257話 大暴走!囚人護送車

(注:ストーリーが判らないように解説していますが、ネタバレの内容は含んでいます)

<予告編のナレーション>

ハードボイルド Gメン75 次の活躍は。

新任女性Gメンが挙げたスケバンが吐いた、シャブの取引所はなんと、
Gメンが、なじみの姉妹が経営するスナック。

張り込みをする、女性Gメンがチンピラ売人を逮捕したが、
警察に対する憎悪に燃える、元暴走族のリーダーがスナックの妹を誘拐した。
ブレーキの効かない、オンボロ車は人質を乗せたまま大暴走。
救出に向かうGメンと暴走族たちのカーアクション!

次は、「大暴走!囚人護送車」

  <監督:鷹森立一、脚本:高久 進>


1.作品について

吹雪刑事はGメンの新任だが、いわゆる新人刑事ではない。
   (不思議なのは、登場編は凄腕の捜査官なのに、前作256話のみ新人刑事なこと)

「アクション」 と 「ユーモア」 と 「緊張感」 が程よくバランスの取れた、面白くて見ごたえのある作品。
252話から数えると5話連続で厳しいストーリーが続いたので、今回はユーモアを加え、さらにカーアクションで楽しんで貰おうというスタッフの配慮だろう。

シャブの取引所が 「柿の木」 で、田口刑事と仲のいい美人姉妹が登場する。
亜子ちゃんの"ユーモア”と"やきもち”は絶妙!  この役はまさに「はまり役」。

吹雪刑事もこれまでの、ハードボイルド面が強調された女刑事とは違い、前半は
コミカルな一面が楽しめるし、今までにない初々しさが感じられる。
また杏子の、冒頭の道場での鍛錬シーンは凛々しくカッコイイ。

  注) 東映ビデオは 「Gメン75の人気投票」 を、2008年6〜8月の3ヶ月間かけて行なったが、
       この作品は " 第40位 " に選ばれた。
       数多い作品中での "40位" は相当な上位であり、この作品の人気の高さを現している。



2.喫茶店「柿の木」

「205話 新Gメン対ニセ白バイ警官」で初登場し、水上牧子(鳥居恵子)と亜子(遠藤真理子)の2人が経営。
田口刑事が亜子ちゃんと仲が良く、姉妹と3人で離島に泳ぎに行ったこともある。
   (サブレギュラーとして79年度 6回、80年度 2回 計8回出演)

この作品の亜子ちゃんは特に面白く、これぞ遠藤真理子さんの独壇場であり、
従来のGメンにない味である。
杏子が店を疑う情報を持って来た事が腹立たしいだけでなく、田口刑事のそばに若い女刑事が現れたことで亜子ちゃんは気になる。


3.暴走族と売人

1)暴走族のリーダー
  古尾谷雅人さんの上背は高く、見るからに圧倒されてしまいそうである。
  雰囲気は危険な香りがする男、と呼ぶべきだろうか?
  その大きな体がスピーディに動く姿は精悍で、兄貴分らしい貫禄もある。
  印象的なセリフは、「お前らサツは、、、ハートがねえんだよ」

  暴走族で、シャブの密売も少量だから大物ではないが、将来は凶悪犯に
  なりうる可能性とリーダーシップを持つ危険人物である。

2)麻薬の元締め
   梅津栄さんが演ずる怪しげな男。
   ゲストで何度も出てくるが。いつ見ても退屈しない凄い個性がある。
   (良い役は無理と思っていたが、「非情のライセンス」で刑事役をやっている)

<暴走族ジェノサイド>
   この暴走族は、この作品だけではなく 「266話 殺人暴走オートバイ集団!
   三途の川」 にも登場し、次回の方がもっとハードに暴れまわる。
   但し今回のリーダーは、次の作品には登場しない。


4.Gメンたちの活躍 (順 不 同)

1)Gメン対暴走族

中屋・島谷・田口の3人が暴走族グループとのカーアクションと大乱闘。
刑事としてはいささか乱暴であるが、このおかげでリーダー孤立化に成功した。
立花警部の作戦の勝利である。

2)田口刑事の射撃シーン

暴走する護送車を撃つ田口刑事。
まるで往年の西部劇の主人公のように、"少しゆっくり”と拳銃を構えて発砲
する姿が新鮮で良かった。
しかも車から半身を出しながらであり、演技も撮影も難しかったと思う。


3)田口刑事対暴走族リーダー

ラストで暴走族のリーダーを倒して殴りつける田口刑事には、亜子ちゃんの件も込められているのだろうか。
個人的な希望としては、"凶暴なリーダーを3人がかりでやっと捕える"、の方が
良かったと思う。


4)「柿の木」の前で

島谷刑事が田口刑事をからかうシーンは面白く、中屋警部補は言葉につまり、吹雪刑事も楽しそう。
(80年度なってから、島谷刑事のセリフが増えてきているのが好ましい)

喫茶店「柿ノ木」を見ての、田口刑事のドギマギシーンは見もの。
いつもの刑事のイメージではなく "しょぼん"としたところも新鮮で魅力がある。

ラストの田口刑事と水上亜子ちゃん。このシーンを見ると、この2人は結婚までいってしまえば良かったのにと思う。−−やはりGメンではやらないのか?


