290話 Xmasカードの中の人骨

(注:ストーリーが判らないように解説していますが、ネタバレの内容は含んでいます)

<予告編のナレーション>

ハードボイルドGメン75 次の活躍は、

凶悪な手斧による殺人事件。
それは、前に残忍な殺しを続け、死亡したはずの殺し魔と同じ手口。

しかも、殉職刑事の妹に届いたクリスマスカードには、
人間の骨と、Gメンへの呪いの手紙。

恐ろしい殺し魔は生きていたのか?
Gメンに対する復讐の亡霊か?
純真な少女の心が涙を誘う、黒谷峡谷の決闘。

次は、「Xmasカードの中の人骨」

    <監督:小松範任、 脚本:高久 進>


1.作品について

黒谷町シリーズの第5弾。
今回の魔物は望月源治の兄貴で、志賀勝さんが演じる。

黒谷町で、「手斧」による連続殺人が発生し、
片桐ちぐさへ送ってきた「クリスマスカード」には人骨が入っていた。

この作品の頃には、はっきりと 「望月源治」 が不可欠なキャラクターであることを意識しており、望月源治の怨念が強く残る演出がなされている。
さらに「黒谷町」という地名も、かなり意識しているように感じた。

但し、この作品はストーリーに不気味さが少なく、あっさりし過ぎているのが惜しい。
もう少し謎を引っ張って欲しかった。 例えば、
  あの男は誰か? 電話を掛けてきたのは誰か? あの少女は? 等々。

<サブタイトル>
     文字の中で「人骨」だけにギザギザが刻まれているが、これは珍しい。


2.望月亀造

今回は、志賀勝さんが、黒谷町の魔物「望月亀造」に扮する。
この亀造は、あの望月源治の兄貴である。

しかし、いかにも悪顔の志賀勝さんなのだが、蟹江さんの狂気を感じる眼つきに比べると、迫力は劣る。
兄貴役なのだが、弟のように感じてしまう。(やはり蟹江さんは貫禄がある)

志賀勝さんはあまりしゃべらなかった方が、良かったように思う。
凄みのある悪役の声なのだが、ちょっと話し過ぎで迫力が落ちているように感じる。 だから、沈黙の時間が長かった方が良かったと思う。

  蟹江敬三さんのしゃべり方が独特な上に、話し方を変えたりの演技も上手いが
   志賀勝さんはそれは出来ないようである)


<荼毘にふすシーン>
例えドラマの映像であっても、死体は気持ち悪い。
ところが荼毘のシーンの、「望月源治」はあまり気持ち悪くない。
それは何となく、源治はまだ死んでいないように感じるから。
  (蟹江さんの演技は上手い。−−いまだに死んでいないと感じてしまう)

<名セリフ>
    ダムの湖水に向かって、望月源治の遺骨を投げながら、(右の画像)
       「源治よ〜。 成仏するなよ〜」 ←驚愕のセリフ!

       「恨みと呪いを込めて、ここで待ってろ。」

       「俺が必ず怨みを晴らして、やるからよ〜」

    と叫ぶシーン。これは鬼気迫るものがあった。

望月兄弟以外ではあり得ない、凄みのあるセリフである。
どうしても蟹江さんと比較する為、志賀さんには少し迫力不足を感じるが、この場面は、黒谷町シリーズ屈指の名シーンかも知れない。

<手斧攻撃>
手斧を懸命に振っていて、かなりの迫力がある。しかし蟹江さんに比べると少し劣る。

思うに、志賀さんは左右に振るものが多いが、源治が日本刀のように上から
一直線に振り下ろす攻撃は迫力があった。 これなどが影響しているような気がしているが。


3.望月かよ

望月源治は死んだが、シリーズで最も強烈なキャラクターである「源治」を、
以後も視聴者に
意識させるために、兄弟や源治の子供を考えたのだろう。素晴らしい着想だと思う。


