273話 怪談 死霊の棲む家

(注:ストーリーが判らないように解説していますが、ネタバレの内容は含んでいます)

<予告編のナレーション>

ハードボイルドGメン75 次の活躍は、

元警察官の老夫妻が、魔物のような犯人に残酷無残に殺された。

しかし死体解剖の結果、推定された死亡日時の翌日、死んだはずの
老夫妻が生きている姿を、知り合いの女性と2人の子供が見た。

目撃者の錯覚か? それとも本当に生きているのか?
科学捜査を根底から揺るがす、前代未聞の不思議な事件に、
Gメンは不思議な迷路に追い込まれていく。

次は、「怪談 死霊の棲む家」

     <監督:小松範任、 脚本:高久 進>

1.作品について

80年度は、吹雪刑事の鮮烈なデビューで幕を開けたが、
本作品は、80年度に開始した「黒谷町シリーズ」の第1作がこれである。
 (但し、望月源治ではないので、登場を待っていると最後まで
  出てこないのでご注意を)

この作品の原作は、津本陽氏の「南海綺譚:魔物の時間」

黒谷町シリーズ開始の記念作で、シリーズの他の作品とは

"異質”であるが、印象に強く残っている。
望月源治ではないが、異常な怖い犯人ではある。
全11作にもなる「黒谷町シリーズ」に、是非ご期待して頂きたいと思う。

なお黒谷町シリーズには、その原点というべき作品がある。
それが218話「梟の森皆殺しの夜」で、蟹江敬三さんが「徳永精一」という
魔物のような、凶悪犯を見事に演じている。

今後の黒谷町シリーズは、この218話と今回の273話が融合して生み
出されていったのだと思う。

この作品と、282話「肉体のない女が呼んでいる」の2本は、Gメン75全話の
中でも極めて特異な作品として、知る人ぞ知る作品である。


2.凶悪犯 川田宏幸

魔物のような異常な犯行をする男は誰か?

凶悪犯としての"凄み”は、蟹江敬三さんには及ぶべくもないが、異常な行動をとる危険な男としては良く描かれている。

また、丹古母鬼馬二さんが岸本という役で登場し、怪しげな男を演じている。
さらに黒谷署の刑事らは、悪役をした人も多かったように思うが、怪しげな雰囲気を醸し出すためだったのかもしれない。

望月源治は、"狂気”そのものが彼にとっては普通だった。
しかしこの犯人は、時々狂気が起きる。その不気味さは、望月源治とは違う怖さがある。


3.片桐兄妹

殺害された老夫妻(陶隆司さん、福田妙子さん)の親しい知人として、
片桐ちぐさ(島かおり)と片桐刑事(中野誠也)は初登場する。
以後、ちぐさは何度か危険な目に遭遇し、立花警部とともに数奇な運命を歩むことになる。


4.立花警部の活躍

事件を認識した最初の人物として、立花警部は登場する。
  (但し当初の行動は、ちょっと慎重に過ぎる感じがするが)

片桐刑事との共同捜査にも拘わらず、死体推定時刻の謎が深まっていく。

油屋旅館の2階から、片桐ちぐさ(島かおり)を見つめる立花警部。この場面は2人の将来を暗示するかのようで、ラストシーン(下の右側)と共に、名場面だと思う。

しかもこの時は、Gメン製作者たちさえ、2人の行く末を知らなかったのである。


注) さらにパンフォーカス手法だと思うが、遠近の距離がある2人が、ともに鮮明で映像の効果をあげている。
   これは259話「銭湯帰りのOL殺人事件」でも、同様の撮影が印象的な
   シーンに使われていた。(注:パンフォーカスは、映画史上の最高傑作 「市民ケーン」 で有効に活用されている)



5.吹雪刑事について

この作品は、立花警部の主役作品であるため、吹雪刑事の活躍はない。
そのため、Gメン部屋でのシーンだけである。

前作では吹雪刑事は「東京−神戸」で出ずっぱりの主役で、立花警部は
あまり出ていないので、今回のと2作品の撮影を同時進行させていたのだろうか。

立花警部と対照的に、Gメン部屋は平和でのんびりとした雰囲気である。
吹雪杏子がスイカを食べている。と思ったら中屋・島谷・田口らも美味しいそうにスイカ食べている。−−−そこに電話が鳴る。




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