301話 盗まれた女たち Part2

(注:ストーリーが判らないように解説していますが、ネタバレの内容は含んでいます)

<予告編のナレーション>

ハードボイルドGメン75 次の活躍は、

社長夫人は、銀行強盗に撃たれて重症。
犯人は包囲した警察を尻目に、人質に乱暴狼藉。

一方、誘拐犯人は身代金を1億円に跳ね上げたが、
誘拐犯人の罠にかかったGメンは身代金を奪われ、人質は不明。

二つの事件は、血なまぐさい狂気の土壇場に突入する。

次は、「Gメン75 300回記念
        ハードアクションシリーズ 盗まれた女たち Part2 」

     <監督:山口和彦、 脚本:佐藤純弥>

1.作品について

300回記念作の2部作 Part2
吹雪刑事の1人主役であるが、他のメンバーにも出番が用意されている。

ゲストも豪華メンバーで、小林稔侍さんがGメン屈指の凶悪犯を演じ、西田健さん、内田朝雄さんらが出演している。

2つの事件が同時に進行し、吹雪刑事は両方の事件の渦中に巻き込まれ、
Gメンたちは数ヶ所の捜査活動を、抜群のチームプレーでこなす。
全編に緊張感が溢れ、300回記念に相応しい、素晴らしい傑作である。

吹雪刑事は、強盗たちに囲まれていても気力では負けていないが、相手の3人は銃をもち、彼女は得意の合気道を使うことができず、ピンチに陥る場面も。

しかし杏子は、数多くの人質のなかでたった一人の警察官としての責任感からも、強気で立ち向かい"反撃のチャンス”を窺い続ける。

黒木警視正は準備を整えるが、その作戦には"射撃の名手"である吹雪刑事が
犯人を射殺することが含まれていた。
  −−そして、いよいよクライマックスへと近づいていく。

そのとき、誘拐犯の小山兄妹らは逃亡を図っていた。


  注) 東映ビデオは 「Gメン75の人気投票」 を、2008年6〜8月の3ヶ月間かけて行なったが、
       この2部作のPart1は、見事に " 第15位 " に選ばれた。
       数多くの作品中の15位は立派であり、傑作であるとともに人気が高いことが現れている。
            (Part2は、ベスト40には入らなかったが、近い順位だと思う)


2.Gメン史上屈指の凶悪犯 長崎

銀行強盗の三人組は、いずれも悪役の常連が演じている。
  長崎(小林稔侍)、 野口(根岸一正)、 川村(福崎和宏)
     (ドラマでは名前は殆ど出ないが、名前無しでは書きにくいので名前を使う)

長崎は凶悪犯だが、思いもよらぬ優しい言葉をする場面がある。 しかしこれは見せ掛けだけである。 このあたりの変化の呼吸は、蟹江敬三さんが演じた望月源次に通じるものがあるように思う。

思い通りにならず、苛立ちがつのる長崎に、狂気が徐々に忍び寄ってくる。

<吹雪刑事に対して>

ずっと以前に聞いたところでは、長崎を演じる小林稔侍さんが吹雪刑事に無理やり
キスをするシーンがあるが、これは小林さんのアドリブだった聞いていた。

ところが、その後に入手した台本には、その場面が具体的に書かれていて、小林さんの
アドリブではなかったことが判明した。

3.誘拐犯 小山3兄弟

誘拐犯の3兄弟は、
   小山伸夫(西田健)、小山賢二(沢田勝美)、小山悦子(星野真弓)
倒産した小山制工所の社長 小山浩一(河合弦司さん)の子供たちである。

こちらも名うての悪役である西田健さんらが演じている。
前編で次男の賢二が事故で死んでしまうが、残った2人でなおも計画を実行しようと画策する。

小山伸夫は、非情にかつ綿密に計画を推し進めていく。
弟が信頼していただけあって、兄の伸夫の計画は頭脳的だった。

4.木谷支店長・医師ら

木谷支店長(加藤和夫さん)が、長崎に懇願する場面は、支店長としての責任感からでた行動だろう。

いつもは悪役がほとんどの加藤和夫さんが、生真面目な銀行の支店長を演じるという、珍しい配役。
内田朝雄さんと同じく、記念作品だから行なわれた設定だろうか?

医師はなかなかの硬骨漢で、出来る限りの抵抗をする。

5.Gメンたちの活躍

今回の見どころは、Gメンが数ヶ所で活躍することだろう。

2つの事件の渦中にいる吹雪刑事だけでなく、黒木警視正が現場に出動し、立花警部も別行動で指揮をとリ、躍動感に溢れる活躍をする。
しかし彼らの活躍にもかかわらず、銀行犯は強硬で誘拐犯は頭脳的。
なかなか、解決の糸口が見つからない。

田口刑事が立花警部から、身代金の1億円を受け取るときは、2度目ということもあり、戦いの前の兵士のように極度に緊張していた。
それを立花警部が、笑顔で肩を叩き緊張をほぐす。 この呼吸は抜群である。  (なお田口刑事に連絡する少年は、香港カラテ3部作の張少年で出演していた)


