Gメン75 281話 夜歩く魔物の花嫁

(注:ストーリーが判らないように解説していますが、ネタバレの内容は含んでいます)

<予告編のナレーション>

ハードボイルドGメン75 次の活躍は、

Gメンの同僚で殉職した刑事の妹が、
恐ろしい魔物に狙われているという知らせに、
Gメンが急行した山国の村で、猟銃乱射 ・ 皆殺しの事件が発生。

生き残った母親は錯乱状態。
もう1人長男の死体が行方不明。

Gメンに信頼と愛情を寄せる女を守って、
Gメンが血に飢えた殺人魔と対決する、山の吊り橋。

次は、「夜歩く魔物の花嫁」

    <監督:小松範任、 脚本:高久進>

1.作品について

黒谷町シリーズの第3弾である。
3人目の魔物は「島田とらお」で、演ずるは粟津號さん。

この人も異常なまでの凶悪ぶりを見事に怪演されている。
血の惨劇が、またもGメンの前に立ちはだかる。
シリーズの常連になる片桐ちぐさ(島かおり)が大ピンチに陥り、立花警部が駆けつける。

Gメン75の先輩HPである「フィルムの中の光と影」の管理人トラオさんの名前は、この魔物から名づけられたとのことである。

3部作の予定だったので本作が最後のはずだったが、シリーズが予想以上の
人気が出たので続編が作られることとなった。

私は音楽は、あまり良く判らないが、今回の劇判はじつに良かったと思う。
どのシーンも力がこもっていた選曲だと思う。

  ところで、なぜ「町」なのか?
  見たこところは「村」だと思うし、「村」の方が不気味に聞こえると思う。
  とはいえ、今さら"黒谷村”と言われてもピンと来ないが。



2.魔物 島田寅夫

魔物 島田寅夫は、黒谷町の凶悪犯の中でも個性的である。
寅夫は日頃の笑顔で和やかな時の顔と、凶暴になったときの落差が大きすぎる。
望月源治と違い、寅夫の和やかな顔には、裏や芝居がない。要するに無邪気で単純である。

地下足袋を履き、赤い血を連想させる赤い柿をいつも食っている。

子供のように自分の感情に従って素直に行動する。しかし素直な一面とは別に、思い通りにいかない時は我慢できず凶暴性を発揮する恐ろしい魔物になる。

第1弾の川田宏幸、第2弾の望月源治らとは全く違う個性を発揮した。

黒谷町シリーズが人気を生んだのも、別々のキャラクターの魔物が次々と登場した事があると思う。

この作品は、母親のキヨとの関連による演出でドラマを盛り上げている。
無邪気だが凶暴性のある寅夫と、人の良いおばあさんのキヨ。この取り合わせが絶妙である。        (右の画像は、島田家の最後の食事シーン)
殺人を犯した後の寅夫とキヨとのシーンは、実に印象深い名シーンである。

武器は散弾銃
   散弾銃とは「ショットガン」の事である。
   特殊な銃弾で、1発の弾丸の中に数多くの散弾が入っていて発射後に
   拡散するために、撃ち損なっても的に命中しやすい恐ろしい銃である。


ところで、
弟夫婦に子供がいて、殺されたらもっと悲惨だったろうと思ったが、考えてみると川田や
望月源治なら子供も殺したと思うが、寅夫なら子供は殺さないだろう。そうすると寅夫の凶悪度が
低い印象になってしまう。−−という事から子供がいなかったのではないかと思う。

3.寅夫の母親 島田キヨ

島田寅夫の印象は強烈なのだが、母親キヨも注目に値する。
この存在がなければ、作品が奥深いものにならなかったと思う。
特に表情が良い。母親キヨを演ずるにぴったりで、演技と言うより個性そのものだろうと思う。

寅夫を心配するキヨ、寅夫の凶暴性を認識して心配するキヨ。
寅夫の将来を考えるキヨ。自分が罪をかぶろうとするキヨ。
登場シーンとしては、

  1)最初の近所のおばちゃん風から、不審を感じさせる仕草
  2)寺から逃げ出す不審な行動
  3)川に駆け込み流される謎のシーン
  4)片桐家での未遂シーン
  5)取調べで、自らやったといった懸命に話す
  6)遊んでいる寅夫を叱って、嫁の話をする
  7)寅夫がちぐさに目を付けた様子へのとまどい
  8)家族との会話と、そして寅夫の犯行状況を話す
  9)そしてキヨは、寅夫を殺そうとさえする
  10)哀しげに唄いながら、大八車で死体を始末する
  11)念仏を唱えだす

後から思い返すと、キヨの登場場面は驚くほど多くて印象的な場面が何度もある。

キヨは寅夫の子供の時に、不注意から崖から落ちて頭を打って頭がおかしく
なった事への罪の意識があり、キヨは不憫でやさしくしてしまう。


3.片桐ちぐさ

黒谷町シリーズで恐ろしいのは、片桐ちぐさ(島かおり)が家いる時に、魔物に扉を破られ・襲われるという場面、これがシリーズの代表的なシーン。
その為に恐ろしい場面に何度も遭遇することになる"ちぐさ"は、それだけでも寿命が縮まる思いがしたことだろう。

先祖の墓場で、ちぐさが祈っているときの近くで、地下足袋を履いた男が野獣のような目で睨みつけるシーンは恐ろしい。

華奢でか弱いちぐさだが、寅夫に散弾銃で撃たれようとする立花警部を助けるために、無我夢中の行動をとる。

 ところで、
 寅夫の母親が、初めて家に来た前後は時間の経過が猛烈に速い。来たのは朝かと
 思っていたら、帰るときは夕暮れになっていて、その材料で料理を作ろうとする
 時は夜になっている。


4.立花警部の活躍

このシリーズは、立花警部の1人主役のため、何でも1人でやるし、事件にも遭遇し、犯人とも格闘する。

立花警部の夢が現実になった。特にこのシリーズでは直感が優れている。

ラストは望月源治の時と同じく、立花警部のアクションは迫力がある。
立花警部は、人質になったちぐさを助けるため、懸命になって追いかける。
川沿いの石垣に登る場面や、飛び降りるシーンは、いつもの立花警部からは考えられないほどのアクションシーン。

最後のナレーションで、立花警部の「○○○と誓った。」というセリフで締めくくっている。
TVガイドの記事には、片桐ちぐさとの2人について、「やがて結ばれるのですが」と書いている。
"いずれは"とは思っていても、なかなか結ばれないのがテレビドラマなのに、はっきりとTVガイドに書いてある。

5.吹雪刑事について

立花警部の1人主役でしかも場所が黒谷町のため、吹雪刑事の登場は
Gメン部屋でのワンシーンのみ。

杏子が部屋に花を飾る場面と、黒木警視正が入ってきて話をするシーン
だけである。




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