276話 夜囁く 女の骸骨
<予告編のナレーション>
ハードボイルドGメン75 次の活躍は、
信州の警察に留置された殺人容疑者の悪夢に現れるのは、
白いサングラスをかけた骸骨2つ。
だが、その容疑者が脱獄。
追跡する警部補と相討ちのかたちで、犯人も警部補も死んだ。
友人のGメンが警部補の妹を守って捜査するが、浮かび上がった
もう1人の共犯。
血も涙もない残忍無残。獣のような凶悪犯とGメンの血みどろな、
凄惨な死闘。
次は、「 夜囁く 女の骸骨」
<監督:小松範任、 脚本:高久 進>
1.作品について
「黒谷町シリーズの第2作」
しかし本作こそが、望月源治が初登場したシリーズの実質的な開幕作品
だと思う。
長野県黒谷町を舞台に、立花警部がGメン随一の凶悪犯と死闘を繰り広げる
作品で、Gメン75のシリーズ物としては「香港カラテシリーズ」と双璧をなす
有名な作品群であり、殺人鬼 望月源治と立花警部との、取調べ・説得・格闘と数度にわたる壮烈な対決は、火花が散るようである。
KAJITA巡査さんによれば、当初は3話で終了する予定だったが、人気を
博したのでシリーズ化したとのこと。
Gメン75を代表する凶悪犯−−望月源治とは何者か?
源治の武器は「手斧」−−これが大きなイメージとして残ることになる。
ところで「黒谷町」には、原点とも言うべき作品が存在する。
218話「梟の森みな殺しの夜」で、
今回、沼田弘を演ずる市川好朗さんは、「梟の森」でも蟹江さんの
相棒の荒木を演じている。
また深夜での 「梟」 のシーンがあるが、やはり218話を意識した
ものだと思う。 (下の右側の画像)
注) 東映ビデオは 「Gメン75の人気投票」 を、2008年6〜8月の3ヶ月間かけて行なったが、
この作品は " 第13位 " に選ばれた。
数多い作品中での "13位" は相当な上位であり、「黒谷町」 「望月源治」 の人気が高いことを現している。
2.凶悪犯 望月源治
1)獣? 殺人鬼?
「魔物」とも言われるが、望月源治にはやはり「獣」というほうがぴったりくる。
当時の新聞には、「殺人鬼」と書いてあった。
凶悪犯というよりも、「殺人鬼」が正しいかも知れない。
しかし、犯罪そのものには知恵を絞っている。
絞殺した上に、手斧で頭蓋骨を叩き割って完全に殺し、こうしないと息を吹き返すことがあるからだと説明する。
計5人の女性を殺害するなどしているが、男がいると襲わずリスクの高い犯罪を避けるなど、それなりに知恵を絞っている。
検査では脳に異常はないとのことだが、爆発し易く殺人を犯すことに抵抗を感じない。
源治の異常性は、機械では計れないだろう。
動機ははっきりしない。ハイカーなどは大金を持っているとは思えないし。
Gメン75では、蟹江敬三さんはこの作品以降は黒谷町以外には出て
いないと思うが、そりゃあ出れないだろうと思う。
2)演 技
見え透いたことをしてでも、芝居をして取調べを手間取らせる。
さらに驚くのは、誕生祝の 「赤飯」 をという時に、
源治は"正座”に座り直して、殊勝な印象を与えようとしている。
ここまで芸を細かくしたからこそ、立花警部も騙されたのだろう。
−−芝居は上手い−−
3)武器と怪演
武器の手斧をあれほど印象的にしたのも、蟹江さんの風貌にピッタリとあったからだと思う。
しかし、怪演!というだけでなく、やはり名演技というべきだろう。
蟹江敬三さんの強烈な個性なしでは、望月源治の凶暴性、異常性は表現できなかったと思う。
凶暴性を秘めた、本物の獣のような眼光をギラギラと光らせている。
殺戮では、「梟の森」の徳永精一がさらに上を行くが、凶悪犯ぶりは全く互角。 (同じ蟹江さんだから当然であるが)
今回の作品の方が、源治を人間性をじっくりと描いている。
4)唇の中の拳銃
立花警部は、望月源治の口の中に拳銃を押し込んでしまうシーンがある。
これは、絶体絶命の状態でさすがの源治も観念した。
このシーンを見て、52話の「唇の中の拳銃」を思い出した。
この作品で響圭子刑事は、唇の中に拳銃は入れられなかったが、大ピンチに陥った。
3.片桐警部補と"ちぐさ”
中野誠也さんが演じた、片桐警部補は殉職する。(上から3つ目の画像)
凄くピッタリのいい配役なので、もったいない気がする。
島かおり さんが演じた、片桐ちぐさは、立花警部への気持ちが高まってくる。
そして、深夜、家に入ろうとする望月源治の姿を見たときの恐怖を、ちぐさは
一生涯忘れないだろう。
4.立花警部の黒谷町シリーズでの功績
黒谷町シリーズの見どころと言えば、望月源治の凶悪・凶暴ぶり。
しかし他の作品では見られない、立花警部の激昂ぶりも人気の1つだと思う。
取調室で、源治を鉄拳の連打でぶちのめすシーンは必見だが、あれほど立花警部に異常なまでの怒りを起こさせた事からも、望月源治の異常性がより際立ったと思う。
黒谷町シリーズが、人気を博したのは望月源治の凶悪ぶりは勿論だが、それだけではなく、立花警部のこの大きな怒りがあったから、とも言えるだろう。
もう1つの見どころは、立花警部と片桐ちぐさの関係。
深夜 片桐ちぐさを追って出てきた源治の前に、立ち塞がる立花警部の3人を映したシーンは秀逸だった。
ここから緊張感が途切れることなく、ラストの壮烈な闘いへとつながっていく。
5.吹雪杏子について
立花警部の1人主役で、吹雪刑事はほとんど出ない。
吹雪刑事の出番はGメン部屋のワンカットのみ。
黒谷署から立花警部への電話が入る。
吹雪杏子は直感が鋭いので、胸騒ぎがしたのだろう。
彼女は、凶悪犯の登場を予感したのか、立花警部を心配そうに見つめる。