300話 盗まれた女たち Part1
<予告編のナレーション>
ハードボイルドGメン75 次の活躍は、
代表者の社長が誘拐された。
社長夫人と女性Gメンが、金を引き出しに行った銀行で、強盗事件発生。
Gメンは銀行強盗事件と誘拐事件に同時直面。
誘拐犯人の指定時刻は迫り、Gメンは接触に失敗。
一方人質にされた社長夫人に銀行強盗が恐ろしい賭けを命令。
両面作戦は、緊迫したクライマックスを迎える。
次は、「Gメン75 300回記念
ハードアクションシリーズ 盗まれた女たち 」
<監督:山口和彦、 脚本:佐藤純弥>
1.作品について
300回記念作の2部作 Part1。 Gメン75 初めての記念作品。
(Gメンには、○○○回記念作はかつてなく、キイハンターにもなかった)
2つの犯罪が銀行の内と外で同時に進行する状況が描かれ、それが上手く
融合しており、Gメン75屈指の傑作となった。
吹雪刑事の1人主役であるが、他のメンバーにも出番が用意されている。
ゲスト陣も豪華で、小林稔寺さんが 「Gメン屈指」の凶悪犯を演じ、西田健さんや
沢田勝美さん、さらに内田朝雄さんも出演している。
黒木警視正も久しぶりに現場で指揮をとり、所轄警察や機動隊も出動する。
Gメンには、銀行強盗の作品は幾つかあるが、最高傑作だと思う。
吹雪杏子は強盗に囲まれた中でも、持ち前の強い精神力で気圧されずに立ち向かうが、相手はライフルなどの銃をもち、絶対不利な状況に立たされる。
人質やGメンだけでなく、銀行強盗も、誘拐犯も、登場人物の全員が追い詰められた状況におかれ、その全員が現状打開のために死に物狂いの闘いを展開することが、この作品に強い緊張感を生み出している。
そして、「凶悪犯」 長崎の行動は、段々とエスカレートしていく。
<その他気付いたこと>
1)台本のときから2部作なのに、サブタイトルに 「Part1」 という表示が無い。
これは、視聴者に1話完結と思わせる意味があったのだろうか?
2)台本にあるのに本編に無いシーンが多く、撮影されたにも拘わらずカットされたシーンが多かったようである。
しかしそれがスピード感を上げることになり、ハードアクションの傑作となったのだろう。
3)銀行内の天井付近からの撮影だろうか? 高い位置からの撮影が何度もある。
注) 東映ビデオは 「Gメン75の人気投票」 を、2008年6〜8月の3ヶ月間かけて行なったが、
この作品は " 第15位 " に選ばれた。
数多い作品中での "15位" という高いランキングは、傑作であるとともに人気の高さを現している。
2.銀行強盗 長崎ら 三人組
銀行強盗の三人組と演ずるのは、
長崎(小林稔侍)、 野口(根岸一正)、 川村(福崎和宏)
いずれも悪役の常連であり、この傑作の緊張感を盛り上げている。
(名前はドラマで出ないと思うが、名前なしでは書きにくいので、以下名前を使う)
冒頭からスピード感に溢れ、迫力のある襲撃シーンの連続で、この記念作品に対するスタッフの意気込みが、このシーンからも感じられる。
警官隊に囲まれてからも、突入してきた警官に発砲して撃退するなど、彼らは強硬な対決姿勢をとる。
長崎は、台本ではショットガンと拳銃を持っているが、本編ではライフル銃を
両手で持っている。(片手でライフルは難しい)
長崎ら強盗3人組にとっても、状況は思い通りにならず、やはり死に物狂いである。
精神的にも、彼らは追い詰められていく。
<要注意人物とは>
強盗たちにとっての要注意人物は、ある婦人の親戚という「吹雪杏子」という女。
長崎から見ると、吹雪杏子という女の精神力の強さは尋常のものではない。
銃口を向けられても、平然としている杏子の気丈さから、普通の女ではないことが判ってくる。
小林稔侍さんが、Gメン75で印象的な活躍をするのは、計3話。
205話「新Gメン対ニセ白バイ警官」の関警部補と、
300回記念 2部作の銀行強盗。
全く反対の役柄だが、ともに素晴らしく印象に残る名演技だった。
その後、Gメン75関連の作品で小林稔侍さんが、出演することがあるのは、
この3話での、強烈な印象によるところが大きいと思う。
3.誘拐犯 小山3兄弟
小山伸夫、小山賢二、小山悦子の三兄弟は、小山制工所の経営者の小山浩一(河合弦司さん)の子供たちである。
こちらも名うての悪役である西田健さんや、沢田勝美さんが演じ、さらに妹は星野真弓さんが演じる。
彼らは父親を死に追いやった、大西俊夫を許すことが出来ないが、誘拐した身代金で出直そうとする。
この作品は、小林稔侍さんの銀行強盗の印象が強いが、西田健さんも私利私欲ではなく、仇討ちが主たる動機で、落ち着きと貫禄を感じさせる。また弟や妹に対する強い愛情も感じさせ、西田健さんの代表作の一つと言えると思う。
沢田勝美さんは、無鉄砲に犯罪をおかす役が多いが、一味違って慎重にことを進めようとして決行する前に不安になり、悩む姿が人間性を感じさせるなど、細かに描かれている。
<印象に残るセリフ>
小山悦子 「あたしたち、みんな死んじゃうのね。」
つい先ほどまで生きていた次兄が、あっけなく死んだことにショックを受けてしまう。
