254話 警視庁の女スパイ
<監督:山口和彦、脚本:高久 進>
1.作品について
吹雪刑事の登場編を、冷酷無比で必要とあらば仲間さえも射殺する、テロリスト影山とGメンとの死闘を通じて描くこの作品は、この後編も秀逸な出来ばえであり、Gメン屈指の傑作として完結させている。
作品については前編の253話に記載しているが、少しつけ加えたい。
この2部作は、静寂なシーンを意識的に入れて効果を上げている事と、間の取りかたが特に上手い。
吹雪刑事は前編では衝撃的な登場シーン以外は、顔すらはっきり見せていないが、後編の方が活躍シーンは多い。
2.黒木警視正の要請と期待
Gメンは誰も知らなかったがSP隊員 吹雪杏子は、黒木警視正による護衛強化のための要員だった。
吹雪杏子は期待に応えて、テロリストと対決時の勇気・判断力・射撃能力・尾行・逮捕等で、期待通りの能力を発揮していると評価され、この事件解決後に黒木警視正の意向で、吹雪杏子はSPからGメンに転属する。
3.脚本との違い
253話ほどの大きな変更は無いが幾つかある。本編で省略されたシーンとしては、
1)影山が黒木・立花・南雲らを狙撃
2)逃走する影山を、不審に感じた警官2人を射殺
等がある。
逆に影山の人間らしさを覗かせる姿が描かれ、質の高いドラマに上げようとするスタッフの意気込みが感じられる。
4.捜査、疑問、その他
1)結城警視正の秘書
秘書の小泉令子婦警(三浦真弓さん)がテロリスト側のスパイだった。 これは重大なミスで当然処罰を受けるだろうと思うが、これまでもGメン数々のミスにもお咎めなしなのと同様、結城警視正には何の処罰もなさそうである。
2)黒木警視正のおとり捜査
元恋人の雅代(結城しのぶ)を使っての”おとり捜査”は、現実には当人らには知らせずに始めることはないはずである。
テレビドラマの展開としてならば面白い。その後で黒木ボスが「連絡したのは私です」と正直に言っているから許してしまうそうだが。
ところで、
結城しのぶさんが演ずる雅代を黒木ボスが訪問した時、こぼれるような笑顔を見せる場面がある。
わざわざ書くほど、結城しのぶさんの笑顔は珍しい。(と思う)
脚本での「数年前と違い、見違えるように明るくなった雅代だ」という描写に応えた笑顔であるが、いつも美しいが淋しい感じばかりの結城しのぶさんだが、笑顔を見ると笑顔もなかなかいい。
5.吹雪刑事の印象的なシーン
1)吹雪刑事のサングラスシーンはカッコイイ。(右下の画像)
2)テロリスト側の女スパイを、警視庁側の女刑事として尾行・観察
するシーンは、詳細に描かれ見ごたえがある。
(上から2場面の画像)
3)女スパイの廻すダイヤルを、カメラで読み取ろうとするシーンもいい。
4)秘書の女スパイ「小泉令子」を逮捕し、連行する吹雪杏子刑事。
(上から3番目の画像)
5)テロリストのアジト襲撃での援護射撃はカッコイイ。 (左の画像)
6)女スパイを中屋・田口・吹雪で、レポ役を見張るシーン
脚本:吹雪刑事だけがレポ役の男を見抜き、中屋らに報告する。
本編:女スパイが、レポ役へ視線を投げるのを吹雪刑事だけが気付く。
レポ役と吹雪刑事は、同時に互いの正体を見抜く。
まるで武術家同士のやり取りのような演出。
どちらも杏子がレポ役を見抜いたことが、事件解決のカギとなった。
中島はるみにとって最初の作品ゆえに、吹雪刑事のセリフは慣れていないが、当初から新人らしからぬ落ち着きがある。
6.入れて欲しかったシーン
テロリストが放った女スパイを、吹雪刑事が逮捕するのであるが、
その逮捕シーンを入れて欲しかった。
女はテロリストの一味であり、相手の杏子が女なので、懸命に抵抗したと思う。−−簡単に捕まるとは思えない。
吹雪刑事の格闘と、合気道を使うシーンが見られたはずなのに、少しお預けになった。
7.Gメンと2度目の対面
後編で正式にGメンと対面するが、短時間だが気に入っている。
これは、「102.吹雪刑事の登場と・・」のページの「4.Gメンとの出会い(2)」で書いているので省略する。
ファンとして
吹雪刑事は、前編より容姿が美しくなったようにさえ感じてしまう。
立っているだけでも、とにかくカッコイイ。
余談だが、
杏子は後の「降板編」で、黒木警視正に挨拶するときは違っている。
頭とともに目も伏せて挨拶して締めくくっている。
8.サブタイトル
最初、私はこのタイトルを誤解した。女スパイは吹雪杏子だと。
どちらにも解釈できるタイトルを、あえて付けたようにも思う。
・警視庁からの女スパイか?
・テロリスト側の警視庁への女スパイか?
前編で、テロリストの1人(庄司)が「警察には女スパイも放してある。」というセリフがあるので、テロリスト側のスパイであることは判るが。
しかしSP隊員の吹雪杏子も、警視庁側の女スパイと言えるかも知れない。
9.テロリスト影山の最期
列車からのびる線路の上に、じつに素晴らしい陽炎がたっている。
その中に姿を現わす、元恋人の雅代。−−− そして影山。
黒木警視正の登場、決めセリフ。
「影山。 ここがお前の墓場だ!」
最後をしめくくる、貫禄の黒木ボス。
そして、Gメンの嵐のような連射につぐ連射。
このラストシーン。 実に格好良く大好きな名場面である。
Gメンの集中砲火をあびた影山は、ついに絶命する。
静かにたたずむ”雅代”の姿。
影山が愛用したアーマライトM16を見つめ、、、そして”影山”を見つめる。
雅代には元恋人に感傷に浸る気持ちが残っていたのだろうか?
それとも子供の本当の父親が、死んでいったことだろうか?
凶悪犯から投げ出されたサングラスに、平和の象徴の”鳩”が近寄ってくる。
そして・・・サングラスの反射光の向こう側から、
吹雪刑事を加えた Gメンたちが歩いてくる!