第1話制作時期の終盤に生田スタジオ第2ステージで行なわれた講談社・
大島カメラマンによる特写スチールは、藤岡弘、氏が演じる仮面ライダーと 変形前のサイクロン号、さらには岡田勝氏の蜘蛛男を6×6のブローニーで 多数記録している。
いずれも背景は樹木を描いた回転バックばかりだが、被写体の左側には
何か大きな箱のような物体が置かれているのにお気づきの方も多いだろ う。
書籍等に掲載される場合にはトリミングされてしまう事が多いのだが、中身
は空洞であるこの木製の箱の表は白とブルーに塗り分けられている(画像 1)。この箱は一体何なのか?
『仮面ライダー』のクランク・インが迫っていた1971年1月〜2月初旬の時
期、生田スタジオでは三上陸男氏を中心としたエキス・プロダクションのスタ ッフによってセットの設営が急がれていた。スタジオ敷地の奥に当たる第1 ステージにはパーマネントのセットとしてショッカー・アジトとアミーゴ店内 が、手前の第2ステージでは変身シーンの背景となる回転バックの建て込 みが行なわれた。ショッカー・アジトは三上氏によって、アミーゴ店内は矢野 友久氏によって作業が行なわれたそうなのだが、回転バックに関しては担 当者が誰であったのか資料がない。
さらにはホリゾントが設備されてあったのも第2ステージだった。
さて、問題の箱は何なのか?
第1話の撮影では、実はもうひとつ重要な場面のセットが組まれていた。
言うまでもなく、それは戸浦埠頭50号倉庫の内部としてのセットである。
倉庫の外部でのシーンについては横浜港の赤レンガ倉庫においてロケー
ションが行なわれているのだが、内部のシーンに関しては生田のセットで撮 影が行なわれていた。
白とブルーで塗り分けられた木箱の正体は、その時に使用された大道具の
ひとつだったのである。
(画像1)のスチールにおいて箱の部分を拡大してみると「KEEP DRY」の
赤い文字が読み取れる(画像2)。
この文字が手掛かりである。本編の映像においては、緑川博士を詰問する
本郷猛の背後の暗がりに横向きにして置いてあるのを確認することが出来 る。
おそらく、この倉庫内のセットも、回転バックがあったのと同じ第2ステージ
に設営してあったのだろう。
撮影が終了して直ぐにセットは壊され、たまたま大道具の箱の一個が回転
バックの傍らに残されていたのである。
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