263話 痴漢のアリバイ

(注:ストーリーが判らないように解説していますが、ネタバレの内容は含んでいます)

<予告編のナレーション>

ハードボイルドGメン75 次の活躍は。

相次いで起こる婦女暴行殺人事件。
女性Gメンの妹が襲われ傷ついたが、そのとき見た犯人の右手首のアザ。
それは女性Gメンが聞き込み中、寿司屋の店員の手首にもあった。

だがその男には、主人の娘と一夜を明かしたアリバイがある。
アリバイの壁に挑戦する女性Gメンが、主人の娘の偽証を確信したその時、
あざ笑うかのように、次の暴行殺人事件が発生する。

次は、「痴漢のアリバイ」

   <監督:鷹森立一、 脚本:西島 大>

1.作品について

        夢の 『キイハンター超え』 の記念作品。

KAJITA巡査さんによると、「吹雪編の開始当時、スタッフには『キイハンター』の全262話を超えてみせるぞ! という気迫に満ちていました」 との事である。

そして今回は「第263話」 つまりキイハンターを超えた記念的な作品となり、
見ごたえ充分な作品となっている。

<捜査>
殺人事件をGメンが捜査する事になり、吹雪刑事もその1人として捜査に当たる。
吹雪杏子は容疑者を訪ねる。そしてまた捜す。 と、聞き込みを続ける。
婦女暴行殺人は、吹雪刑事にとって許せない事件、
杏子は、執念に燃える捜査を開始する。

寿司屋の前に立ち止まり、じっと寿司屋を見つめる吹雪刑事。
そして、、、、、吹雪刑事は怪しげな青年を見つめる。

中島はるみは11作目、この頃になると彼女の演技はかなり上手くなっている。
よくぞ、この短期間で上達したものだと思う。 3ヶ月目の新人女優だと知らなければ、ある程度の経験を積んだ女優と見られると思う。


2.偶然について

刑事ドラマは"偶然で解決する”ことが良くある。そして"逆”もある。
しかし、今回の作品では確率的に有り得ないだろうと思われる偶然がある。
Gメン75の中でも、皆無ではないが非常に珍しいほどの 「偶然」 によって
捜査が影響されることとなる。


3.怪しげな青年、小林進

小林進(酒井昭さん)は、警察嫌いで生意気な言動をする男。
吹雪刑事は、「前科者、変質者、オートバイに乗れる、手配中のバイクと同じ型に乗っている」という全ての条件に、当てはまる青年を寿司屋で対面する。

その男は、店にいた吹雪刑事が女刑事である事を、一瞬で察してしまう。
この独特の嗅覚は、通常の人間ではない証拠ともいえる。

しかも行動は、暴走族まがいで、挑発するような言動、警察嫌い、無鉄砲な行動等々、怪しげであるが、犯人らしくもあり、違うかも? と感じさせる微妙な男である。

4.寿司屋の家族

夫婦ともに個性が良く生かされており、人情味豊かで楽しく、その一方で子供たちへの苦労も良く出ていて、
見ている方も、実感がわいてくると思う。



<余談ですが>
   舞台の寿司屋「寿司栄」は、167話「交通違反者の復讐」にも登場しており、店名も同じ。
   場所は吹雪刑事のメモでは、豊島区北大塚となっている。
   そして店の主人を演ったのが、同じく小鹿番さんで、この作品で寿司屋の息子をしている池田広法さんは、
   167話では住み込みの店員を演じている。  但し、ストーリーは全然違う。

5.Gメンたちの活躍

吹雪刑事の主役作品だから、他のメンバーの出番は少ない。

1)立花警部の指導

吹雪刑事の報告を聞きながら、捜査の厳しさや色々な考え方、見方を適確に指導をしている。杏子が反論するシーンもあるが、それに対しても説明して指導するのは流石である。

2)田口刑事の活躍

<吹雪刑事と張り込み>
寿司屋に午前1時に聞き込みに行く吹雪刑事と田口刑事。
続いて張り込みを行なうが、田口刑事と一緒に朝までやっている。
吹雪刑事の張り込みは、1人が多いのだが、やはり徹夜の張り込みを "女刑事
1人だけ"、という訳にはいかないのだろう。

ところで、午前1時から朝まで2人は寝ずに見張っていたが、交代で眠らないのだろうか?