5.吹雪刑事の活躍 (順 不 同)

1)警察道場での訓練
   合気道で、男を次々に投げ飛ばす吹雪杏子。
   道場での鍛錬中の杏子は凛々しく美しい。
                        (上から2番目の画像)

2)積極性と信念をもった捜査

容疑の店を指差す吹雪刑事。−−彼女の所作は力強く感じる。

吹雪刑事の持ち味は、積極的で信念をもった捜査で、それはこの作品にも現れている。
覚醒剤の密売ルートを嗅ぎつけた吹雪刑事は、Gメンの先輩田口刑事に
信念をもって説得を行ない、中屋警部補に対しても、「私、張り込みます」
捜査の意志表示をしている。

推測であるが、積極性としては、
 「立花警部の命令なんです。」と、店の中に入ってしまうが、事実は逆で
  杏子が、立花警部に進言して承認を得たものだと思う。
 「明日もまた張り込みです」の会話は夜10時。その後に立花警部から
 「明日の朝一番から店に潜入せよ」という指示はしないだろう。(と思う)


3)吹雪刑事の格闘シーン

シャブの売人に迫る吹雪刑事。とっさの判断で現行犯逮捕に結びつける
吹雪刑事の捜査能力はかなり高い。

殆どの刑事ドラマでは、手錠を掛けられたらすぐに大人しくなるが、この男は死に物狂いの抵抗をする。 (右の画像)
椅子で殴りつけて来た時は、吹雪刑事も危なかった。

さらに殴りかかって来た男の腕を、杏子はつかんでねじ上げる。
それでも必死の抵抗をするが、彼女はついに合気道で捕える。

   (この格闘シーンは、KAJITA巡査さんのHP 257話の製作エピソードに
    書かれているので参照して欲しい)


容疑者を初めて見たときの、吹雪杏子の眼は力強くて素晴らしい。(右上)
不安げな水上牧子を前に、不敵な眼光をすえる杏子。
256話で書いたが、中島はるみは眼の演技が幾種類もあって魅力的。

他のシーンでは、女子高校生3人がカミソリを武器に、吹雪刑事に襲い掛かるシーンもある。


4)喫茶店の前を掃除
   さすが! スタイル抜群の吹雪杏子。
   彼女は、じっと立っているだけでも、カッコよくて美しい。
                       (右の画像)

5)亜子ちゃんを救出
   田口刑事らが、暴走族リーダーを殴り倒しているとき、吹雪刑事は
   亜子ちゃんの救出のため駆けだしている。 (上記 4.3)右横の画像)


6)暴走族からの電話を待つ
           ギラリと光る 吹雪刑事の眼光!
                               (右の画像)

7)シャワーシーン
   Gメンの女刑事では2人目となる、吹雪杏子のシャワーシーンがある。
   殆どは顔のシーンばかりだから、さわやかな清潔感のみだが。

8)「柿の木」の前で(2)

柿の木の前での、吹雪刑事の田口刑事とのやり取りは新任刑事らしい感じが出ていて良かった。
このシーンのセリフには、固さが残っているが、新任らしい初々しさを出す演技の部分が相当に多く含まれている。
その一方で吹雪刑事が捜査に自信を持ち、その信念を貫こうとする女刑事を頼もしく演じている。


9)中島はるみの演技

これまでGメンに新加入したメンバーは、全員が来たばかりにも拘わらず、
2作目からは、何年も一緒に仕事をしているかのような接し方・話し方をしている。

しかし今回の吹雪刑事には、新任刑事らしい"初々しさ”が感じられる。
中屋警部補のセリフや、田口刑事のセリフにも、「彼女は新しく来た」という言葉が発せられており、吹雪刑事には"新任"らしさが要求されている。

中島はるみは、女優になってまだ5作目にも拘わらず、このことを意識して良く頑張っていると思う。

思えば、吹雪刑事の登場からの数編は、実に複雑な設定だったと思う。
      登場から3作目 : 凄腕 (3作目はそうとも言えないが)
      4作目       : 新人
      5作目       : 新任だが新人ではない

 しかし新任らしさも、今回の257話が最後となる。

<本放送以来>

この257話を、記憶されている人は少ないと思う。
再放送に恵まれた愛知県でも、この「作品だけ」が放送されなかった。
関西では全く放送されておらず、関東では1985年に一度だけ放送されたのが最後との事である。
    (注:岐阜県では2001年頃に再放送されている)

だからファミ劇で放送されるのか心配だったが、無事に放送して頂いて感謝している。
                                                シャブの売人に 力強い眼光を放つ


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