新・仮面ライダー考証学 17


現在では観光地として整備されてしまった横浜港の赤レンガ倉庫だが、19
71年当時は港湾施設のひとつとして実用される本来の意味での倉庫だっ
た。私は80年代のあの付近をよく知っているが、『仮面ライダー』撮影当時
と比較して変わったのは見るに耐えない幼稚な落書きが増えた事くらいだ
ったろうか。

第1話の本編の映像を確認すると、建物や登場人物の影の長さからロケが
行なわれたのは快晴の日の午前中だった事がわかる。
出演者は藤岡弘、氏、岡田勝氏、真樹千恵子さんの3名であった。
ところで『仮面ライダー=本郷猛』(扶桑社刊)において、堤哲哉氏はこの赤
レンガ倉庫のロケを2月10日の午後と推定しているが、私は違うと考えて
いる。
映像に記録された陽射しと影は明らかに午前中のそれとしてあるし、何より
平日の日中ならば港湾作業員がいて然るべきである(10日は水曜日)。そ
れならば、いつなのか? 
クランク・インの7日(日)という事は有り得ない(蜘蛛男の納品前である)。
翌週の14日(日)は? 14日は撮影は休みとなり、赤坂のスタジオで藤岡
弘、氏によって主題歌のレコーディングが行なわれていた筈である。
そこで考えられるのは2月11日(木)の建国記念日である。
港湾関連は日曜祝日はほぼ確実に休みとなり、80年代の赤レンガ倉庫で
も許可なく自由に敷地内に侵入してスチールやムービーの撮影をやってい
た。
それならば港湾関係者が誰ひとり居なくても不思議ではない。
さらに1971年2月11日の横浜港付近の天候が快晴だったと確認できれ
ば傍証となるだろう。いずれ調べてみたい。
そういえば、私は以前にも小河内ダムでのロケや生田スタジオ外でのスチ
ール撮影が行なわれた日付を特定できないかと思い、その手掛かりが得ら
れないか気象庁に問い合わせてみた事がある。
残念ながら川崎市には気象庁の観測所が存在せず、奥多摩についても観
測態勢としてアメダス化される以前の事であるためピン・スポットでの気象
情報は分からないとの事だった。
しかし横浜ならば気象庁の観測所もあるので可能だろう。



添付画像は赤レンガ倉庫でのロケの際に撮影された蜘蛛男のスチールで
ある(撮影者不詳。この時の蜘蛛男の単体スチールは他にも2カットある)。
影が後ろにくっきりと長く伸びている。背後には貨物列車の車輌が見える
が、当時は国鉄からの引込線がこの辺りまで延びていた。
本編の映像においても、本郷猛が変形前のサイクロン号でトラックを追跡す
るシーンでこの貨物車輌を確認する事ができる。

単体スチールで蜘蛛男が立っているその場所を、サイクロン号が駆け抜け
たのである。

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