296話 雪の夜 悪魔が生んだ赤ん坊

(注:ストーリーが判らないように解説していますが、ネタバレの内容は含んでいます)

<予告編のナレーション>

ハードボイルドGメン75 次の活躍は、

長野県 黒谷。
Gメンにとって忘れられぬ凶悪犯との闘いの地。

Gメンを慕う殉職刑事の妹ちぐさ。
そして、彼女が育てている女の子は、死亡した凶悪犯の娘。

その女の子を誘拐した、謎の女と共犯の男。
高熱に苦しむ女の子の安否を気遣うちぐさとGメンに、
襲い掛かる、凶悪犯の凄まじい怨念。

次は、「雪の夜 悪魔が生んだ赤ん坊」

     <監督:小松範任、 脚本:高久 進>

1.作品について

黒谷町シリーズの第6弾。 5匹目の魔物が登場する。
長野県 黒谷町に住む片桐ちぐさ(島かおり)は、再び事件に巻き込まれる。
望月源治の娘、かよが行方不明になり、立花警部は6度目となる黒谷町へ急ぐ。

ちぐさが見た、雪の中に佇んでいた怪しげな女は何者か?
黒谷署が引っ張って来た男は何者か?

黒谷の闇に松明の火がゆらめく中で、立花警部はちぐさを、かよの無事を祈りながら救出活動を行なう。

黒谷町シリーズの第1弾は真夏だったが、季節はめぐり今回は大雪原の中で立花警部は魔物と対決することになる。

<ところで> 片桐ちぐさの話では、かよともうすぐ東京に行って、立花警部と暮らすとのこと。その通りになれば、黒谷町は舞台ではなくなる。


2.源治の情婦 岸本民子

岸本民子を演じる、根岸季衣さんは迫力のある存在感を示した。
家の外で、雪の中に佇む民子、監禁部屋に入ってきた民子は、まるで雪女か鬼婆ではないかと思わせるほどの不気味さを感じさせた。

  (民子は、285話「満月の夜女の血を吸う男」に登場した、源治の情婦「きくよ」に
   似通っていると思う)


この民子は、噂では望月源治の情婦で、かよの母親であるらしい。
かよを誘拐したのは民子らしいが、その目的は何なのか?

  (途中省略)

恐ろしい印象の民子だったが、彼女が母親の気持ちを取り戻し、雪の上で母親として死んでいく時の顔は美しい。
このHPは、死体や死に顔の掲載を意識的に避けてきたが、この画像だけは例外的に掲載する。(下の右側)

なお民子が、鎌を振り回す場面は熱演だった。


3.蜂屋辰男

挙動不審で引っ張られた 「蜂屋辰男」。 この男が5匹目の魔物だった。
立花警部は7年前に、誘拐事件で知っていた。
辰男は望月源治らと、深いかかわりあるようだが、立花警部にも良く判らない。

凶悪犯だが、源治とタイプは違う。
望月源治は、金にはそれほどの執着心をもっていなかった。
源治は大金への物欲よりも、人殺しや怨念をぶつける魔物のような男で、兄貴も同様である。
しかし辰男は、身代金を要求するなど、物欲が強く俗世間的なタイプ。
かよへの対し方も、長男の亀造とはまるで違う。

武器は、やはり源治らと同じく「手斧」で、立花警部に襲い掛かってくる。
成瀬さん手斧はあまり使い慣れていないが、懸命に振り回すと迫力がある。

この辰男を演じるのは、名うての悪役、成瀬正さん。
            (274話「東京原宿族 この夏の犯罪」に出演)
いかにも「悪」と言う印象で、どちらかと言えばヤクザやシャブの売人が似合いそうだが、衣装にも凝って熱演されている。


<雪道とバイク>
身代金を奪ってバイクで逃走するのは、石川守(今井久さん)だが、
その場面は、路面が恐らくは凍っている雪道をかなりのスピードで走っている。
追いかける自動車もそうだが、スリップしないのだろうか?


4.望月かよ

かよを演じるのは、石井亜希子さん。
鋭い眼光に特徴があり、キリッとした顔立ち。しかし不気味さも漂わせている。

可愛いが、望月源治の子供ということで、ちょっと恐ろしさも感じさせる女の子。 名キャストだと思う。

ちぐさを慕いながらも、なぜか彼女を決してお母さんと呼ぼうとしない事も不気味さをより高めている。 (左側の画像)

KAJITA巡査さんのHPの「シナリオ検証」によると、シナリオのラストは本編と大幅に違うという。
しかし、かよを演じる石井亜希子さんの存在感が、貴重であることを認識して変更されたのではないかと思う。

後半、高熱でうなされる、かよの演技は正しく迫真で、本当に高熱があるようだった。

5.黒谷警察署

黒谷町で何度も起こる、凶悪犯を解決するためか、長野県警は矢野捜査1課を送り込んできた。 演じる河合伸旺さんは悪役の常連。
その上、黒谷署長の今西正男さんも悪役が多い。彼らは今回は大丈夫か?

捜索隊の松明の火が、闇にゆらめくシーンは印象に残る。
いかにも、黒谷町という感じがする演出だろう。

273話等の「山で死体を荼毘にふす」場面と、この松明は黒谷町らしいと思う。


6.立花警部とGメンの活躍

立花警部は"宿敵”となった望月家の魔物と、黒谷町でまたも対決する。

望月源治の怨念がそうさせるのか?
今回も、源治に関連する男も女も、立花警部や片桐ちぐさ(島かおりさん)に襲い掛かってくる。

1)身代金

身代金を要求する電話が入るが、20百万円は大金で難しい。
  (吹雪刑事の時は、1億20百万円の身代金が、スッと出てきたが)
そこへ黒木警視正が身代金を持参して、久しぶりに黒谷町へのご出馬。

しかし受け渡しに失敗し、ちぐさを人質に取られる。
松明をもって、黒谷署員と共に捜索する。

2)決闘の場へ

蜂屋根辰男からの電話で、指示された場所へ1人で行くことを決意する。
大雪原の中を、 山道を、 駆け走る立花警部。
次々と、場所の指示をしてくる犯人。

妖怪でも出てきそうな地名が並ぶ。
この地域には、本当にこのような所があるのだろうか?
    「般若峠」、 「天狗橋」、 「地獄谷」

       注)さすがに、「鬼」や「夜叉」という地名は出てこない。

登り降りの多い雪の山道をあれだけ走ったら、決闘の前に疲れてしまう。
しかし、決闘の場所へ駆け走る立花警部はカッコ良く、仮にゆっくり歩いていて
休憩などしていたら様にはなるまい。


9)蜂屋辰男との決闘

立花警部は強気に勝負に出て、形成挽回を図る。

分厚い札束を両手に持ち、金に執着する敵の心理的な弱点に食い込む。
敵に応じた戦術の使い分けは、さすが立花警部。

この手は、望月源治が相手なら通用しない。
源治ならば金などに目もくれず、立花警部に向かって真一文字に
手斧を振り下ろして来るだろう。

4)他のGメン

立花警部の1人主役で、黒木警視正を除くと、吹雪刑事もそうだが、殆どのGメンがワンカットシーンのみ。


7.吹雪刑事について


黒谷町シリーズは立花警部の1人主役であり、吹雪刑事の出番は殆ど無い。
Gメン部屋でのワンカットだけの出演。

シナリオでは、
「黒谷町からの電話を、吹雪刑事が取って、立花警部に取り次ぐ」 というシーンになっていたとの事。




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