この言葉は、あとで伸夫がまた思い出してかみ締めることになる。
4.大西夫妻
社長の大西俊夫を演じるのは、内田朝雄さん。 これまた大物の悪役俳優。
あくどい仕事をやって、小山浩一を自殺にまで追いつめる。
いつもの大物然とした悪役ではなく、誘拐された惨めな男として登場する。
妻は大西昌子。
彼女は夫の命を救うために、銀行強盗らに必死に懇願したりする。
なかなか出来ない必死の行為である。
5.Gメンたちの活躍
黒木警視正が久しぶりに現場に登場して直接指揮をする。
しかし今回の見どころは、Gメンが3ヵ所、時には4ヵ所に別れて活躍することだろう。中屋警部補などはあちこちに姿を現わす。
見事な統率と連携で、黒木警視正以下メンバーたちは見事なチームプレーを見せる。
また所轄の刑事も数多く参加し、機動隊も出動し、警察側は総力をあげた体制をとる。そのトップとして黒木警視正が指揮をとる。
田口刑事は沢田勝美さんとは、255話「女が掘った落とし穴」などでも相対している。
田口刑事の必死のしがみつきは、258話「大空港の逃亡者」を思い起こさせる熱演。
(しかし台本には、この活躍はない)
黒木警視正
長崎の 「メスデカは死んだぞ」 に対し、
「そんなバカな」 百戦錬磨の黒木警視正さえも、言ってはいけないことをつい言ってしまう。
この黒木の言葉は事実確認になっていない、 「信じたくない気持ち」 の現われである。 そこを鋭く長崎は突いてくる。 この男も只者ではない。
6.吹雪刑事の活躍
300回記念の2部作を、吹雪刑事が1人主役を演じる。
吹雪杏子は、誘拐事件を捜査中に新たな事件に遭遇し、2つの事件の真っただ中に巻き込まれる事になる。
銀行強盗たちに取り囲まれ、杏子は絶体絶命のピンチに陥るが、数多くの人質になっている人々を救うため、吹雪杏子は気丈に、危険な行動をあえてとりながら強盗たちと対決していく。
吹雪刑事は、タフな精神力と力強い眼光が特徴だが、この作品ではそれらが遺憾なく発揮され、銃口を向けられたり、リンチを受けたりと何度もピンチに陥るが
持ちこたえ、凛々しく立ち向かい続ける。
吹雪杏子がたった一人で、Gメン史上屈指と言われる凶悪犯と、対決する姿が
印象的である。
1)事件との遭遇
吹雪刑事が東陽銀行の入った直後に、2つ目の事件が発生する。
突然、非常ベルが鳴り響いた。 その瞬間から吹雪杏子と大西昌子の2人は、思いもよらぬ運命に翻弄されることになる。
吹雪刑事は身構えたが、銃を持った男が乱入し全員が人質になってしまう。
<台本では>
吹雪刑事は、拳銃が入っているバッグを移動させるために、杏子はよろめいたフリをして、バッグを蹴って小部屋から大部屋に移すのに成功する。−−本編では省略
ところで、
実際の銀行での撮影だろうから、あの三千万円の現金は全部が本物だったように思う。
(通常は「表の裏だけが本物で、新聞紙を切ったもの」で撮影しているとの事)
2)適確な判断だが
この銀行強盗に襲われたとき、吹雪刑事は昌子夫人に「大丈夫です。大人しくしてれば、この連中すぐに出て行きますから」と話している。これは適確な判断である。
ところが非常ベルが鳴ったために、杏子の期待に反する状況になってしまう。
3)人質の中での責任感
銀行の中で多くの人々が人質となって、生命の危険にさらされている。
この状況の中で、吹雪刑事はただ1人の警察官として、強い責任感を強く感じている。
杏子は、何とか局面を打開しようとするために、命の危険を冒しながら、際どい行動を何度もとる。 しかし長崎らの妨害でうまくいかず、吹雪刑事は殴られたりする。
長崎と対決するとき、吹雪刑事を演じる中島はるみの力強い眼光が輝き、キリリとした美貌が冴える。
(同じ人質でも、香港カラテに拉致されたときは1人だったから、自分のことだけ考えて
いれば良かったが、今回はそうはいかない)
4)凶悪犯 長崎との対決
望月源次・徳永清一に次いで、Gメン75屈指の凶悪犯と言われる銀行強盗の長崎に対し、吹雪刑事は生死を賭けた対決をする。
(1)非常ベル
非常ベルを鳴らしたのは誰だ。吹雪刑事は名乗り出た。
強盗の川村が、吹雪刑事を正面から殴る。
杏子は倒れたが、痛みに耐えて立ち上がる。
(殴られて、飛ばされるシーンは臨場感がある)
(2)大西昌子の懇願
大西昌子が長崎らに懇願するとき、吹雪刑事も一緒に懇願するが
素性を問われる。
(3)110番
長崎は、大西昌子に強引に110番電話を掛けさせようとするが、杏子が
代わろうとする。
長崎のライフルを突きつけられるが、吹雪刑事は持ち前の精神力で
堂々と相対する。
(4)無謀な要求に
長崎は、大西昌子に無謀な要求をする。
吹雪杏子はガマンできず、再度 長崎に詰め寄る。
5)決死の情報伝達
長崎への挑戦の中でも 「白眉」 は、長崎らの一瞬のスキをついた電話である。
警察では、強盗や人質の情報が判らない。 そこで、
吹雪杏子は、非常な危険を冒して黒木警視正に 「強盗の情報、人質の人数、銃」 等々の
情報を早口で伝える。 非常に危険な行為だが、勇を決して彼女は実行した。
その直後に、吹雪杏子は長崎のリンチを受けてしまう。