考証学91〜95

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 初代・一文字隼人=佐々木剛さん御出演の『改造人間哀歌2〜星空の約
束』の公演が迫ってきた。
これは言うまでもなく昨年大好評だった『改造人間哀歌』の続編だが、38年
経って尚、佐々木さんが『仮面ライダー』を大切に思ってくださっている証と
してファンには喜ばしい限りだろう。

諸般の事情により直接的に一文字隼人のその後のストーリーを描く事は困
難であるにせよ、観劇させて頂く者としては正しくそのつもりなのである。今
から来月の公演が待ち遠しい。
そんな我々ファンが初めて2号ライダー=一文字隼人を目にしたのは197
1年6月26日放映の第13話終了後の予告編だった。

次週から始まる『仮面ライダー』新シリーズ。装いも新たに、興味抜群。スリ
ル、アクション。
次週、『仮面ライダー』、「魔人サボテグロンの襲来」に御期待下さい。

中江真司氏の軽快なナレーションにそう言われても、正直、9歳だった私に
はピンと来なかった。
しかし、翌週の7月3日、何より驚かされたのは主題歌の歌声が変わったの
である。
旧1号編の藤岡弘、氏の生真面目な歌い方と比較して、藤浩一(子門真
人)氏のヴォーカルは軽妙であり何処となく変だった。
しかし、その歌声は耳に馴染むにつれ忘れ難い存在となった。

『仮面ライダー』が2号編となって最大のインパクトは、私には子門氏の歌う
レッツゴーライダーキックだったのである。



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 『仮面ライダー』旧2号編のクランク・インに伴って、当然ながら新たに加わ
ったレギュラー陣を含むキャストの特写が行なわれいる。

正確な場所の特定はできていないが生田スタジオの近辺だろう、何処かア
パートの前の空き地に改造サイクロンとホンダのノーマルなオートバイを用
意して、立花レーシングクラブのメンバーらしい演出で少なくとも7枚のスチ
ールが撮影されている。

参加メンバーは
滝和也(千葉治郎)、野原ひろみ(島田陽子)、マリ(山本リンダ)、ユリ(沖わ
か子)、ミチ(中島かつみ)、以上のメンバーであった。

ところで、第14話から設定された「立花レーシングクラブ」であるが、劇中に
登場する藤兵衛の店舗の名称は「立花オートコーナー」であり、「立花レー
シングクラブ」はそこを拠点に結成された二輪のレーサーの育成組織の名
称である。
店内は生田スタジオのセットだが、外観として使用された建物は実際には
バイクショップではなく、自動車用品を扱う店とハンバーガー・ショップが併
設されていた。

こちらも残念ながら、正確な場所はわかっていない。


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 『仮面ライダー』旧2号編の開巻エピソードであるサボテグロンの前後編に
関しては、講談社が不参加だった事もあって残されている本編スチールは
毎日放送による番宣スチールが唯一である。

それにしても20枚余りを確認しているに過ぎないが、カメラマンの被写体に
対してのスタンスの違いが明確に現れていて興味深い。

立花オートコーナー店内での史郎・ひろみ・ミチ、同じく店内でのユリとミチ、
一文字隼人をマンションに訪問したマリ、ショッカーのアジトに単身潜入しよ
うとする滝和也、ショッカー・アジトの入口を見張る戦闘員、こうしたシーンの
スチールは明らかに児童誌の素材としては適当ではなく、大島カメラマンな
らばおそらく省いていたシーンだろう。

番宣カメラマンならではの貴重なスチールである。
もちろん、仮面ライダーと怪人のスチールもきっちりと押さえられていて、伊
豆サボテン公演の温室内での最終決戦の一連が少なくとも6枚残されてい
る。
サボテグロンの単体スチールに関しては、生田スタジオの壁を背にした特
写スチールや合同撮影会でのスチール、さらには劇場版『仮面ライダー対
ショッカー』撮影時のものの方が露出が多いが、伊豆で撮影されたオリジナ
ルのサボテグロンと違って左右の肩にある葉っぱのような意匠がなくなって
しまっている。

やはり怪人は本編撮影時のオリジナルの状態が一番である。



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 サボテグロン編につづくキノコモルグの前後編でも毎日放送による番宣ス
チールが残されている。
吉見百穴での本編スチールが少なくとも11枚あるが、ライダーファイトの特
写の一連を演じているのは岡田勝氏だろう。

佐野氏演じるキノコモルグと長剣を交えているスチールの2号ライダーも右
手に剣を持っているので佐々木氏ではなく岡田氏である(佐々木ライダー
は左手に持っている)。

ラストシーンのサイクロン号で去っていく仮面ライダーのスチールもあるが、
こちらは大橋ライダー。

それを見送る立花レーシングクラブ一同(藤兵衛、滝、ひろみ、マリ、ユリ、ミ
チ)のスチールにはバリエーションが多い。

さらに、フェンシングの剣を構えたマリ他のライダーガールズの特写もある
が、不思議と一文字隼人が映っているものが見当たらない。

やはり、スチールを撮影している暇もないほど過密なスケジュールだったの
だろうか?



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 キノコモルグの前後編、即ち制作第16・17話は前後編が続くからとの理
由によって放映第24・25話へと先送りとなった、という解説は疑わしい。 
何故なら放映第16・17話もピラザウルスの前後編だからである。
実際はMBSから一部内容にクレームがついて撮り直しが行なわれたりと
問題作だったからのようである。

しかし、キノコモルグの前後編はいま見てもとても面白い。

制作第18・19話に登場するピラザウルスとは劇中の台詞に従う限り改造
手術の素材となった架空のトカゲ(?)の名称であり、改造人間の方は「人
間ピラザウルス」と呼ぶ方が正しいと思われるのだが、現在では(放映当時
も)どちらもピラザウルスと呼称されている。
ピラザウルスの前後編に関しては最終決戦のリング上での死闘が撮影さ
れた生田スタジオのセットでの本編スチールが毎日放送によって残されて
いるが、それとは別にトカゲのピラザウルスを記録した貴重なスチールもあ
る。

こちらはエキス・プロダクションによるメイキング・スチールである。
エキスプロには造形物の製作過程を記録した興味深いスチールが多数残
されているのだが、残念ながら諸般の事情により一部を除いて公開をされ
ていない。

ウルトラマンの怪獣を造形していた高山良策氏のアトリエ・メイのように、一
般のファンにも公開される事を期待したい。




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