新・仮面ライダー考証学 29

 『仮面ライダー』第1話のオープニングは折田至監督によって演出され、晴
海の埋立地でロケが行なわれ、その際にサイクロン号のカウル正面のスリ
ット下部がタイヤと接触して破損した、という事実については今更言うまでも
ないだろう。

1971年2月中旬のいずれかの快晴の日に、東京湾岸の第13号埋立地
へ折田監督、平山亨プロデューサー、室町健三氏、他の面々がサイクロン
号を運び込み、番組にとって重要なオープニング・フィルムの撮影が行なわ
れたのである。
ところが、完成した映像を見る限り、晴海で撮影されたフィルムとしては冒頭
のメイン・タイトルがクレジットされる直前のたった1カット(画像1)だけしか
使用されていない(だだし、本編において蜘蛛男のトラックを追跡するシー
ンとしてマフラーに花火を装着しての走行シーンがもう1カット撮影されては
いるのだが)。これはいったいどういう事なのだろうか?

   画像1

私は以前、大野剣友会の岡田勝氏から興味深いお話をうかがった事があ
る。その時、サイクロン号のマフラーの花火から草むらの枯草に火が燃え
移ったのに気がついて、慌てて皆で消したのだと(画像2)。
つまり、室町健三氏だけでなく大野剣友会のメンバーも晴海へ同行してい
た事になる。
怪人や戦闘員の出演シーンがある訳でもないのに、何故? 

   画像2

ここで思い当たるのが、同じく折田監督によって演出された第1クールのエ
ンディングである。
それは制作第3話の本編からの流用フィルムを除外すると、お台場での仮
面ライダー(中村文弥氏)対サラセニアンに所属する戦闘員とのアクション・
シーンとなっている。
もしかしたら、当初はオープニングのサイクロン号の走行シーンと同日に、
このエンディングのフィルムの撮影も予定されていたのかもしれない。
それがサイクロン号のカウルの破損というアクシデントによって急遽取り止
めとなった可能性はある。

   画像3

いずれにせよ、完成されたオープニング・フィルムには第1NGタイプの走行
シーンが1カットしか編集されず、それ以外は、よみうりモトクロス場を疾走
する変形前のサイクロン号(画像3 仮面ライダーを演ずるは室町健三氏。
スタントに支障があるのか、変身ベルトが省かれている)と、生田スタジオ
第2ステージの回転バックを背景とした変身シーンのバンク・フィルム、そし
て各話毎のアバンタイトルとしての「ショッカー恐怖シーン」となっている。

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