256話 死体に呼ばれた女刑事
<監督:鷹森立一、脚本:山村英司>
1.作品について
中島はるみのぶっつけ本番のような女優デビューから4作目、セリフも少し
スムーズになって来ている。 (特に中盤以降)
そして、急激に良くなった演技力が、表情の豊かな変化。
全くの素人だった中島はるみが、僅か4作目で演技力が急上昇した事が、彼女が数多くの作品で、主役を演じることにつながったと思う。
吹雪刑事の初めての1人主役作品。
次々と明らかになる真実に、衝撃をうけながらも吹雪杏子は真相に迫っていく。
謎は次々と解明されていくが、緊迫感は最後まで途切れず見応えのある力作。
吹雪刑事が失敗を通じて、成長していく姿を描いた貴重な作品。
2.見どころ
1.新任の女刑事として
1)立花警部に叱責を受けて吹雪刑事は落ち込んでしまう。
杏子は総じてミスが少ない刑事だが、この作品では、
新任であることが強調され、幾つかのミスをおかして、立花警部から
叱責され落ち込むシーンがある。
(注:杏子はSP出身なので、刑事としての捜査経歴はない)
また不良女とのやり取りでも、新任で慣れていない姿が描かれている。
2)吹雪刑事は、立花警部の指導と恩師の言葉を思い出し、実践しながら
立ち直っていく。
<スタッフの贅沢な希望か?>
吹雪刑事は登場編は凄腕の捜査官。 ところがこの作品は新任刑事としての未熟さを描いている。
本来なら順序が逆である。スタッフはどうしても最初に”凄腕”を印象づけたかったのだろう。
しかし新任刑事としての成長ストーリーも魅力がある。という両方を描くという贅沢な事をしたのではないだろうか?
2.杏子の父親が登場
吹雪刑事の父親が思い出として登場する。
杏子の父親は刑事だったが殉職している。 (犯人は捕まっておらず不明)
この件は「136.吹雪杏子の父親」に記載しているので、参照して欲しい。
父が生きていた頃の楽しかった思い出のシーンには、杏子の大学生時代の姿も見られる。
3.相原刑事の活躍
吹雪刑事に捜査・格闘・射撃を教えた恩師で、杏子の父親とともに麻薬取引の捜査をしていた。
情熱的な教官として、その教え方が印象的だった。
この件も、「136.吹雪杏子の父親」に記載しているので、参照して欲しい。
この作品を見ると警察官に憧れたのは、父親だけでなく、相原刑事への憧れや思いもあったからではないかと思う。
さらに相原刑事からの勧めで、警察官になったことがこの作品で語られる。
(注)射撃・格闘技の訓練シーンも少しあるが、合気道の道場での
訓練シーンは、257話「大暴走!囚人護送車」を見て欲しい。
3.恩師 相原刑事の「教え」
目黒祐樹さんが演じた相原刑事の言葉は説得力があり、その話し方と眼光には教官としての情熱が溢れている。
吹雪杏子らに語った中で、次の「言葉」が印象に残っている。
1)捜査に迷ったら現場へ行け。
2)現場はホシを知っている。
3)現場へ行けば何かをつかめる。
特に2行目が好きな言葉になりました。
4.いつもより厳しい立花警部?
1)最初の射殺現場
現場に来た立花警部が「害者は?」、吹雪刑事「判りません」
立花警部「なに〜」
(HP管理人より一言 「でもねえ立花さん、すぐに判るわけないと思いますよ」)
しかし2回目の射殺現場では、吹雪刑事はすぐに調べた事を立花警部に
報告して、吹雪刑事は成長ぶりを見せる。
2)吹雪刑事が男女を追いかけたあと、立花警部「なぜ連絡しなかったんだ。」
実際の刑事は2人1組だから、連係プレイで連絡もできる。
ドラマでは1人ずつだから難しいと思う。(そんな連絡した刑事いたかな?)
