283話 オホーツク海の幽霊船

(注:ストーリーが判らないように解説していますが、ネタバレの内容は含んでいます)

<予告編のナレーション>

ハードボイルドGメン75 次の活躍は、

北海の漁業業者が、何者かに謎めいた電話で呼び出され射殺された。
急ぎ上京した父親と兄。続いてその兄も殺されたが、
凶器は意外にも、国防省の登録拳銃。

その両者を恨む不気味な老婆。
北の外国と結んで暗躍するレポ船の秘密をめぐって巻き起こる怪事件。

次は、「オホーツク海の幽霊船」

     <監督:堀 長文、 脚本:山村英司 ・ 高久 進>


1.作品について

前話の282話とは意味が違うが、これもタブーに挑戦した作品。
      (尚、この作品には 「幽霊」 は出ないし、怪奇作品ではない)

76年度の沖縄シリーズ以来の、本格的な外事もので、沖縄に対比される
「北方領土」 の問題を取り上げた傑作である。

今なお、解決の兆しが見えない 「北方領土」 と言う題材を、沖縄の3部作に対し、
こちらは1話完結にも拘わらず、実に心に残る作品として、見事に描いている。

実に重々しいタッチでの演出は見事だった。
期待にこたえたのは堀長文監督で、278話 「エマニエル殺人事件」 とともに、世に送り出した傑作である。

恨みを持つ者も、恨みを持たれる者も、殺す者も、殺される者も、そして取り締まるものも、取り締まられる者も、悪い奴たちも、それぞれが信ずるところによる、必死の生き様が描かれている。

ドラマの中では国名は出ないが、「北の国」 「北方領土」 さらに暗号の 「イワン」 という言葉からは、当時のソビエト連邦であることは誰にでもわかるし、
そもそもソ連以外には国が存在しない。

2.荒牧徳造 と息子たち

不気味な雰囲気が漂う作品で、北海から来た男たちも皆が個性的で不気味である。
この作品の中心は、やはり荒牧徳造(土方弘さん)の強烈な個性と言っていいだろうと思う。

徳造、兄の洋太郎(塩見三省さん)、次郎、の3人はいかにも「悪」という面構えだが、果たして目的は何なのか?

荒牧親子は、冷蔵庫3台など不思議な買い物を次々と
行ない、Gメンの不審はつのっていく。

3.不気味な老婆

位牌を売る不気味な老婆。
このおばあさん役には、「沖縄シリーズ」でも印象的に残る個性を発揮した
原泉さんがこの作品でも登場している。

沖縄シリーズを意識しての配役だと思うが、特に「怨念」という言葉が出てくると、この人はまさに鬼気迫る演技をする。
過去の事件により、強い怨みをもつようになったことが段々と判明してくる。

予想外だったのは、老婆のわりには走るのが速いこと。
           (さすが芸能人だけに足腰は達者なのか?)

4.国防省の江尻3曹

殺害事件に使われた拳銃は、国防省に努める江尻3曹が盗まれたもの。
     (注:3曹とは、陸上自衛隊なら「3等陸曹」の略称)
この江尻サトルを演じた下塚誠さんも、「沖縄シリーズ」に出演されている。
やはりこの作品は、かなり沖縄シリーズを意識されていると思う。

取調べ中も、意志の強さを現わす風貌を現れている。
北方領土の掲示板をじっと見つめる姿もあるが、果たしてどのような意味があるのか?

5.もう1人の不審な男「犬丸真吉」

島谷刑事と田口刑事は、さらにもう1人不審な男がいるのを発見する。

全体に不気味さが漂うこの作品に、さらに不気味さを加えたのがこの男。
演ずる辻萬長さんは悪役の方が多いと思うが、果たしてこの男の目的は何なのか?

辻萬長さんは、吹雪刑事登場編の253話でもテロリスト役で出られているが、その時はメガネを掛けているので判りにくいかもしれない。

6.Gメンたちの活躍

南雲警視が出演する時は主役が多いのだが、この作品はそれほどではなく立花警部や他のGメンたちも活躍しており、全員の活躍と言ってもいいくらいの作品である。

立花警部は、荒牧(アラマキ)親子に対して不穏なニオイを感じ、親子に注意を向けるようになる。

中屋警部補や島谷刑事や田口刑事も、尾行や逮捕で幾度かの活躍シーンがある。

南雲警視は江尻3曹を尾行するが、不審な点は見られなかった。
しかし、後で不審に気付くことになる。


7.吹雪刑事の活躍

吹雪刑事は主役ではないため、出演シーンは何度もあるが、いわゆる
活躍シーンは少ない。
前後の 「282話」 と 「284話」 が主役だから、その為でもあるだろうと思う。
出演の一例としては次の通り。

1)事件現場

事件現場での死体を前にしての場面(右の画像)や、聞き込みを行なう。

2)盗聴シーン

荒牧 (アラマキ) 徳三の電話を盗聴するシーン。(下の右側)
凛々しい美貌と眼光がカッコイイ。




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