新・仮面ライダー考証学 24

『仮面ライダー』の第1クールにある13本のエピソードだけを検証してみて
も、本郷猛から仮面ライダーへの変身を表現する方法には、それを担当し
た折田至監督による熱心な試行錯誤が伺える。

   画像1

回転バックを背景としたフィルムはバンク化され繰り返し編集されたが、毎
回のように一部は新撮のカットと差し替えられて変身に変化を与えた。
放映第8話となった「怪異!蜂女」は制作ナンバーとしては第5話であり、放
映第5話である「怪人かまきり男」と同時進行の2本撮りだが(北村監督に
よる)、その中の変身シーンに関するフィルムは折田監督によって演出され
たものである。

   画像2

その制作第5話のBパートで、蜂女との最終決戦に三栄土木へと赴く本郷
猛がバイクを使って変身するシーンでは、第1話からのものとまったく異なる
新しいフィルムが披露されている。

   画像3

これまでのように回転バックを背景とするのではなく、暗幕を背景にしてサ
イクロン号が「ふつうの型」から「完成品」に至る過程を4段階に分けて見せ
るのだ(画像1〜4)。  

その第1段階は当然、本郷猛が普段から使用しているサイクロン号であり、
第2、第3の過程を経てフルカウルのサイクロン号へと変化する。
最近になるまで、私はこの第4段階のサイクロン号はその他の場面でも登
場するいつものサイクロン号と同一のものだと思い込んでいたのだが、誤り
だった。

    画像4

サイクロン号は実はもう1台用意されていたのである! 
ただし、この2台目のサイクロン号は変身シーンの撮影の為だけに用意さ
れたものであり、正確に言うならばカウルやテールのパーツとして用意され
ていただけである。
つまり、実際に仮面ライダーが乗車して走行していたサイクロン号がもう1
台あった訳ではない。
この「変化を見せる」ためだけに造られたフルカウルと本来の走行可能なサ
イクロン号のフルカウルを比較してみると、左側面において赤い意匠の形
状が描かれてある位置に明確な差異がある。
さらに立花レーシングクラブのエンブレムが描かれている位置と、カウルを
車体に取り付ける為のビスの位置も両者では異なっている。
つまり、ふたつが別物である事は明白である訳だ。

さらに第1段階の「ふううの型」のサイクロン号も同様に別物である。
問題はエキス・プロダクションがこれらをいつ製作したかだが、私は第1話、
さらに第2話の製作スケジュールのメモに記載があった「オートバイ(変化を
見せる)」と「単車変化」が既にこれであったろうと考える。

   画像5

するとこれまで第1話の変身シーンのバンク・フィルムに1カット登場する第
1NGタイプ(画像5)において、カウルのライト廻りが未完成(隙間をパテで
補修していない)だった謎もクリアとなる。つまり、あの変身シーンのフルカ
ウルのサイクロン号は変身シーンの撮影用にパーツとして用意されていた
ものであり、小河内ダムの駐車場での三面スチールや東京湾の第13号埋
立地を走行したサイクロン号とは別物であったのである。

言い換えれば、オープニングの撮影でカウル正面のスリット下部が破損し
たのを修理した状態でもない。
カウル正面のスリットは、もともとあのように造られていたのである。
その後、サイクロン号が第2NGタイプを経てカウル下部を全面的に切除し
た形での完成型となったのに従って、変身シーンに使用する為のカウルも
同様の改修を受けたのだろう。

「謎は解けたよ、ワトソン君!」

私はそう言いたい気分だ。



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