強い女刑事だが荒唐無稽なほど強くはない。
例えば、志穂美悦子さんや牧れいさんが強い役のときは、スーパーヒロインの
ように猛烈に強い。

吹雪刑事には、そのような猛烈な強さはない。
だから吹雪刑事が闘っても、相手が強い時は負ける。 現実的な強さだから、緊張感が盛り上がって面白い。

だから吹雪刑事が、今から格闘するだろうと予想したときの緊張感は、志穂美悦子さんが格闘するときの何倍にも高まる。
         ↓
理由はファンだからというより、杏子が勝てるか負けるか判らないからだと思う。
志穂美悦子さんは刑事ドラマではまず負けないので、緊張感が少なかった。
                                                  ↑261話 初夏の夜 女部屋に忍ぶコソ泥

3.近藤照男プロデューサーの影響

前記のことは近藤プロデューサーの方針であった。
倉田保昭さんに対してさえ、近藤照男氏は過激なアクションは控えるようにと禁止されているほどである。
(そのため倉田さん自身が、「香港カラテシリーズ以外は、背広を着て立っているだけだった」 と言われているほどである)

近藤照男プロデューサには 「アクションはアクセサリー。つまりGメン75は派手なアクションや銃撃戦を売り物にしない」 という基本方針があった。
つまり 「アクセサリーは必要で重要だが、中心ではない」 ということである。

吹雪刑事は格闘が強いから、何度かの格闘シーンでGメン75を盛り上げることに貢献した。 しかし近藤プロの基本方針により、吹雪刑事が合気道を、それほど多く駆使するようには作られていない。
  ↑ 256話 死体に呼ばれた女刑事

            「パリから来た車・・・(予告)」で、サリバンを投げる

4.吹雪刑事の強さの程度は?

杏子はリアイティがある強さ、つまり現実的にありうる強さという程度だと思う。
ファンとしては吹雪刑事には、より強くあってほしいと思うが、Gメン75ではリアリティを追求しているため、非現実的な強さが描かれることはない。

つまり吹雪杏子刑事の強さは、現実の女性の上限程度ではないかと思える。
杏子はSP出身で、SPには高い格闘能力と段位が要求されるが、杏子の段位については、明確な設定はなかったようである。
いずれにしろ、かなり強いのは間違いはない。(プロ格闘家は別であるが)

しかし良く見ると、作品によって強さのレベルが違う。
例えば、1話だけだが吹雪刑事が弱い作品もある。260話 「悪魔の結婚式」 がそれで、
強い設定の吹雪刑事が弱く描かれている。
    (草野刑事でも、強くない作品があるから仕方がないが)


5.吹雪刑事の対戦

対戦については、別のページで書く予定にしている。

吹雪刑事の対戦シーンの特徴1つは、対戦時間がある。
それまでの女刑事のものは、一瞬で決まることが多く腕をねじるか、負けるかどちらかであったが、吹雪刑事は本格的に格闘しているため一瞬では終わらない。

近藤プロの基本方針があり、それほど格闘の回数が多くはないがは、やはり他の女刑事と比べると格闘が多く、悪党と格闘し何人も投げ飛ばしているし、香港のカラテ使いと素手で真っ向勝負をした女刑事は、吹雪杏子だけである。
                       (注:勝つこともあれば、負けることもあった)

<女刑事のハンディ>
女刑事にとって、男との"体格、パワーの差”は、非常に大きなハンディである。
体重45Kgの吹雪杏子が闘う、相手の体重は普通1.5倍、時には2倍にもなる。
   (例えば、70Kgの男ならば、140Kgの巨漢と闘うことになる)
そのうえに 「体重」 が同じであっても、パワーは男性の方が格段に強い。

さらに、打撃に対する弱さがある。女性は男性よりも打撃を受けるとダメージが大きく、これも圧倒的に不利である。

これらのハンディがありながら、合気道の技を駆使して、悪党に勇敢に立ち向かったからこそ、吹雪刑事の格闘シーンは迫力があり、見応えがあったと思う。


6.中島はるみの苦労、頑張り

中島はるみはアクション女優ではないが、本当に良く頑張っていたと思う。

格闘シーン撮影のため、すり傷やアザが絶えなかったという。
他の女刑事の場合は、作品を見る限りそんなにすり傷をつくることは無かっただろう。
                                                     カラテ使いを相手に、殺気を放つ吹雪刑事
女優が初めての中島はるみにとって、格闘アクションシーンは当然初めて。
しかし指導した人によると「カンのいい子だ。」ということなので、格闘のセンスは良かったようである。
やはりスポーツが得意だったからか。


7.2番目に強い女刑事は?

Gメン75で最強の女刑事が、吹雪刑事であることに異論をもつ方はいないと思うが、2番目は誰だろう?

