新・仮面ライダー考証学 52

東映作成の第4の企画書である『テレビ番組企画書・仮面ライダー』だが、
そこで示されている作品タイトルは、仮面ライダー「十字仮面」であり、主人
公の名前は本郷猛=クロスファイヤーだった。
そして、この『テレビ番組企画書・仮面ライダー』の提出を受けて毎日放送
が作成した『テレビ番組企画書・仮面ライダー(仮)』(表紙が藤岡弘、氏の
写真のもの)ではキャスティングが決定されている段階であるにも拘らず、
主人公の名前はクロスファイヤーのままであった。
つまり、これら2冊の企画書が作成された1970年12月の或る時点におい
て石ノ森章太郎氏から提出されていたキャラクター・デザインは未だクロス
ファイヤー(火炎十字)だった事が伺える。
そして、このまま何事も起こらなければ、『仮面ライダー』の主人公はクロス
ファイヤーとして決定される事になった筈なのである。
しかし、そうはならなかった。石ノ森章太郎氏が自らクロスファイヤーのデザ
インをキャンセルして「仮面ライダースカルマン」のデザインを提出したから
である。
平山亨プロデューサーはこれを支持した。
企画書として製本されたものこそ無いが、平山先生による『仮面ライダース
カルマン設定覚え書き』というメモが残されている。
これは『テレビ番組企画書・仮面ライダー』の内容をさらに発展させたもので
あり、本郷猛のオートバイが変形して一種の未来車になるという設定の追
加や、本郷が官憲から追われる設定の削除、緑川ルリ子の弟・正夫の設定
の削除、藤堂権兵ヱから立花藤兵衛への名前の変更、ルリ子が藤兵衛の
経営するスナックでアルバイトをしているなど、より完成された内容のものと
なっている。
だが、「仮面ライダースカルマン」のキャラクターデザインにはMBSの営業
サイドからの反対でNGとなってしまう。
そこで再度、石ノ森氏がバッタをモチーフとしたデザインを考案し、「みどり
仮面グラスホッパー」を経て「仮面ライダーホッパーキング」が完成、キャラ
クターデザインとしてはこれが最終の決定デザインとなった。
しかし、作品タイトルや主人公の名前としては長過ぎるという判断からホッ
パーキングの部分が削除され、正式に『仮面ライダー』で決定とされたので
ある。
尚、クロスファイヤーの時期には他にも様々な名称案が石ノ森氏から呈示
されている。
「ファイヤー十字(クロス)」「十字火面」「クロス火面」「ファイヤーマン」「快傑
十字仮面」「紅十字(クロス)」「サラマンダー」等である。
また、検討台本で仮題として提出された『マスクライダーX』というタイトルも
あるが、こちらは伊上勝氏によるものであろう。



画像は毎日放送の番宣スチール。
小河内ダム近辺の砂利道での特写だが、全身を写したコマからのトリミング
ではない。

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