<緊急逮捕>
逃げた男を、吹雪刑事とともに追跡逮捕する。
吹雪刑事がねじ上げた男の腕を見て、証拠をきちんと確認している。
                  (右の画像は、男の腕の"アザ”を確認する田口刑事)


6.吹雪刑事の活躍

吹雪刑事編の11作目。このうち杏子の主役作品は6作目とかなり多い。
以後は、主役率は少し下がる。
  (注 : 降板までの主役率は41%と非常に高く、全メンバー中最高となった)

<冒頭シーン>

吹雪杏子の歩くシーンで始まる。
「悪魔の結婚式」 も杏子が歩くシーンから始まり 「遥かなる旅路」 が流れていた。
   −−もちろん、以後の展開は全然違う。 そして今回も映像が美しい。


1) 吹雪刑事の捜査

吹雪刑事は、何十人もの容疑者を訪れて捜査を続けている。
これと目を付けた容疑者を徹底的にマークして食い下がり、アリバイの壁に挑戦する杏子の姿が描かれている。
そして、吹雪杏子は容疑者の嘘を少しずつあばいて行く。

寿司屋の前で立ち止まり、寿司屋を見つめる吹雪刑事はカッコイイ。
寿司屋の店員を、横からぐっと睨みつける吹雪杏子。

この作品は、吹雪刑事の執念の捜査が見どころである。


Gメン部屋での打ち合わせで、吹雪刑事が自分の考えを堂々と述べる姿は好ましく、その上で上司の指導に納得している。


2) 吹雪刑事の妹、陽子婦警

「134.吹雪陽子婦警」のページでも書いているが、妹の陽子は毎回ではないが何度かピンチに遭遇する。
ドラマの設定上、吹雪刑事の代わりにピンチになっている訳でもないと思うが。
この時点までなら、吹雪杏子のピンチは1度、妹は2度で妹の方が多い。
しかし、以後は変化する。


3) 吹雪刑事の格闘

田口刑事とともに容疑者を追跡する。吹雪刑事の走るスピードは男2人に負けていない。
格闘して逮捕するが、あまり目立つ撮影ではないのが残念。
吹雪刑事は男の腕をねじ上げるやいなや、次の瞬間には素早く手錠を掛けている。




右の画像の次に、
証拠の"アザ”が田口刑事に見えやすいように、男の腕を上に持ち上げている。  (上の4.−2)の画像)



4) 吹雪刑事の尋問

取調べにおける、吹雪刑事の尋問の声色は迫力がある。
中島はるみは相当に練習したのだろう。「発声の練習」もしたと言われていたが、尋問の時の声色とあの抑揚は、練習しないと女性では出ないのではないかと思う。

田口刑事も男に迫るが、この男は簡単には落ちそうもなく、動揺も見せず、
何もしゃべらず、しぶとい男である。


5) 吹雪刑事の張り込み

ラストに近い張り込みは、いつも通り吹雪刑事が一人で行なっている。
隠れ家の目星をつけた吹雪刑事が、昼から深夜までずっと張り込みを続けるという、印象深いシーンである。    ( 右の画像 → )

周辺に家はなく、通行人も全然いない。 つまり、自分がやられても、助けを求めることは出来ない。
この状況でも、杏子は一人で臆することなく、日が落ちて暗くなっても、平然と張り込みを続ける。 これも合気道に熟達した彼女ならではのシーンである。

男女2人を待ち伏せするわけだから、普通の女刑事なら一人ではやらない。
しかし、吹雪刑事の場合は格闘能力が高いので、一人で張り込みすることが
多く、視聴者もあまり違和感を感じないと思う。


6) 吹雪刑事の眼光

11作目の本作品では、中島はるみの演技はかなり上手くなっている。
特に、吹雪刑事は力強い眼光が魅力であり、登場編のクールな眼光に始まり、256話以降は "色々な種類の眼光" を見せているが、今回は容疑者を睨みつけるような新たな眼光を、時々であるが放っている。

通常、鋭い眼光とは "三白眼”が多いが、
中島はるみは三白眼ではない。にも拘らず吹雪刑事の眼光は鋭く力強い。
これは珍しいし、三白眼でなかったからこそ、さまざまに変化する "眼光" の
演技が出来たのだと思う。


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