291話 女たちの殺人忘年会

(注:ストーリーが判らないように解説していますが、ネタバレの内容は含んでいます)

<予告編のナレーション>

ハードボイルドGメン75 次の活躍は、

妖しい妖気に包まれた黒衣の女。
Gメンの忘年会の会場の店に現われ、次々とGメンを釘付けにした
凄い拳銃の腕前。

身に着けたダイナマイト。
悪徳刑事として死んだ、夫の怨みをぶつける夜叉のような女。

狙う仇、夫の親友だった立花警部と、○○をまっただ中に対決する。
黒衣の女の心が揺らぐとき、もう1人の黒衣の女の手に拳銃が。

次は、「女たちの殺人忘年会」

    <監督:佐藤純弥、脚本:内藤 誠、高久 進>

1.作品について

忘年会の会場「アンジュ」に現われた、女の目的は何なのか?
吹雪刑事にも、中屋警部補にも、田口刑事にも目的がわからない。

Gメンたち凄腕の彼らを向こうに廻し、井草夕子を演じる江波杏子さんは、熟練した凄みと貫禄をもって挑戦する。

しかし吹雪刑事も、持ち味の気丈さを見せるシーンが幾度かあり、毅然とした
話しぶりは、江波杏子さんの迫力に負けていない。
この江波さんの迫力に負けないのは、並大抵ではないと思うが、吹雪杏子は堂々と渡り合っている。

この作品は6人全員の作品でそれぞれに見せ場がある。吹雪刑事のセリフは多い上に、他のGメンより前に出て話すことが多い。

やがて、目的はどうやら立花警部との関連だと判ってくる。
1年前の事件に発端がある模様だ。

ラストは、久しぶりのGメン歩き。
ゲストの演技も迫真で、タイトルもきちんとしたものである。
しっかりとした作品で、見ごたえがあり気に入っている。


2.「新年会」と「忘年会」に共通な「人質」

   新年の作品は、1976年度〜1979年度の間に3回あり、
           それらはコミカルな作品が多かった。
   忘年会の題材は、1980年度だけで、
           こちらはかなり緊迫感を伴う作品に仕上がっている。

           忘年会       新年特別
   1975年度   ×          ×
   1976年度   ×          ○( 85話 77元旦デカ部屋ぶっとぶ!)
   1977年度   ×          ×
   1978年度   ×          ○(189話 危機一髪!お年玉爆弾カメラ)
   1979年度   ×          ○(240話 80新春おせち料理毒殺事件)
   1980年度   ○(291話 本作品) ×
   1981年度   ×          × 

本作は新年のようなコミカルな作品ではないが、サービスシーンも用意されていて、中屋警部補(左上の画像)や、島谷刑事(左の画像)らの、日頃では見られないシーンがある。

  また時間は短いが、黒木vs立花の射撃大会と言う珍しい場面も。

  そして新年の作品でも殆どが人質になるが、この作品も同じ展開である。


3.復讐に取り憑かれた女「夕子」

井草夕子は、和服姿で夫の墓参りをしている。
そのあと、夕子は大きな外車に乗り込む。

夕子を演じる江波杏子さんは、和服が単に似合うというだけでなく貫禄がある。 落ち着きのある物腰、 言葉は時に速く・時にゆっくりとしゃべる。 荒くない女言葉にも拘わらず、凄みを感じる。

そして、Gメンたちを相手に、荒仕事を始めていく。


しかし、最初は落ち着いていたが、目的の立花警部の到着が遅れるにした
がい、段々と落ち着きがなくなり、感情を抑えられなくなってくる。

夫の井草純一警部補は、麻薬捜査官だったが、麻薬組織に取り込まれて悪徳警官として死亡した。 夕子はそれが信用できず、立花警部に騙されたと信じ込み、復讐に取り憑かれる。

だから、立花が警部に昇進したと聞いてますます怒る。
しかし、吹雪刑事に「それが、どうしたんですか?」と言われる。

井草夕子は射撃が上手く、何発もの発砲でGメンたちを威圧する。
  注)射撃で「まばたき」をする人が多いが、江波さんほどの人でもしている。
    それに比べ名手の、黒木警視正や吹雪刑事は、殆どしないのはさすがである。


「私は立花を殺すために、ここにいるのよ。」
井草夕子は、立花警部が中々来ないので、じれ出して情緒不安定になっていく。  興奮して常軌を逸するような発言・行動をとるようになる。

立花警部が来たとき、その興奮は頂点に達する。

<タロット占い>
 中屋警部補はトランプ占い、女店員もトランプ占いといっている。
 吹雪刑事だけが、タロット占いである事を知っているが、当時はタロットは
 あまり知られていなかったのだろうか?


