新・仮面ライダー考証学 13

竹本弘一監督による『仮面ライダー』のTV版・第1話「怪奇蜘蛛男」は、しば
しば石ノ森章太郎氏による漫画版『仮面ライダー』の第1話「怪奇くも男」を
忠実に映像化した作品と見なされる。
例えば、『よみがえるヒーロー! 仮面ライダー大研究』(TARKUS編/二見
書房刊)によると、「(前略)そうして撮られた本エピソードは、まさに石ノ森章
太郎の描いた原作コミックをそのまま映像化したかのように仕上がってい
る。石森漫画でおなじみの脚のあいだからのナメ構図はもちろんのこと、冒
頭のバイクの疾走、天地反転を繰り返すカメラワーク・・・・。」果たして本当
にそうなのだろうか?
私は寧ろその逆であり、石ノ森氏が竹本氏の16mmの映像を見た後に、
原作とされる漫画を描いたのではなかろうか、と考えている。

石ノ森氏の『仮面ライダー』か新連載として週刊ぼくらマガジンに掲載された
のは同誌の1971年4月12日号(第16号)である。
もちろん実際の発売はこの日付よりも前だろうが、仮に1週間前の4月5日
としてもTVシリーズの放送開始の方が先となる。
しかし、新連載の見開きの扉絵には「テレビ化決定」との記載があるので、
もしかしたらテレビ版が始まった4月3日に先行して発売されていたのかも
しれない。
いずれにせよ、TV版と漫画版はほぼ同時期にそれぞれの媒体においてス
タートしたのである。
この両者のうち、石ノ森氏による漫画版に関しては連載第1回分の原稿の
執筆開始時期は不明だが、TV版は一応、同年2月7日のクランク・インであ
るとされている。
つまり、オン・エアーの約2ヵ月前という事になる。
それよりも尚先に石ノ森氏の漫画版が仕上がっており、さらに竹本監督が
事前にそれを見ていた上でフィルムに再現した、などという事が有り得るだ
ろうか?また、そうしたスケジュール的な側面からだけでなく作品自体の比
較からでも、そうではなかったと推察できる。

手掛かりは旧サイクロン号である。
石ノ森氏の漫画版に登場する旧サイクロン号は、テレビ版の第1話撮影時
期に偶発したトラブルの結果としてあった第2NGタイプの形状で描かれて
いる。
これがTV版に先行して描かれていたならば当然、第1NGタイプとしてあっ
たはずであり、つまりTV版の方がが漫画版よりも先行してあったと言えるだ
ろう。

私はその竹本監督のTV版第1話に舌を巻く。
再度、検証を試みたい。
画像は石ノ森氏の漫画版第1話に初めて登場した旧サイクロン号。



わざわざカウル正面のスリット下部を切除した第2NGタイプとして描かれて
いる。
おそらく生田スタジオ入口のコンクリートの防護壁前で撮影したスチールを
元に描かれたからだと考えられる。

つまり、原稿の執筆時期は少なくともTV版第1話の撮影時期よりも後であ
る。

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