新・仮面ライダー考証学 25

ふたつあった旧1号のFRP製のマスクについて、最初に造られたものをAタ
イプ、もうひとつをBタイプと仮称する。
そのうちBタイプが初めて本編に登場したのは第2話のAパートで本郷猛が
マンションから落下しながら変身するシーンだが、これは確実にあとから編
集で差し替えられたものである。
何の為に?
 Cアイを赤く発行させる為にである。

   画像1

私の友人・知人には仮面ライダーの熱心なファンが何人もいるが、Aタイプ
画像1)よりもBタイプ(画像2)のマスクの方が好きだとか、カッコイイとか、
そうした意見を伺ったことは一度もない。

   画像2

そもそもBタイプのマスクについては、これまで旧1号のファンからも余り関
心を払われて来なかった。
それならば尚更のこと、ここで考証をしてみたい。

第2話の次にBタイプ・マスクが登場するのは制作第3話「人喰いサラセニ
アン」のAパートでの変身シーンで、本郷猛の真正面の顔が仮面ライダーの
マスクに変わる、そのアップのマスクがBタイプである(画像3)。

   画像3

しかし、これについても第2話同様にあとからの編集であると思われ、制作
第2・3話が撮影されていた1971年2月後半の時期にBタイプのマスクが
存在していたとは思われない(エキス・プロダクションのメモにも、第2・3話
に属する造形物として新たに仮面ライダーのマスクを造るという記載はな
い)。
それではBタイプのマスクが造られた時期はいつなのか? 
その前に、AタイプとBタイプのふたつのマスクの差異について述べておこ
う。
もちろん、ふたつのマスクは共に同一の3分割の石膏型から抜かれて造ら
れたものである。
しかし、当時は現在の平成ライダーのマスクの製作プロセスとは異なって、
水粘土によって彫塑された一次原型から石膏型を作ってしまい、FRPで型
抜きしたあとでマスク表面の仕上げ処理(パテ埋め、磨き、等)が行なわれ
ていた。
従って同じ型から抜かれたにも拘らず、担当者の仕上げ方次第で微妙な違
いが生じてしまうのである。さらにマスクの形状だけでなく塗装に使用され
ている塗料のブレンドが明らかに異なっている。
どちらかと言えばAタイプ・マスクの色よりも桜島1号のマスクにより近いよう
な(正確には桜島1号のマスクがBタイプ・マスクの色に似せてあるのだが)
マスク本体の色は黒っぽいままでパールでコートしてあるようには見えない
し、クラッシャー上部の色は緑色に近い。

CアイはAタイプ同様に透明ポリそのままの色で裏側から赤色の反射板が
当てられているのだが、エネルギー充填を表現するためにCアイの表から
クリアーレッドのカヴァーを貼りつけ電飾される場合が多く見られる(画像
)。

画像4

また、Oシグナルとしてのパイロット・ランプを取り付ける際に生じたと思わ
れる亀裂がOシグナルの直下にあって目立つ。
Cアイ下の覗き穴に裏から当てた塩ビ板を固定するビスの位置と数が異な
る(Bタイプは左右各5点)。
マスク正面の中央の鼻筋部分のパーティング・ラインの処理が完全でな
い。
後頭部に描かれてある三角形の頂点がセンターからずれていない、等々。
A・Bを見分ける事はDVDで静止画を見れば容易に判別が可能なのだ。
それでは実際にBタイプのマスクが完成して撮影に投入された時期はいつ
なのか?
本編を順に確認していくと、ひとつのシーンでAとBふたつのマスクが同時
に使い分けられている撮影が一度だけあった。
それは制作第6話「怪人かまきり男」のBパートにおけるショッカー・アジト内
での最終決戦である。
さらに興味深いのは、このときラテックス製のマスクについてもA(ピンク
目)・B(赤目)ふたつが使用されている事だ。
つまり、かまきり男のアジトでの撮影では都合4個のマスクが使い分けられ
ている。

折田監督によるバンク・フィルムの撮影後、FRPとラテックス共にBタイプが
現場に投入されたのはこの時だと、私はそう考えている(ラテックス製のBタ
イプ・マスクが登場するのはこのときが初めてである)。


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