272話 東京−神戸 電話殺人

(注:ストーリーが判らないように解説していますが、ネタバレの内容は含んでいます)

<次の項目を追加しました (2011年 8月27日)
   1) 「5.吹雪刑事の活躍」 の 2) 3) 5) 6) を、追加または修正を行ないました。
   2) この作品は、 「TVガイド」 の表紙を飾っています。 「6.TVガイドの表紙を飾る」 に画像を掲載しました。


<予告編のナレーション>

ハードボイルドGメン75 次の活躍は、

女性Gメンが、見知らぬ女に襲われ危機一髪!
そのとき神戸から掛かった電話。
その電話の主、覚醒剤ルートを追う警部が通話中 射殺された。

警部に恨みをいだく男女が容疑者としてあげられたが、
男は事件当時、神戸にいたにも拘わらず、一分の隙もないアリバイ成立。
女性Gメンの前に立ちはだかる電話の謎。

次は、「東京−神戸 電話殺人」

     <監督:鷹森立一、 脚本:池田雄一>


1.作品について

吹雪刑事の主役作品である。

吹雪編の20話目、凶悪犯罪と日夜闘い続ける杏子だが、、、
冒頭から吹雪杏子が縛られている姿には、誰もが驚くだろう。

水原ゆう紀さんと沢田勝美さんが、吹雪刑事に挑戦する。
この作品には、妹の吹雪陽子も出演する。

トリックもさることながら見どころは、立花・中屋らの強い疑問にも拘わらず、
吹雪刑事の真犯人に対する、鋭い直感と強烈な信念で捜査を貫いていく姿が印象的である。
特に誰もいないGメン部屋で、吹雪刑事が考え続ける姿は印象に残る。
そして杏子は衝撃の真実を知ることになる。

後半は、池田雄一さんの脚本と違うストーリーに変化した為もあり、犯罪の実行性が難しい点も生じているが、時間の限られたテレビドラマの製作だけに仕方なかったと思われる。鷹森立一監督らスタッフの頑張りにより、見応え充分な作品に仕上げられている。

(なお警視庁は1980年に新庁舎になり、この作品も新庁舎が映っている)


2.復讐に燃える2人

マッチを擦って姿をあらわす、岩崎時枝(水原ゆう紀さん)。

悪女だが、美人の水原ゆう紀さんが暗闇の中からパッと登場する
シーンは秀逸。
彼女は警察に深い恨みのこもった行動で、Gメンを翻弄する。

中川修を演ずる沢田勝美さんは、Gメンでは悪役の常連で小悪党が似合う。
今回の役でも好演されている。
但し、「関西なまり」は相当に苦しかったが。

悪のイメージが強い2人だが、友人のアリバイ証明のために農夫の話を
聞いているときは、まるで別人のようである。

3.木島警部

吹雪刑事が射撃訓練をうけた教官が、木島警部(三木稔彦さん)。
覚醒剤ルートの解明に尽力している。吹雪刑事の恩師。

吹雪刑事は手錠をかけられている状態で、その木島警部からの電話を
受ける。  その直後に、電話の向こう側で事件が発生する。


4.Gメンの活躍

   中屋警部補は神戸に出張し、現場を所轄警察署と捜査を行い、
   さらに、吹雪刑事とともに中川修のアリバイを確認する。

   田口刑事は、少年鑑別所時代の仲間を割り出し、時枝の張り込みを
   続ける吹雪刑事に連絡する。


5.吹雪刑事の活躍

事件解決への執念を見せて、「尋問」「張り込み」「追跡」「射撃」等を行なう。
吹雪刑事の直感が冴え、、、そして推理も冴える。

1)冒頭のピンチ

吹雪杏子は麻酔薬を嗅がされて意識を失っており、手錠で後ろ手に縛られた状態からドラマが始まる。−− 衝撃的な最初からの大ピンチ。

電話が鳴りはじめ、杏子は目が覚めるが、まだ意識は朦朧としていた。
闇の中から現れた女は彼女の拳銃を奪い、目覚めた吹雪刑事の額に当てる。
タフな杏子はさほど動じてはいないが、仕方なく電話で話しだす。          拳銃を、額に当てられる杏子

その向こうで事件が発生! 吹雪刑事は手を縛られた状態ながら、
気丈に対応するが、、、

2)二度目の失神は? (台本、TVガイドより)

タイトル表示のあと妹の陽子は、後ろ手に縛られた杏子を発見する。 吹雪刑事は再び失神していた。   (右の画像)

目覚めていたはずの吹雪刑事は、この時なぜ失神していたのか?
長い間、疑問に思っていた。 −−本放送の頃からずっと、"女が杏子にもう一度麻酔薬を嗅がせたのだ" と考えていたが、何か不自然に思っていた。

