新・仮面ライダー考証学 47

 『仮面ライダー』の企画が成立する過程での企画書の変遷については旧
考証学でも簡単に触れておいたが、実際のところ、『仮面ライダー』の企画
段階における様々なアイディアの発展や中断、跳躍や変化については必ず
しも理解し易いとは言い難い部分がある。 
取り分け、東映内部の企画書と毎日放送へ提出された企画書、さらに毎日
放送において作成し直された企画書、そこに石ノ森章太郎氏によるキャラク
ター・デザインの変遷か加わって来ると整理するだけでも難しい。
差し当たって、東映サイドの企画書(平山亨プロデューサーによる)である
『マスクマンK』→『仮面天使(マスクエンジェル)』→『クロスファイヤー』の3
冊の企画書はタウンムック増刊の『仮面ライダー』(徳間書店刊)にその全
文が掲載をされているので参照して頂くとして、ここでは第4の企画書であ
る『テレビ番組企画書・仮面ライダー』を検証してみたい。。


テレビ番組企画書 仮面ライダー

〈タイトル〉 仮面ライダー 「十字仮面」
〈種別〉 特撮アクション連続テレビ映画 カラー 30分 26本以上
〈時間帯〉 午後7時〜8時
〈視聴対象〉 小学生、中学生を中心に家族一般
〈制作〉 東映株式会社

企画意図

猛烈からビューティフルへ−−−
71年代は人間回復の年代であります。
急速に、あまりにも急速に押し進められた近代文明の発展はたしかに見せ
かけの繁栄を作り上げました。
しかしそれははたして人間自身のためになっているでしょうか。
加速度的にスピードを増した現代社会は人間自身に人間以上の能力を要
求しています。
寝食を切りつめて作業の成果を上げたり同時に二つ以上の作業の出来る
工夫をしたり、人間以上に働き得る機械を想定してその機械と競争すること
を要求したりされて人間本来の姿を失いつつあるのです。
ソロバンの名手は電算機と競争して勝たねば自分の存在価値を失うので、
必死にならねばなりません。
これはまさに人間のロボット化であります。
人間のために物を生産するものが人間の生存を危うくする公害をひきおこ
します。
その公害の中で人間自身はその環境に耐えるべくガスマスクをつけること
を考え出すのです。
71年度はこのような社会を考え直す時代です。
本シリーズの敵ショッカーはそのような社会悪の象徴であります。
社会悪の象徴であるショッカーは自己の発展のために人間を能率化するこ
とのみしか考えません。
彼等にとって人間は能率の悪い働き手であります。
これを改造することによって能率のよい働き手にし改造人間王国を作ろうと
するのです。
もちろん改造によって非能率な批判能力なども奪い、ただ命令を果す働き
手にしてしまうのです。
このような人間破壊者に対して主人公は敢然と戦を挑みます。
彼もやはりその被害者であったからこそ
「人間は人間として生きる権利がある」
「人間は人間の能力の中で生きるので最高なのだ」と叫びつづけるのです。
人類愛、ヒューマニズムがこのシリーズのテーマであり、アンチヒューマニズ
ムの現代社会への警鐘であります。モーレツからビューティフルへ、この人
間回復の思想がこのシリーズの根本思想です。
隣人の為に流す涙を失って能率人間に改造されようとする現代人をその社
会悪の魔手から救うのが主人公のヒューマニズムなのです。

このような根本理念を仮面物という衣に包み奇想天外のアクション活劇とし
て制作したい。
(新考証学48につづく)

   画像1

画像1)は、石ノ森章太郎氏によるデザイン画の1枚。「スカルマン」ではな
く「仮面ライダー スカルマン」という名称が記入されている点に大注目!!
この絵が石ノ森氏によるキャラクターデザインの第1案として、「クロスファイ
ヤー」に先行して描かれた筈がない!「仮面ライダースカルマン」は単に名
称としてのみ在った訳ではなく、このようにドクロのマスクのキャラクター・デ
ザイン案に対応した名称として在った。

   画像2

画像2)も、石ノ森章太郎氏によるデザイン画の1枚。
名称は「みどり仮面グラスホッパー」であり、「仮面ライダー ホッパーキン
グ」の直前か同時期(1970年12月頃)のものと思われる。
つまり、石ノ森章太郎氏によるデザイン案の変遷に関しては、「クロスファイ
ヤー(火炎十字)」→「クロスファイヤー別案(獅子型マスク)」→「仮面ライダ
ー スカルマン」→「みどり仮面グラスホッパー」→「仮面ライダー ホッパーキ
ング」、以上のように整理できる。
尚、バッタをモチーフとしたデザイン画には、「仮面ライダー」と「グラスホッパ
ー」と「ホッパーキング」の名称が列記されているものもある。
また、「クロスファイヤー(火炎十字)」には同じデザインで「ファイヤークロ
ス」と名称が変更されているものがある。


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