明確に強いのは吹雪刑事1人だが、やはり吹雪刑事と同じくSP出身の津村警部補が2番目だろうと思う。 SPという特殊任務の訓練を考えると妥当ではないだろうか?
但し、格闘で悪者を捕えたことが殆どなく、強さを実感できる場面は少ないため、吹雪刑事との実力差は大きいと思われる。

またカラテシリーズでは4話で主役を務めたが、 カラテ使いを倒した場面がなく、Gメン82ではカラテ使いとの闘いで幾度か失神した。 とはいえカラテ使いと闘ったところからも、他の5人の女刑事より強かったと実感している。
       (次に記載する、"和服" でのシーンは荒唐無稽なため例外である)
                                                   203話 また逢う日まで速水涼子刑事

<和服で格闘>
津村警部補が和服姿で、短刀をもって香港マフィアのアジトに殴りこみをかけて、助っ人とともに戦うシーンがある。 江波杏子さんの 「女賭博師シリーズ」 のファンへのサービスだろうが、刑事ドラマとしては荒唐無稽すぎる。
高久進氏も刑事マガジンで 「ちょっとやり過ぎた。」 と言われている。


他の5人はそれほどの差はないと思うし格闘シーンも少ないが、3番目を選ぶなら速水涼子刑事ではないかと思うが、いかがだろうか?

またセミレギュラーには、書き落とせないメンバーがいる。
小田切警視の秘書の岡村巡査で、101話のおとり捜査で犯人を投げ飛ばしている。彼女がレギュラーだったら、3番目になれたかも知れない。


8.吹雪刑事は合気道以外には


吹雪杏子の得意技は、何といっても代名詞の1つである合気道。

ところで、中島はるみは80年7月頃の雑誌のインタビューで、「撮影が忙しくて、今は空手を練習する時間もないし」と言われていた。 出来れば空手もやりたいと、思っていたのかも知れない。
やはり当初の設定どおり、合気道に専念することとなったが、例えば空手の”正拳突き”だけでもやってくれれば良かったと思う。

但し吹雪刑事は時々だが、合気道だけでなく「前蹴り」もやっていた。

左の画像は、261話 初夏の夜 女の部屋に忍ぶコソ泥 での格闘シーン

9.他の近藤プロ作品

他の近藤プロの作品の中では、野際陽子さんが演じたキイハンターの津川啓子が強かった。
彼女以外に強いヒロインは、思い当たらないと言っても良く、彼女が強いヒロインの原点だろう。

キイハンターの津川啓子も、吹雪杏子刑事と同じ合気道で、何度も悪党を投げ飛ばした。どの作品のどのシーンかは
良く覚えていないが、かなり強かった。
しかし近藤プロの方針通り荒唐無稽な強さはなく、男との真っ向勝負ではかなり歩が悪かった。
少なくとも、香港カラテ使いのような強者との格闘はなく、例えあっても吹雪刑事のように闘うことは出来なかったと思う。


 (注)その他、「アルフル大作戦の岸涼子」も強い役だが、アイフルはアクションコメディであり、
    荒唐無稽な部分が多く、Gメン75やキイハンターと同列に論じられないと思う。


10.他のドラマの強い女性

他のドラマの強い女性にも興味があるので、書いておきたい。

1)スーパーヒロインのように強かった女性の一番手は、志穂美悦子さんが有名。左の画像は「明日の刑事」のもの。
  この他にも幾つものドラマで、猛烈な強さを発揮して凶悪犯を倒した。 (下の画像の左の2枚)
  彼女の代表作であり、日本映画の中でも貴重な「女必殺拳シリーズ」の5作品は将来もずっと残るだろう。

2)次は、知名度は劣るが「牧れい」さんが良かった。 アクションは志穂美悦子さんにも、ひけはとらないほどだった。
  Gメン75へのゲスト出演もあり、バーディ大作戦では「加納弘子婦警」で出演。強くてカッコ良かったし眼も素敵だった。
  但しそれらの作品では、アクションはあまり披露されていない。これも近藤プロの方針か?

    中央の画像は、「ザ・スーパーガール」の第13話「女ドラゴン 紅の必殺拳」のシーン。
    この作品の格闘の時に、Gメンの香港カラテシリーズの劇伴が流れたので驚いた。

3)最近のアクション女優なら、何といっても水野美紀さん。右の画像は「恋人はスナイパー」の画像。
  彼女の最近のアクションものがないのが残念。



<余談ですが>
  「動体視力」 と 「反射神経」 と 「蚊」 の実験
  「1.5メートル四方の蚊帳」 の中に、何十匹かの蚊を入れて、その中で両手でパチンと叩いて蚊をとる実験の話。
  1分間で、普通の人なら3〜5匹ですが、 ボクシングの一流選手は20匹程度を取れるとの事。
  この数の違いが、動体視力と反射神経の差です。

  ボクシングの選手が、相手の顔面を適確に殴れるのも、この能力に優れているから。
    (吹雪刑事がSPに抜擢された理由も、「動体視力」 と 「反射神経」 に優れているから、とされている。)

  子供の頃、両手でパチンとやれば 「蚊」 をとれたのに最近はなかなか捕れない、と思うようになった時は、
  最近の 「蚊」 が素早くなったのではなく、老化現象との事です。
  つまり 「動体視力」 と 「反射神経」 の衰えが原因。

  いつまでも、蚊を簡単に捕り続けたいものです。


<吹雪刑事の活躍シーン>
 剃刀で脅す、3人の女子高校生を      合気道で 男を投げ飛ばす         容疑者の腕をねじ上げる


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