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前回のエキス・プロダクションのメモに記されてあった「オートバイ」即ち、サ
イクロン号について考えてみたい。
まず、メモでは3行の記述があり、それぞれ(完成品)(ふつうの型)(変化を
見せる)と注釈が付いている。
(完成品)とは本郷猛が仮面ライダーに変身後に使用するフルカウルの旧
サイクロン号、(ふつうの型)とは本郷猛が変身前に使用しているカウルの ないサイクロン号である。
そして(変化を見せる)だが、日付の右に「中を変化させる」と加筆されてい
るのが読み取れる。
「中」とは本郷猛が日常使用しているカウルのない状態を意味し、つまりフ
ルカウルのサイクロン号の「中」にカウルのない状態のオートバイが入って いるという設定である。
実際にはそうではなくベース車も異なるが、「変化」の意味としてはそのよう
に考えられていた。 ![]()
その「変化」のプロセスについて変形前のサイクロン号のデザイン画を見て
みると、後から青色の線で具体的な指示が描かれている(画像1)。
現在ならばCGによって容易に処理される筈のモノが、39年前の当時には
実際
に造られていたのである。
第1話における変身シーンは、横浜・赤レンガ倉庫でのトラック追跡シーン
の直後に訪れる。
言うまでもないが、横浜市中区の繁華街から奥多摩の小河内ダムまで、本
郷猛は仮面ライダーになったままサイクロン号でトラックを追いかけたの か?
その間ずっと蜘蛛男と緑川ルリ子はトラック荷台の箱の天井に乗っかった
ままだったのか?
などと余計な想像を巡らしてはいけない。
横浜から奥多摩までひとっ飛び、『仮面ライダー』とは、そういう番組なので
ある。
第1話「怪奇蜘蛛男」は『仮面ライダー』のパイロット・フィルムを兼て竹本弘
一氏によって監督されている。
しかし、本編に編集されたフィルムのうち、変身シーンのバンク・フィルムと
東京湾第13号埋立地で撮影されたマフラーに花火を仕込んだサイクロン 号の1カットは折田至監督の演出である(正式なクレジットこそ無いが、東 映の社員であった折田氏は平山プロデューサーから総合監督の任を求め られていた)。
つまり、サイクロン号の変形に関する一連のディレクションは折田監督の指
示によるものだったのである。
それでは完成フィルムの変身シーンを検証し、この(変化を見せる)シーン
のためにエキス・プロダクションが何を造ったのか、確認をしてみたい。 ![]()
まず、変身を起動させるレバー・スイッチは当初、スクラップ同然(と言うか
正真正銘のスクラップ)のホンダの車体を使ったもの(画像2)が用意されて いたのだがNGとなり、新たに造り直されている(画像3)。 ![]()
この時のNG版に関しては、そのメイキング・ショットを含めて講談社による
スチールが残されている。つまり撮影が行なわれた時期として、回転バック の特写よりも後という事になる(講談社・大島カメラマンによる仮面ライダー のスチール撮影は回転バックを背景とした特写が最初)。 ![]()
次には(画像4)と(画像5)にある、変形途中のカウルを表現した白色の板
である。これらは車体の後方からスライドして来るのだが、画面で見て表側 となる車体左側の部分にしか造られていない。 ![]()
これ以外のカットについては、サイクロン号の実車をスタジオに持ち込んで
撮影が行なわれているように見受けられる。
本当に、そうか?
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