亀造は今回だけだが、「かよ」は以後も登場する。演じる石井亜希子さんはキリッとした瞳の可愛い少女で、それを前提で選ばれたのだろう。

しかし視聴者は、単に「源治の子供」だと聞いただけでは、印象に残りにくい。

そこで、源治の子供として印象を強くする為に、工夫が凝らされている。
   1)立花警部が初めて見た時 −−−−亀造と一緒にいる
   2)"かよ”が立花警部と聞いた時 −−キッとして振り向く。
   3)源治の家で亀造と一緒に −−−−源治の写真の前に"かよ”が佇んでいる。
   4)源治を荼毘に付す時 −−−−−−源治のそばに"かよ”がいる。
   5)湖水の前で亀造が  −−−−−−源治の骨を"かよ”に湖水に投げさせる。
等々である。
今回は、兄貴の望月亀造がメインなのだが、「かよ」が後々まで印象に残るような演出がなされている。


よりによって望月源次の子供が、片桐ちぐさの近くにいるとは、
源次の兄貴は、単純な男のようだが、かなり手が込んでいる。

しかし、源治の娘なのだから、一体どんな娘なのか?
ちぐさは親は親、子は子と言って信用しているが、立花警部は心配である。
果たしてこの「かよ」は、ちぐさの味方なのか、それとも源治の仇を討つつもりなのだろうか?

かよが誰の子であるかが、少しずつ判った方が、不気味さが出たと思う。

4.片桐ちぐさ

黒谷町シリーズでは、扉がノックされたり、少しずつ開いていくシーンだけで、ゾッとしてしまう。

片桐ちぐさ(島かおり)は前回に続き今回も、ほとんどが目に包帯をしたままの状態で、あまり何もしないが、危機に陥るシーンが持ち味であり、その存在感が抜群である。

黒谷町を印象付ける大きな要素で、彼女無しではこのシリーズはあり得ない。
   −−彼女がいなければ、立花警部はわざわざ東京から来ないだろうし。

5.立花警部の活躍

5度目の黒谷町への出張である。

そして立花警部は、また新顔の魔物と対決することになる。
立花警部の宿敵である、望月家が送り出した魔物である。

望月源治らとの対決は、立花警部にとって生涯最大の命懸けの戦いとなっていく。

<余談だが>
幸いGメンに、他の事件が発生していなくて良かった。
行き先が長野県だから、東京で事件が発生していたら、いかに立花警部でも
片桐ちぐさのもとへ行けないだろう。

1)疑 問

望月源次が崖から落ちて死んだとき、立花警部や警察はなぜ火葬にしなかったのだろうか?
死んだ2人ともそのままに放置したとは思えないし。兄貴が引取りに来たのならそれも警察で判るはず。 「死んだはず」という疑問が不思議だった。

2)大ピンチ

立花警部が崖から落ちる大ピンチシーンがある。
まさかこれほどのピンチが立花警部を襲うとは。
立花警部にとって始めてではないかと思う。 しかしあれほどの高い崖からまともに転落して軽症とは? と思わず突っ込みたくなる。
     (ドラマでは良く、途中でどこかに引っ掛かっていたということも多いが)

その時、立花警部を救ったのは、皮肉にも望月源治の怨念だった。

3)対決

立花警部の位牌を投げるシーンは意表を突く。まさかと思うだろう。
亀造は全く予想していなかった。
ダム湖のそばで、壮絶な死闘が開始される。

<戒名の疑問>
火葬場でも相手にしてくれなかったのに、位牌には戒名が書かれている。
あの戒名は僧侶に考えたもののようで、しかも高料金のはず。亀造には違和感を感じる。

戒名は「高徳院天源真信士」 私は宗教には全然詳しくないが、調べたところ、
「高徳院」は実在する真言宗の寺と同じ名前だった。

思うに、位牌にはズバリ 「望月源治」 とだけ書いてあった方が、彼らには似合うと思っている。


6.吹雪刑事について

立花警部の1人主役で、吹雪刑事の出演はGメン部屋でワンシーンのみ。

黒谷町からの電話を、吹雪杏子刑事が受ける。
考えてみると、Gメン部屋に杏子がいても、彼女が取ることが少ない。
良く覚えていないが、吹雪刑事が電話をとったのは非常に少ないと思う。

<衣装>
吹雪刑事の衣装だが、287話「手術台の上の悪魔」の衣装に似ている
というより同じではないかと思う。
同じ衣装ならは、杏子にとって同じ衣装は初めてだと思う。




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