犯人が指示する船を見つけた立花警部と所轄の刑事たちは、3艘のボートで猛然と突撃していった。
今回はヘリコプターなどを使った空からの撮影はなかったが、川を使った大掛かりなこの捜査のシーンは、この作品の印象として強く残っている。

黒木警視正の指示は適確である。狙撃手を出動させ、機動隊や所轄にも適確な指示を与え、その上で強盗たちに油断させる作戦を取る。 絶妙な作戦である。

<切り札>
黒木警視正は、狙撃手を出動させたが、3人同時に倒せないことが判った。
   (台本には、狙撃手だけでは3人を同時に倒せないことが、書かれている)
しかし、黒木警視正には切り札があった。 それは、
人質になっている、"射撃"の名手”の吹雪刑事での存在であり、彼女に強盗の射殺を指令する。

台本には、「黒木警視正は、吹雪刑事が、拳銃を持っているかどうか不安だった」 ことが書かれている。
吹雪刑事に射殺を指示したとき、杏子が了解したことで、拳銃所持を確信した。

<余談だが 泥棒が一番弱い時とは?>
  それは 「盗み終わって」 逃げようとする瞬間だという。 この時の泥棒には
  スキが出やすく精神的にも弱いと言われる。

6.吹雪刑事の活躍

300回記念の2部作を、吹雪刑事が1人主役を演じる。

吹雪杏子は、2つの事件の真っただ中に巻き込まれるという、Gメン75が始まって以来の状況におかれる。
その上に杏子は、Gメン史上屈指の凶悪犯と1人で対決するという、過酷な修羅場に遭遇することになる。

後編は、吹雪刑事の命懸けの戦いの続編である。


1)銀行のシャッター

一度開けられたシャッターが、再び閉まっていくのを見る、杏子と銀行員たちは、切なさそうに見ている。

2)人質の中での責任感

Part1でも書いたが、吹雪刑事にとって銀行の中で多くの人々が人質となっており、ただ1人の警察官であることの責任感は大きく彼女の肩にのしかかっていたと思う。

3)抵抗

相手が銃をもっている為、正面からの対決は出来ないが、精一杯の抵抗を試みる。
  1)杏子は支店長のために水を取りに行く。
     しかし、長崎らに強気の吹雪刑事にはヒヤヒヤしてしまう。

  2)スキを見て、杏子は自分のバッグを拾い上げようとする。

  3)危険を冒して拳銃を拾い上げる。

  4)杏子は、黒木警視正へ銀行内の切迫した状況を伝え、黒木警視正は
    それによって作戦の実行を決断をした。

4)対抗手段

(吹雪刑事の判断)
相手が3人で全員が銃をもっているから、3人同時に倒さなければならない。
しかし合気道では、同時に倒すのは無理。
そこで杏子は、もう一つの特技である "射撃" で対抗しようとして、拳銃を入手しようと試みる。

5)凶悪犯 長崎との対決

長崎に対し、吹雪刑事はギリギリの際どい挑戦をする。生死を賭けた対決といっても過言ではない。
吹雪刑事は、後編でも殴られたりダメージを受けるが立ち上がる。
体力的にも精神的にもタフな杏子ならではだが、吹雪杏子が大ピンチに陥るシーンもある。

ラストに近い頃、長崎が吹雪刑事に受話器を持たせて、ライフルを向けるシーンがあるが、さすが気丈の吹雪杏子もこの時は相当な緊張感を漂わせている。

しかし杏子は、なおも反撃のチャンスを窺い続ける。

6)反撃

ラストの射撃シーンも、Gメン史上に残る素晴らしい映像である。

黒木警視正が吹雪刑事の能力に寄せる信頼は、かつて世界一流のテロリスト影山の襲撃に備えるために、SP隊員だった吹雪杏子に、応援を頼んだ時からのものである。

吹雪杏子は人質の状態で射殺指令を受けて、大きな緊張感を強いられるが、彼女は 「必殺」 の決意を胸に秘めて、その"一瞬"をひたすら待つ。

ひそかに拳銃を抜いて準備した吹雪刑事は、看護婦の影に隠れ力強い
眼光を爛々と
光らせながら、犯人側からは判りにくい位置を確保している。

黒木警視正の指示は、「2人は射殺するから、もう1人は君が撃て」
つまり杏子は狙撃手が撃たない、最後の1人を射殺しなければならない。
難しいが、電話ではこれ以上の長い言葉は無理で、吹雪刑事の判断にゆだねられた。

息が詰まる緊張が続いた後、射撃を受けた2人を確認した吹雪刑事は発砲し、最後の1人を射殺している。
映像では、劇的効果を上げるためにほぼ同時に発砲したように見えるが、吹雪刑事は狙撃手の2〜3秒後に発砲しているはずである。

7)再会

黒木警視正との再会は、感動的だった。
吹雪杏子の瞳が、潤んでいるようにさえも見えた。

(香港カラテの3部作に続き、300回記念の2部作でも、吹雪刑事が1人主役を演じさせて頂いた
 スタッフには感謝したい)






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