265話 死化粧の女

(注:ストーリーが判らないように解説していますが、ネタバレの内容は含んでいます)

<予告編のナレーション>

ハードボイルドGメン75 次の活躍は

暴走族の喧嘩を止めに入ったGメンが、改造拳銃を発射されて、
防衛のため応戦。 相手は重症。

過剰防衛を問われるが、目撃者の女は偽証。
正当防衛を立証するものはなく、Gメンは窮地に落ちた。

女の過去に起きた事件が尾を引いて、人間の深い恨みと憎しみの悲劇。

次は、「死化粧の女」

   <監督:小松範任、 脚本:西島 大>


1.作品について

80年度で初めてのリメイク作品。 但し途中のストーリーには違う点も多い。
オリジナルは37話「豚箱の中の刑事」。

このページをアップするに当たって同作品も視聴したが、どちらの作品も素晴らしい。個人的には265話の方が良いと思うが、人により意見は違うだろう。

脚本は、今回も37話と同じ西島大さん。

この作品が緊迫感溢れる作品になったのは、やはり目撃者の堀井八重子を演じた、岩本多代さんの演技力による所が大きいと思う。

そして監督の小松範任さんは、黒谷町シリーズを全て作った監督で、この作品は黒谷町とは何の関係もないが、目撃者の八重子に異様な凄みを感じるのも、小松範任さんの演出の影響があるのかもしれない。


2.目撃者の女「堀井八重子」

小料理屋を営む女を演じた岩本多代さんの演技は、素晴らしいと思う。
どのシーンも上手いが、例えば帰宅して酒に酔っぱらって立花警部と話すシーンや、あからさまではなく、「加害者の大河内」に対する心に秘めた怨念が燃えていることを、感じさせる演技が凄かった。

1)印象に残ったセリフ
  「こうして毎日、"死に化粧”」−−この凄みのあるセリフ
  タイトルの「死化粧の女」はここからだと思うが、優れたネーミングだと思う。

2)なぜ偽証するのか?
  これが、この作品最大の疑問である。

  そのために、Gメンたちは戸惑い、結城警視正は騙され続ける。

3)八重子の独り言と撮影

八重子が「毎日、死化粧をしている」などを話し、立花警部は向こう側から女を睨みつける。このシーンは作品の重苦しさを際立たせている。

この撮影、「女」は手前で「立花警部」は向こう側、つまりカメラからの2人の距離は数倍も違う。にも拘らず双方の映像はかなり鮮明である。
という事は「パンフォーカス」技法による撮影かとも思うが、良くは判らない。

いずれにしろ、遠くから立花警部が女を睨んでいる映像がかなり明瞭なので、
このシーンがより印象的になっている。


3.立花警部の活躍

立花警部は窮地に陥るが、主役として多くの活躍場面がある。
37話ではGメン全員の活躍であるが、この作品は立花警部の1人主役になっている。
暴走族の争いを鎮めようとした立花警部は事件に巻き込まれる。その正当防衛は間違いはないが、非常なピンチに追い込まれてしまう。

立花警部の捜査や、心理状態も鮮やかに描かれている。特に上記2.3)で記載した八重子の自宅で対面するシーンは秀逸。

この作品は37話のリメイクだけでなく、被害者の事故設定は立花警部の登場編「105話 香港−マカオ 警察ギャング」も髣髴とさせられる。
     <105話 香港−マカオ>      <37話 豚箱の中の刑事>
    1)家族を失ったのは自動車事故   1)殺されたのはナイフ
    2)家族(夫と子供)を同時に失う   2)亡くなったのは夫だけ
    3)子供の「ガラガラ」          3)夫だけなので、ガラガラ無し

という内容は105話に近い。

この女の気持ちを読みきれなかった為に、Gメンたちは事件解決に苦しむことになる。
この事件の原因は、女の犯人に対する恨みの強さによるものであるが、立花警部は女の怨念の凄まじさを、まざまざと感じさせられたことだろう。

ラストシーンは本物の大雨の中で撮影されており、かなり珍しい。
そのためか実に臨場感のあるシーンとなった。


4.吹雪刑事の活躍

吹雪編の13話目。
立花警部の主役作品であるため、吹雪刑事の活躍シーンは少ない。

1)吹雪刑事が感じた疑問

   吹雪杏子だけが、通常の理屈では割り切れない、何かが女の気持ちに
   あると理解しようと努めている。

   また、吹雪刑事と田口刑事が別の見解で議論する場面がある。


     (ちなみに37話では、響刑事と草野刑事が、"全く同じ議論”をしている)

2)証拠の捜索

吹雪刑事は、立花警部の正当防衛を証明するため、他のGメンたちと最後まで諦めずに必死に捜査を続ける。

そして、現場確認の際に立花警部の射撃場所で、事件を再現するため
吹雪杏子は拳銃を構える姿勢をとり、田口刑事も拳銃を構え合う格好になっている。  (右の画像と、下の右側)





作品リストへ戻る      トップへ戻る