4.Gメンたちの活躍

突然のピンチだが、Gメンたちは何度も打開の策を打つ。しかし夕子は凄腕でなかなか効を奏さない。

<中屋警部補>
  忘年会用に、面をかぶって驚かせる趣向をするが、状況が悪かった。
  中屋警部補は、島谷刑事に立花警部に来ないように暗に判らせようと
  する。
  他にも手を打つが上手く行かない。

<田口刑事>
  田口刑事は、吹雪刑事が夕子の注意をひく間に、扉を開けようとする。
  夕子に、坊やと言われてしまう。だからなのか? ふてくされた振舞いをする。
  しかし中屋警部補の危機には、勇敢に行動した。さすがGメン!

<島谷刑事>
  島谷刑事がGメン部屋を掃除するシーンや、デスクの上にあぐらをかいて
  電話するシーンは珍しい。さすがは年末作品!

  島谷刑事は、スナックで拳銃を構える姿はカッコよかった。
           −−−眼光も鋭く、いかにもヒーロー!という感じだった。

<立花警部>
  最後に、満を持したように登場する。そして事件の裏話を語りだす。
  興奮した夕子の前から、フッと移動するタイミングは、さすが百戦錬磨の
  立花警部である。


<射撃比べ> 冒頭から、黒木警視正vs立花警部の射撃比べがある。

黒木警視正の連射は実に素晴らしくカッコいい。
立花警部は、良く撃っているように思えるが、じつは立花警部は発砲した
あとの姿が多く、発砲の瞬間のシーンは意外に少ない。

<余談だが>
  若林豪さんと、スナックのママのヨウコを演じる進千賀子さんとは、80話「暗闇の密室殺人」では夫婦役で共演されている。
  その作品の時は、若林豪さんもまだGメンではなかった。



5.吹雪刑事の活躍

吹雪杏子は、忘年会で楽しい時を過ごそうとしていたが状況は一瞬で変わる
夕子という凄腕の女が、固い決意を胸にGメンに挑戦してきた。

しかし吹雪刑事も毅然として、凄腕の女と ・ その拳銃にも動じない。
クールにそれでいて、強気に相対していく。

1)突然の拳銃

女店員を人質に、拳銃が吹雪刑事と田口刑事に向けられる。
しかし吹雪刑事は、突然の拳銃にもうろたえない。
彼女は、拳銃が自分のバッグに入っているのに、 「持ってないわ」 と強気に言い放つ。


2)田口刑事への援護
田口刑事が扉を開けようとする時、吹雪刑事はその援護のために素早く立ち上がる。 そして、夕子の気をそらすように近づく。

夕子が拳銃を構え 「それ以上、近寄らないで。」 と言ったのに、吹雪刑事は自分に、注意をひきつける為に、さらに一歩近づく。

この一瞬の判断力と、「積極的な行動力」 は吹雪杏子の持ち味である。
彼女は毅然した態度で、夕子に声を掛ける。
中屋警部補も続いて立ち上がり、吹雪刑事の後ろに立つ。

素晴らしい連携プレーだ。

3)夕子に対して

彼女の毅然としたセリフは実に凛々しく、幾度も夕子に相対する。
Gメンが3人並んでいても、セリフは吹雪刑事のものが多い。

それぞれ場面の、セリフの一例は、(詳しくは書けない)

(1)「時間を待つだけって、どういう意味なの?」

(2)夕子の 「立花は、警部に昇進したの?」 に対し、
              杏子 「それが、どうかしたんですか?」

(3)「一体、立花警部が何をしたっていうんですか?」

(4)「立花警部は、法を守るものとして当然の事をしただけです」

(5)「人質なら、私が」

4)1年前の映像
  井草警部補が絡む1年前の事件のシーンに、吹雪刑事がGメンとして出ているが、その時はGメンではなかった。
  Gメン75には、時間的につじつまが合わない映像が出てくるが、好きなメンバーが出るのなら許せる。

5)吹雪杏子の衣装
  彼女の衣装は、287話「手術台の上の悪魔」、291話「Xmasカードの中の人骨」と同じだと思う。
  これまで、同じ衣装は一度もなかったので、中島はるみはよほど気に入ったのだろうか?
  着る衣装は、中島はるみ本人が決めると言われていたから。
 

    夕子に立ち向かう杏子             3人が夕子に            黒木・立花の射撃勝負


   本部へ電話する田口刑事        拳銃を吹雪刑事へ向ける        スナックのママ ようこ


作品リストへ戻る      トップへ戻る