258話 大空港の逃亡者
<予告編のナレーション>
ハードボイルドGメン75 次の活躍は。
大学教授の息子が誘拐され、犯人は身代金30百万円を要求。
だがスペイン語を使った犯人の知能的作戦に、張り込んだGメンも翻弄される。
捜査は困難を極めるが、ようやく犯人の足取りをつかみ、国外脱出寸前の犯人と対決。 重症を負いながらも、執念の捜査を続けるGメンの気迫に、犯人は追い詰められていく。
次は、「大空港の逃亡者」
<監督:山内 柏、脚本:池田雄一>
1.作品について
田口刑事の主演作の中でも、強く記憶に残しているファンが多い作品。
今回は、誘拐犯人と闘うGメン。
大学教授 宮本(川辺久造さん)への犯人からの電話の第一声は、「友達だ。」
この言葉を皮切りに、犯人は長男 勇(永井秀男さん)の身代金を要求しGメン相手に虚々実々の駆け引きを挑んでくる。緊迫感は充分。
田口刑事が見せる執念の捜査は見ものである。
吹雪刑事の出番はあまり多くないが、杏子のスチュワーデスへの変装シーンは
清楚で美しく、Gメンの数ある吹雪刑事のシーンでも見ものである。
2.誘拐犯
1.知能的な作戦
今回の犯人は頭が良い。学校の成績は何浪もしているから大した事はないが、実戦に強いタイプかも知れない。
知能的な作戦を挑んで来るだけあり、2度仕掛けてくるが2度とも見事だった。
Gメンが対決した犯人の中でも、この切れ味は"上位”に分類されるだろう。
推理小説には「トリックの宝庫」と言われて、シャーロック・ホームズと双璧と言われる傑作集に、G.K.チェスタトンが創造したブラウン神父譚があるが、この作品集に登場してもおかしくないようなトリックだった。
さすが池田雄一さんの脚本というべきだろうか。
この犯人は自分は頭がいいと思っており、喫茶店の店員に自分は大学生で
凄い秀才だと、言いふらしているのを見ても判る。
2.「友達だ!」
誘拐犯の、短いこのセリフは印象に残った。
凄みがある声ではなく、迫力がある訳でもないが不気味な感じが伝わってくる。
3)感心したのは、犯人の似顔絵が良く似ていた事。
これほど上手いのは珍しいのではと思う。
3.田口刑事の活躍
1)失敗からの捜査
田口刑事の主演作である。
「255話 女が掘った落とし穴」では、田口主演とは言うもののいわゆる活躍シーンは少なかったが、今回の捜査は見ものである。
最初の失敗で落ち込む田口刑事だったが、黒木警視正・立花警部の指導により立ち直る。
ここから田口刑事の執念の捜査が始まる。
田口刑事の捜査は順不同だが、犯人追跡、逮捕、聞き込み、犯人宅への踏み込み、追跡、逮捕、容疑者の発見、張り込み、追跡、証拠品の捜索、と続いた。
2)ドブ川
このシーンが記憶に残っているファンは多い。印象的な場面で病院にも行かずに、懸命に探す田口刑事の姿が脳裏に浮かんでくる。
傷を負ってのドブ川は危険だが、”危険を恐れず”というのが良いのだろう。
通常あのような捜索は、人海戦術でやらなければ見つかりにくく、1人で捜すのは本当は良くない。
(もし見つからず、子供が殺されたら、田口刑事はどうなっていただろうか?)
ドラマで田口刑事の執念を現わすものとして描かれ、そして記憶に残るシーンとなった。
千葉裕さんがドブ川に浸かって捜すのは、演技のためとはいえ頑張ったと思う。
余談だが、
ゲストの有吉ひとみさんもいいのだが、少ししか出番がなかったから、アレなら
他の人でも良かったと思う。少しでもゲストを豪華にしようという配慮かも知れない。
4.吹雪刑事の活躍
田口刑事の主演作であり、吹雪杏子の活躍シーンは少ない。
しかし主役ではない作品で、見せ場があるだけでもファンとしては嬉しい。
1)スチュワーデスに変装
身代金をもった教授の後をスチュワーデスに変装した姿で追い、教授の乗った車のナンバー等を無線連絡する。
教授の行動に少し疑問があり、吹雪刑事はそれを中屋警部補に話す。
この件については、立花警部は教授に質問しなかったが、吹雪刑事の指摘は正しいと思う。
このシーンの吹雪刑事は、清楚で美しく見ものである。
(時間が短いのだが、仕方がない)
2)犯人からの電話を聴く
このシーンは何度かあるが、特に活躍という場面はない。
その他いわゆる見せ場は少ないが、画面には多くの場面で姿を見せている。
3)中島はるみの夢
この作品でスチュワーデスに変装した中島はるみ本人は、モデルになる前は、
英語が大好きなので、スチュワーデスになりたかったと言っていた。
この作品で、そのコスチュームが着れたのだから嬉しかったに違いない。
なお響刑事にも、Gメン第1話でスチュワーデス姿があった。
「162.吹雪刑事ほかGメンの変装」 に、その画像を掲載している。