293話 香港の女カラテ対Gメン Part2

(注:ストーリーが判らないように解説していますが、ネタバレの内容は含んでいます)

<予告編のナレーション>

ハードボイルドGメン75 次の活躍は、

女性Gメンを人質にとった香港コネクションは、
押収されたヘロインと、1億円を要求。

救出に向かった張少年も捕えられ、
怒りに燃える、兄の雲の上のドラゴンがついに立ち上がる。
日本人を憎悪する、女カラテ使いと、殺し屋を相手に凄絶な決闘。

だがその頃、捕えられた女性Gメンに、槍の穂先が光る恐ろしい
吊り天井が迫っている。

次は、「81 香港カラテ ロケシリーズ
            香港の女カラテ 対 Gメン Part2」

     <監督:山口和彦、 脚本:高久 進>

注)Part1で書いたが、東映ビデオは 「Gメン75の人気投票」 を
  2008年に実施し、この3部作のPart1が、見事に" 第4位 "に選ばれた。
  また、Part2が "7位" 、Part3が "8位" となり、 3作全てがベストテン入り
  するという、快挙となった。


1.作品について

香港カラテシリーズ3部作の Part2

「第1話」は、吹雪刑事の主役とあって得意の合気道での活躍を期待したが、
カラテ軍団の 「人数」 と 「武器」 には圧倒され、杏子は大苦戦となった。
失神させられるなどピンチの連続で、タフな杏子も限界にまで追い詰められていた。

「第2話」では、島谷刑事も活躍し、吹雪刑事との2人主役。
監禁中の杏子の場面と、彼女を救出する為の活動の両方が描かれる。
島谷刑事や白鳥警視が、 さらに張少年が、 そしてついにドラゴンこと張雲竜が、吹雪刑事を救出しようと奮闘を開始する。

傷も負った杏子は、肉体的にも、精神的にも追い詰められていたが、張少年との出会いで、刑事である自分を取り戻し、再び気力を奮い起こす。

この第2話では、ドラゴンこと張雲竜のカラテ技だけでなく、壁を使った人間離れ
した技が
見られる。

2.張姉弟

姉 : 張麗花(中島めぐみ
          (中島はるみの実妹))

弟 : 張少年(中井徹)

張姉弟の活躍が、この作品の1つの見どころである。


張少年は、恩義を受けた吹雪刑事をなんとしても助けたいと、兄の雲竜を動かそうとしたが駄目なので、
自ら行動を起こし、島谷刑事を案内し飼っている伝書鳩を、2羽とも連れて行く。

その張少年は、香港コネクションに捕えられてしまうが、杏子の監禁部屋に連れられたとき、幸いにも鳩を
取り上げられなかった。 伝書鳩であることを気付かれなかったという事だろう。

しかし伝書鳩作戦は上手く行かず、暗礁に乗り上げてしまう。
吹雪刑事も張少年も、唖然とすることに。

3.雲の上のドラゴン

Gメンの助っ人となるはずの張雲竜は、張姉弟の兄である。
しかし、2人からの吹雪刑事の救出要請にも、耳を傾けない。
目の前で、その女刑事が拉致されたのに、酒ばかり飲んでのんびりしている。

そうしながらも島谷刑事を助けるなど、何もしていないわけでもないのだが。

張麗花からの、弟が誘拐されたらしいとの情報で、ついに立ち上がる。
そして、凄まじいアクションの連続。カラテ使いたちをなぎ倒していく。

罠にかかり捕らえられるシーンもあるが、脱出に成功する。
靴に道具を忍び込ませているのは、スパイドラマを見ているようだ。

4.元刑事 本多貢

本多貢は、辻萬長さんが演じている。
吹雪編では253話「吹雪刑事登場編」や、283話「オホーツク海の幽霊船」などにも出演されている。いい役もやるがやはり悪役が真骨頂だろうと思う。

白鳥警視に対して、密輸しようとしたヘロインを押収されたことを怨みに持つ。

元刑事でありながら、日本の警視庁に、そしてGメンに挑戦してくる。 物欲に目がくらんだ男で、吹雪刑事を人質に金儲けを企む。

5.香港カラテ軍団

幹部の 「銭烈山」 を演ずるのが、香港カラテの代名詞ともいえるヤン・シー。
カラテの達人である島谷刑事を相手に、パワーで圧倒する。
そのカラテ技も、パワーも、凄まじく、その上に関節技も見せる。
  (ヤン・シーは、「燃えよドラゴン」でも、腕ひしぎ十字固めをしていた)

