考証学追記31〜33

考証学追記 31



 1976年7月にTBS系で放映された『Gメン'75』の第59・60・61話は沖
縄三部作と呼ばれ、3週に渡った連続ストーリーの傑作として知られてい
る。
当時、中学生だった私もオン・エアーを見た記憶があるが、その沖縄三部作
にアケミという役名で出演なさっていた森川千恵子さんが、『仮面ライダー』
に緑川ルリ子として御出演なさっていた真樹千恵子さんであることには気が
ついていなかった。
そんな『Gメン'75』にはルリ子さんが御出演なっているエピソードが他にも3
本あるのだが、何といってもこの沖縄三部作は出色の出来栄えなのであ
る。
BOXセットではあるがDVDも発売されているので、ルリ子さんのファンなら
ば是非とも御覧になって頂きたい。。

三部作の第一部である第59話「東京−沖縄 縦断捜査網」(1976年7月3
日放映)では冒頭、アメリカ占領下の沖縄でルリ子さんが演じる女子高校生
と友人の二人の娘が海辺で米兵にレイプされるというショッキングなシーン
から始まる。
しかし、二人に暴行したマーチン軍曹とリチャード一等兵は軍事法廷におい
て無罪。
その判決に唇を噛み締めて涙するアケミ。
二人の米兵は除隊となり本国へ帰還した。
それから4年後、沖縄は日本に復帰していた(1972年5月15日に復帰)。
普天間基地からの武器の横流しにも関与していたリチャードが来日する
が、東京で何者かに殺された。
容疑者は4年前、沖縄でアケミと共に暴行された被害者の弟と兄。
4年前の事件の後、兄は上京して警官になっていた。
Gメンに追われた弟は過ってトラックに撥ねられて死亡。
兄は弟の遺骨を持って沖縄へと逃走した。Gメンの響圭子刑事(藤田美保
子)は捜査のため沖縄へ飛ぶが、地元の刑事(実はアケミの兄)の協力を
得られずに捜査は難航する。
そして、響刑事が出会ったアケミは外人バーのホステスとして米兵の相手を
していた。

響刑事「あなたは4年前の被害者でありながら、なぜ?」

アケミ「媚を売ってるかって言いたいのね。ここは狭い町よ、4年前のことは
みんな知ってるわ。あたしが働ける場所があるのなら教えてもらいたいわ
ね、刑事さん」

警視庁の女刑事を相手に蓮っ葉な口を利くアケミ。
ルリ子さんには似合わない役柄だが、演技は迫真で心を打つ。



考証学追記 32



 ハードボイルドGメン'75、熱い心を強い意志でつつんだ人間たち。
沖縄三部作の第二部は第60話「暑い南の島 沖縄の幽霊」(1972年7月
10日放映)。

東京でリチャードを殺したのは弟のケンではなく、兄のテツオだった。
テツオはリチャードとマーチンによる軍用拳銃密売のもう一人の共犯者・具
志堅も殺そうとしたが殺害には至らなかった。
響刑事はケンの遺骨を持って沖縄へ帰ってきたテツオを逮捕しようとする
が、アケミの兄の妨害によって取り逃がす。
テツオは恋人だったアケミと共に姿を暗ました。
二人は猥雑な街の裏路地のバーの2階にある部屋で密会をする。
かつては結婚の約束をしていた二人。
抱擁して唇を重ねるが、しかし、アケミはもう昔には戻れないとテツオに言っ
た。

「あたし、乱暴されたときに、やつらに悪い病気をうつされたの。だから、あ
たしとあそんだ兵隊たちはみんな、・・・・それだけが、あたしにできる、たった
ひとつの復讐なの」

4年前、アケミと一緒にいて暴行されたリエはテツオの妹だった。
リエは軍事法廷で無罪判決が出た翌日に断崖から身を投げて自殺。
姉のミユキは子供の頃に目の前で両親を米兵に殺害され、そのショックで
記憶を失っていた。
兄弟姉妹は祖母の手によって育てられたのだった。
テツオの実家を張り込んでいた響刑事はアケミを連れて帰ってきたテツオ
を逮捕しようとするが、その際に過ってケンの遺骨が入っている骨壷を蹴り
倒してしまう。
響刑事は地面に跪き、散乱した孫の遺骨を拾い集める祖母に謝罪をする
のだが、祖母は拒絶した。
響刑事は逮捕したテツオを連行する最中、草むらから跳び出してきたハブ
に腕を咬まれる。

つづく。


考証学追記 33



 沖縄三部作の完結編は第61話「沖縄に響く痛恨の銃声」(1972年7月
17日放映)。
テツオに銃撃された具志堅は東京でマーチンと会っていた。
Gメンは武器密輸の捜査のため二人を泳がせる。
一方で、ハブに咬まれた響刑事はテツオたちに介抱されて一命を取り留め
た。
そして、ミユキも記憶を取り戻す。
テツオは密輸されようとしている軍用拳銃と手榴弾の隠し場所に心当たり
があると言い、海岸の洞窟へと響刑事を案内した。
そこへマーチンと具志堅がやって来る。
Gメンの小田切警視とアケミの兄も駆け付けるが、テツオが殺されマーチン
は逃げた。
マーチンは米軍基地の金網のフェンスの向こうへと逃げ込んだ。
アケミの兄はマーチンを狙って拳銃を構えるが、響刑事の目前で警備兵の
自動小銃に射たれ死亡する。
為す術のないGメンたちだが、基地の張り込みを続けマーチンが現れるの
を待った。
アケミはミユキと復讐を誓い、祖母は断崖の上で手首を鎌で掻き切って自
殺した。
やがてマーチンが基地の裏口から姿を見せる。
待ち伏せていたアケミとミユキはマーチンを拳銃で撃とうとするが、逆にマー
チンに撃たれ殺される。逃走するマーチンを追跡するGメンたち。
そして追い詰めた海辺の浜で、響刑事の銃口が火を吹いた。

戦中戦後の沖縄の悲劇を凝縮したような話だが、重いテーマを正面から受
けとめて演技する主人公・響圭子刑事役の藤田美保子さんが素晴らしい。
ストリングスの伴奏も琴線に触れるのだが、作曲は仮面ライダーでもお馴
染みの菊池俊輔氏である。

ルリ子さんは今回は役柄上、笑顔を拝見することがほとんどないが、それだ
けに真剣に役作りに取り組んでいらっしゃる。

「可哀相な役でしたね」と伺うと、「泣くのは上手だったのよ」と笑って仰って
いた。





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