新・仮面ライダー考証学 51

前回に引き続き、『テレビ番組企画書・仮面ライダー』から引用する。

ドラマの基調はヒューマニズムです

本シリーズは単なる荒唐無稽なドタバタアクション物ではありません。
過去のスーパーヒーロー一切は主人公に影はもたせませんでした。
その意味で本シリーズはアンチヒーロー物といえましょう。
主人公本郷猛はスーパーヒーローであることにむしろ悲しみをもっていま
す。
普通の人間でありたい、しかし自分はすでにそうではない。
その悲しみは隣人を護ることに彼をかりたてます。
誰もが平和な人間生活を送れるように、彼はそのために自分を捨て石にし
てもいいと願っているのです。
恩師の遺児ルリ子と正夫に関して彼は生命を賭してその幸福を守ります。
過去のスーパーヒーロー物では当然彼は感謝を受けなければなりません。
感謝と賞賛の中にスーパーヒーロー物は立つ筈なのです。
しかし、ルリ子と正夫はあくまでも本郷を父の仇と憎みます。
彼の献身はギマンであるか最大善意にとってもいやらしい贖罪だとしか考
えられないのです。
報いられぬ献身、解くことの出来ぬ誤解その悲しみの重荷を背負って、しか
も彼は雄々しく行動するのです。
これこそアンチスーパーヒーロー、現代のスーパーヒーローの姿で現代の
少年達にとってカッコよい男なのです。
即物的な、あまりにも即物的な現代にむしろ逆行する悲壮さ、それがある
新しい人生の意義を感じさせその意味で新しい明日のヒーロー像を少年達
に与えるその点にこのシリーズの意義を追求して行きたいと思います。

登場人物

クロスファイヤー 本郷猛 25才 主人公
緑川ルリ子 20才 医学生 緑川教授の遺児
緑川正夫 13才 中学生 ルリ子の弟
須藤健介 30才 刑事姉弟の友人
藤堂権兵ヱ 60才 本郷の腹心 父の代からの家令 日頃は倉庫番

以上が『テレビ番組企画書・仮面ライダー』の全文である。東映サイドの企
画書としては『連続テレビ映画企画書・仮題・マスクマンK』『連続テレビ映
画・仮面天使(マスクエンジェル)・企画書』『企画書・クロスファイヤー』 に続
く第4の企画書であり、製本されたものとしては、これが最終の企画書とな
った。
これを受けて、大阪MBSでは『テレビ番組企画書・仮面ライダー(仮)』(藤
岡弘、氏の写真が表紙のもの)を作成(MBSとしては第2の企画書)。
この企画書では、キャスティングが正式に決定されている(近藤正臣氏と島
田陽子さんではなく、藤岡弘、氏と森川千恵子さん)時期であるにも拘ら
ず、本文では主人公の名前が何故かクロスファイヤーのままだった。



画像は石ノ森章太郎氏による「仮面ライダースカルマン」のデザイン画の1
枚。
石ノ森氏はこの時点でマスクの目を透明なプラスチック製にし、普段は黒だ
がエネルギーが充電されると赤くなるとメモしている。
このアイディアは後に折田至監督によって実現され、旧1号のマスクのCア
イには着脱式の赤いカバーが取り付けられた。



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