銭烈山が、張雲竜を相手に、青竜刀をもつシーンがあるが、これがまたカッコ良くて絵になっているのはさすが。

 <余談ですが> 手錠を引きちぎった脱獄王

ヤン・シーの「手錠 引きちぎりシーン」で、思い出すことがある。

脱獄王「白鳥由栄」の話。 4度成功させた彼の脱獄歴は超人伝説と呼ばれるほど、
常人にはマネの出来ない能力を持っていた。 (1979年没) (右の画像)
この白鳥が、手錠を"引きちぎる”ことが出来たのである。

白鳥は、格闘家でもなく、重量挙げの選手でも無く、特別な訓練は何もしていない。しかし、
膂力は絶倫で、米俵(60Kg)一俵ずつを両手にもち、両側に大地に水平に持ち上げる
ことができるなど怪力の持ち主であった。

手錠の件を知った刑務官は、通常よりも強力な手錠を白鳥にはめた。
ところが白鳥は、その強力な手錠でさえも、引き千切った。

  注)この作品に登場する白鳥警視とは同姓だが、それは単なる偶然だと思う。


2)呂 秀蘭(アニー・リー)  (画像は最下段の中央、or Part1参照)

ナイフを投げて、島谷刑事に傷を負わせる。
秀蘭はカラテ技は使わないが、「女カラテ使い」 の1人と見なされている。

この女が、吊り天井の仕掛けの紐を引っ張る。


3)女カラテ使い 沙翠玉(オー・メイメイ)  (右の画像) →

この女カラテ使いが、"卑怯”だということは、第1話で書いているが、第2話においても同じ。 今回も、吹雪刑事に対しては必ず槍を持っている。
一度くらいは、杏子と素手で闘ったらどうかと思う。


6.香港警察

陳警部は、河合絃司さんが演じているが似合っている。
彼は、香港コネクションについて、何も捜査が進んでいないので、苛立っている。

捜査には熱心なようだが、吹雪杏子と張少年の"生命”のことを考えていないようである。

香港コネクションのことを 「奴らは人殺しなど、何とも思っちゃいない」 と言っているが、それは自分自身にも、当てはまることに気付いていない。


7.白鳥警視

東京での 「張姉弟」 の事件では、吹雪刑事とともに事件を担当していた。
警視庁麻薬取締専従班の白鳥警視(鈴木瑞穂)は、電話で吹雪刑事が誘拐されたことを知らされる。

指定された場所に島谷刑事と赴くが、初めて見るカラテ使いの殺し屋の凄まじいパワーに驚くが、何とか救出しようとする。

ところで、
白鳥警視は中国に残して来た、娘をずっと長い間捜し続けていた。


8.Gメンの活躍

1)島谷刑事

香港には、吹雪刑事と一緒に、島谷刑事が来ている。
Part2では、島谷刑事が活躍する。
白鳥警視とともに、吹雪刑事誘拐の電話を受けた島谷刑事の心境は気が気ではなかっただろう。

香港コネクションとの広場での出会いは、カラテの達人の島谷刑事にとってもカラテ軍団の圧倒的なパワーを思い知らされることになる。

島谷刑事は尾行を開始する。
しかし、カラテ使いの殺し屋4人が、行く手に立ち塞がる。
もし、吹雪刑事が一緒ならば闘えるか、島谷刑事も一人では4人は多すぎる。
吹雪刑事と同じように圧倒されてしまう。

その後、張少年とともに路地裏への潜入捜査をおこなう。


2)黒木警視正ら

島谷刑事から吹雪刑事誘拐の知らせを受けた黒木警視正は、部下に任せず自らが、立花警部らGメンを引き連れて、香港へ飛んだ。
身代金も用意して、吹雪刑事を救出しようとあらゆる手を打つ。

<3億6千万円>
  吹雪刑事の身代金として要求してきたのは150万ドル。
   (ヘロイン100万ドル+現金50万ドル、当時の為替は240円なので3億6千万円)
  吹雪刑事の身代金を、香港コネクションは大きく吹っかけてきた。
  身代金の額としては、かなり高額だと思う。