この作品では、いつも以上に厳しく吹雪刑事を指導する立花警部が見られた。
吹雪刑事を厳しく指導しようと、意識していたのだろうと思う。
5.吹雪杏子刑事の活躍 (順不同)
1)事件現場で、懸命の捜査をする吹雪刑事。 (右上の画像)
相原刑事の言葉を思い出し基本捜査から実践していく。
この作品では、事件の遭遇、聞き込み、張り込み、尾行、追跡、射撃、
現場確認、証拠発見、等の捜査や関与が描かれる。
2)聞きこみ中に、ある女(吉岡ひとみさん)と対面し「不審」を嗅ぎ取る吹雪刑事。
杏子は直感力を働かせ、捜査を継続する。
3)衝撃に耐え、犯罪に立ち向かう決意を固めた吹雪杏子刑事!
右の画像!
吹雪刑事というより中島はるみが、グッと決意を固めた瞬間の顔である。
4)静寂が破られ、大好きなコーヒーもゆっくり飲めない女刑事。
コーヒー好きの吹雪刑事は、行きつけの喫茶店で"ある男"に目をつける。
(この男は、麻薬密輸容疑で逮捕され、保釈中の江本(きくち栄一さん))
女刑事としての嗅覚を利かせ、チラッとしか見ていないが顔をしっかりと覚える吹雪杏子。
(注:この直前シーンは、「142.吹雪刑事の酒・食事」に掲載)
5)吹雪刑事の片手撃ち
他の刑事ドラマもGメンも、拳銃を両手で撃つ刑事が多いが、
立花警部・関屋警部補らの、拳銃の名手は”片手撃ち”が多い。
(本によると、拳銃は片手撃ちができないと、実戦では
役に立たないことが多いと書かれている)
拳銃の名手、吹雪杏子刑事も片手撃ちをしている。
登場編で、杏子がテロリスト影山を階段から射撃したときも、やはり片手撃ちで銃弾を叩き込んでいる。
特筆すべきは、立花警部より速い射撃
男が発砲。 吹雪と立花の2人は、同時に射撃を開始する。
しかし吹雪刑事は構えた瞬間に発砲し、立花警部より速く男を射殺する。
立花警部が、吹雪刑事が撃つまで待機しているシーンではない。
一瞬遅れたら、立花警部が射殺されるかも知れない、間一髪のシーン。
杏子がSPで特訓を受けた"速射”が、名手 立花警部さえ上回ったと言える。
ちょっと余談だが、
この射撃の前に、デコボコの多い荒地を疾走する吹雪刑事。
よく転ばなかったものだと思うほどの全力疾走である。
6)Gメン75 第1話の再現か?
吹雪刑事がラストで倒れた相原刑事をよけて男に向かって疾走する。
この場面は、「第1話エアポート捜査線」のラストで、関屋警部補が倒れた
恋人のそばを駆け抜けるシーンの再現ではないかと思う。
原田大二郎さんがファミ劇の放送開始記念のインタビューで、このシーンを例に出して「あれぞハードボイルド」と説明していたシーンである。
ところで、右の画像を見て欲しい。撃たれた相原刑事の上から射撃しようとする吹雪刑事。
これはTVガイドにのみ掲載され、予告・本編にはないものである。
ということは2種類撮影した上で、ハードボイルドを強調するため、第1話と同じ
描写を採用したのだろう。
7)色々な種類の眼光
中島はるみの演技力、特に表情の豊かさは本作で劇的に向上しているが吹雪杏子刑事の、力強い眼光の魅力も、この作品で発揮された。
この作品では幾つかの、特徴的な眼の演技、表情が見られる。
例えば、
a.衝撃を受けて呆然したとき (一番上の画像)
b.叱責されているとき (上から2番目の画像)
c.決意を固めたとき (下から3番目の画像)
d.墓参りのとき (右の画像)
右の画像のような、力強くないときの眼光も魅力的。
(吹雪家の墓前にて)