最近、台本を確認することにより、そのカットされているシーンが判った。
女は拳銃で、吹雪刑事の頭を殴りつけて、失神させたのだった、
いかに杏子でも、後ろ手に縛られていては、抵抗のしようがない。
二度・三度と殴られた吹雪刑事は、ついに失神した。                     手を縛られ、失神した 杏子
          ↓
この場面が、カットれているので、どうもつながらない感じがしていた。

<TVガイドの紹介欄>
 そういえば、TVガイドのラブリーチャンネルの紹介欄には、「吹雪に一撃くれて、女は闇に消えた」
 と書かれていた。−−つまり、 当初は杏子を殴るシーンは残っていたようだ。
 しかしこの紹介蘭を読んでも、 杏子が殴られていたとは思わなかった。


3)一瞬の観察からの、聞き込み・張り込み

吹雪刑事は事件解決への行動を開始する。
杏子は、謎の女が擦った 「マッチ」 に印刷された店名を確認していた。
暗い部屋で、一瞬しか見えなかったにも拘わらず、彼女は読み取っていた。
女はまさか店名を読まれるとは、思いもよらなかったに違いない。
吹雪刑事のピンチに動じない強さと、正確な観察眼の賜物である。

島谷刑事・田口刑事らと3人で喫茶店を当たっていく。
数十件の店を歩き回り、吹雪刑事はついに岩村時枝を見つける。
                                                    張り込み中の、吹雪と田口
次に、杏子は神戸に行き、中屋警部補とともに捜査に当たる。

4)尋問シーン

吹雪刑事の尋問シーンは迫力がある。
時枝と、中川修への2度の尋問シーンがあるが、ともに吹雪刑事の
事件解決への強い執念が溢れている。
特に中川修に対する、信念をもった追求は凄まじい。

5)懸命の推理

Gメンの前に、完璧に見える中川修のアリバイが立ち塞がる。

Gメンでも意見は対立し、中屋警部補の推理では彼は犯人ではない。
吹雪刑事は信念を持っていた。 そして彼女の強い思い込みは結果的に正しいことが多い。−− 今回は果たして、どちらの推理が正しいのか。

吹雪刑事の直感は、アリバイは偽装に違いないとささやき続ける。
杏子は執拗に食い下がり、懸命の推理を働かせる。
誰もいないGメン部屋で、机の上に座り込み、、考え続ける吹雪杏子の姿はじつに印象的なシーンだった。  (右の画像)

6)乗り込み

犯人を確証をつかんだ吹雪刑事は、男女2人のいる部屋に乗り込む。
杏子は "格闘が強い" と視聴者は認識しているから、何気なく見てしまうが、
普通なら2人のところへ、女刑事1人が乗り込んだら、犯人にやられてしまう確率が高い。

犯罪をあばいた事を説明すると、 逆襲される危険が高まるが、 油断なく、
戦闘モードに入っている吹雪刑事には、視聴者も負けそうな感じが全くない
ので、何気なく見てしまう。
たった一人で、 堂々と乗り込めるのは、 彼女ならではの場面である。

7)静から動への動き

吹雪刑事の”静から動”への"動き”が速く敏捷である。
  1) 奪われた拳銃と自分の鞄を確認した直後。
  2) 中川修の尋問中に、時枝が声をあげた一瞬後。
  3) 犯人への拳銃の構えを、上から前へ構える時。
  4) 犯人に手錠を掛けた直後。
などなど。
  (吹雪ファン以外では、気付かないかも知れないが)

8)追跡と射撃

犯人を見つけるや猛然と追跡する。Gメンのこのようなスピーディな展開は
本当に素晴らしい。 杏子の走りながらの威嚇射撃も迫力満点!

吹雪刑事の射撃シーンは力強く、いつ見てもカッコイイ。
中島はるみの動作は機敏で、拳銃を構える姿も堂に入っている。

9)演技力

登場から数話目で、中島はるみの演技が上手くなったと感じていたが、
いつの間にか実に上手くなっている。
眼光を変化させる演技は、最初から上手かったが、表情もしゃべり方も急激に上達している。



   麻酔を嗅がされた吹雪刑事         事故の報告をする杏子          吹雪杏子と時枝、修




 6.TVガイドの表紙を飾る

    中島はるみは立花警部役の若林豪さんとともに、TVガイドの表紙を飾った
    ことがある。
    1980年8月29日発行のもので、左の画像がそれである、

    この衣装は、272話 「東京−神戸 電話殺人」 の時に、吹雪刑事が着ている
    ものである。 製作の合間を利用して、撮影したのだろうと思われる。


    テレビ番組の週刊誌「TVガイド」の表紙を飾った
    Gメンは、私の知る限りもう1回ある。

    右がそれで、倉田保昭さんと藤田美保子さん。
    ともに初代メンバーの草野刑事と響刑事。
    1976年3月26日発行のものである。


      (他にも表紙に載ったメンバーはいるが、Gメンの
       メンバーとしての掲載は、この2度だけだと思う)



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