9.吹雪刑事の活躍

タフで実戦能力が高い吹雪刑事だか、<第1話>では、カラテ軍団の人数に圧倒され、 さらに 「槍、 仕込み靴、 ナイフ投げ」 等が 相手のため、 得意の合気道を生かせなかった。
怪物 のような男 銭烈山(ヤン・シー)に失神させられたうえ、 「仕込み靴」 で傷つけられた。 さすがの杏子も、肉体的にも精神的にも追い詰められていた。

しかし、吹雪杏子は気力を振り絞って、カラテ軍団に立ち向かっていく。

1) 張少年との再会

監禁されている杏子は、通路の足音にも怯えたが、思いもよらず張少年に再会する。
張少年は、吹雪刑事から受けた恩義が忘れられず、身の危険も顧みずに
杏子の奪還作戦に協力したのだ。
残念ながら少年も監禁されるが、少年は伝書鳩を持ってきていた。

そして、吹雪杏子刑事は少年との再会で、本来の自分を取り戻していく。


2) 闘争心の再燃

香港警察の行動が、香港コネクションのボスを怒らせ「吹雪刑事らを痛めつけろ」と
ほえる。 杏子を監禁している部屋に、カラテ使いの2人を行かせる。 (右の画像)

しかしすでに、気力を取り戻していた吹雪刑事は、足音を聞きつけると、
闘争心を燃やして彼らを待ち構え、入ってきたカラテ使い2人を、合気道で
投げ飛ば
して倒した。
決死の 「脱出」 を目指して、杏子は一か八かの勝負にでた。

  −−今回初めて、吹雪杏子が合気道の本領を発揮した。 (右の画像)

但し映像では、部屋に入ったカラテ使いは2人なのだが、吹雪刑事が投げ飛ばすシーンは1人だけで、 "もう1人" の放送がカットされている。
せっかくの杏子の活躍場面なのだから、ぜひ放送して欲しかった。


 <台本では>
  やはり台本でも、吹雪杏子は2人を倒すことが書かれている。         吹雪が、カラテ使いを投げ飛ばす
  撮影はしているはずだし、彼女が2人を倒すシーンを見たかった。

3) 脱出

カラテ使い2人を倒した杏子は、張少年をつれて監禁部屋から脱出した。

ところが、 銭(ヤン・シー)たちは、 彼女らを待ち構えていた。
じつは前回、彼らは 吹雪刑事と闘って倒したが、彼女が並みの女刑事ではないことを認識していた。
2人を行かせたものの、あの女刑事なら、 彼らを倒して脱出するかも知れないと予想していたのだ。

杏子は部屋から出たが、待っていた数人のカラテ使いに、囲まれてしまう。
女カラテ使いは槍を持ち、今回も、杏子と素手で闘うことを避けている。
これだけを相手には、吹雪刑事の格闘能力でも勝てない。
「人数」と 「槍」 に、杏子はまたも圧倒される。 (右と右下の画像)

ジリジリと追い詰められ、再びピンチに陥ってしまう。
せっかく、杏子はピンチをチャンスに変えて、果敢に脱出したのだが。


4) 吊り天井の恐怖

第2話で吹雪刑事はピンチに陥る。そして、恐怖に見舞われる事になる。
相手は、「吊り天井」。

天井が降りてくるだけでも恐怖だが、鋭い刃物が飛び出す。 さらに、、、
鋭い刃物が、一本ずつ落ちて来て、床に突き刺さるシーンには恐ろしい。
いつどれが落ちてくるか判らない恐怖は、臨場感たっぷり。
張少年だけではなく、いつもクールな吹雪刑事でさえも恐怖におびえる。

吊り天井は、外国にもあるだろうが、日本の時代劇には良くあったと思う。
しかし、一本ずつ鋭い刃物が落ちてくる設定は、吊り天井の仕掛けでは見た
ことがなく、ドラマとしての恐怖感を煽るには、良いアイデアだと思う。


  吹雪刑事は、異国の地で監禁されるという最悪の状況の中で、懸命に立ち向かうが、
  第2話のラストは、吹雪杏子が絶体絶命の状況になったところで終了する。

中島はるみの目の演技は、いつ見ても素晴らしい。
 気丈で強気の目、恐怖を漂わせた目、等々このシリーズでも冴えている)


     ドラゴンのアクション         カラテ使いを倒した杏子だが      吹雪刑事、得意の合気道 !


     監禁部屋からの脱出             ナイフ投げの女             取り囲まれた杏子


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