新・仮面ライダー考証学 53

仮面ライダー・クロニクルズ(1)

『仮面ライダー』の歴史を遡行しようとするとき、差し当たって、その源流をど
こに定めるべきか?
大阪MBSの映画部長だった庄野至氏が東映テレビ事業部長であった渡
邊亮徳氏に土曜日夜7時枠での子供向け新番組の企画を打診したのは1
970年6月の事だった。これに対して渡邊氏は当時主流だった“スポ根も
の”ではなく“仮面もの”を提唱。『仮面ライダー』史の起点はここに生じる。
渡邊亮徳氏が東映テレビ事業部プロデューサーの平山亨氏に、この“仮面
もの”新番組の担当を指示。
平山亨プロデューサーが『連続テレビ映画企画書・仮題・マスクマンK』を執
筆。ただし、これは東映の内部文書に留まって、MBSには提出をされてい
なかった。
平山プロデューサーは脚本家の市川森一氏、上原正三氏、伊上勝氏に新
番組への参画を求め、『マスクマンK』の企画書を叩き台としてブレーンスト
ーミングを重ねる。その結果、東映サイドの第2の企画書『連続テレビ映画・
仮面天使(マスクエンジェル)・企画書』がまとまる。しかし、これもまだ東映
の内部文書に留まっていた。
1970年9月、東映作成の第3の企画書である『企画書・クロスファイヤー』
が完成し、毎日放送に提出される。この中で、主人公をオートバイに乗せる
というアイディアはMBS廣瀬編成局次長の発案だった。
阿部征司氏がプロデューサーとして参画。以後、平山亨プロデューサーを
補佐することになる。
市川森一氏と上原正三氏が『帰ってきたウルトラマン』に参画したいとして
離脱。後に市川氏の紹介で、滝沢真理氏と島田真之氏が脚本家として参
加することになる。
1970年10月、伊上勝氏が検討用台本『マスクライダーX』の第1話「怪奇
蜘蛛男」と第2話「謎の恐怖屋敷」を脱稿。MBSに提出される。
原作者として参画することが決まっていた石森章太郎氏によって“クロスフ
ァイヤー”としての一連のデザイン画が描かれる。MBSサイドもクロスファイ
ヤーの“火炎十字”のデザインを了承。
1970年11月、主人公であるクロスファイヤー=本郷猛役に近藤正臣氏
が内定。
MBSが『テレビ番組企画書・十字仮面』を作成。石ノ森氏によるクロスファ
イヤーと蜘蛛男のイラスト、さらに近藤正臣氏のポートレートが掲載される。
近藤正臣氏の共演者として島田陽子氏が内定し、二人の顔合わせとスチ
ール撮りが行なわれる。
東映東京制作所長だった石田人士氏からの依頼で、内田有作氏が関連事
業室長に就任。東映東京撮影所以外の場所で『仮面ライダー』となる新番
組の制作を指示される。
内田有作氏が八木正夫氏にエキス・プロダクションの新番組への参画を要
請。
内田有作氏が大野幸太郎氏に新番組への参画を要請。大野剣友会が新
番組に参加することが決まる。
1970年12月、内田有作氏と折田至監督が新番組の制作拠点となる撮影
所(細山スタジオ)を川崎市多摩区(現在の住所では麻生区)に訪れる。
内田有作氏が大映テレビプロの撮影監督だった山本修右氏に新番組への
参画を要請。
近藤正臣氏が新番組への出演をキャンセルしたため、新たに藤岡弘、氏が
本郷猛=クロスファイヤー役としてキャスティングされる。
平山亨プロデューサーが立花藤兵衛役として小林昭二氏に出演を依頼。
平山亨プロデューサーが緑川ルリ子役としてエメロンシャンプーのCMに出
演中だった真樹千恵子さんを抜擢。
MBSが「テレビ番組企画書・仮面ライダー(仮)」を作成(表紙は藤岡弘、氏
のスチール)。
石ノ森章太郎氏が“クロスファイヤー”のデザインを自らキャンセルし、新た
に“仮面ライダースカルマン”のデザイン画を提出。平山亨プロデューサー
はこれを支持して、『仮面ライダースカルマン設定覚え書き』を執筆。
12月25日、MBS映画部・東映・石森プロによる第1回制作会議が行なわ
れる。
“仮面ライダースカルマン”のデザインは毎日放送から拒否される。石ノ森
章太郎氏は代替案として“みどり仮面グラスホッパー”“仮面ライダーホッパ
ーキング”のデザインを考案。
1971年1月、内田有作氏によって細山スタジオとの正式な賃貸契約が成
立。〈東映生田スタジオ〉とし、内田有作氏が所長に就任。
MBSからは未だ新番組制作への正式な指示は出されていなかったが、内
田有作氏の判断でエキス・プロダクションに“仮面ライダーホッパーキング”
の〈仮面〉の造形が発注される。
MBSが新番組の制作を正式に決定。1月13日の社内会議において番組
名が『仮面ライダー』と決定された。

(新考証学54につづく)




画像は毎日放送作成の第2の企画書『テレビ番組企画書・仮面ライダー
(仮)』の表紙に使用された藤岡弘、氏のスチール。因みに、この企画書で
紹介されている藤岡氏のプロフィールは以下のとおり。

藤岡弘

TBS“剣道まっしぐら”に出演中、バイタリティーが体から発散してくる様な
男くささ。
スポーツ万能、柔道二段、ボーリングアベレージ150、自動車B級ライセン
ス、フェアレディZを駆るダンディー。昭和22年生まれ25才、デビュー作「小
さなスナック」「落葉とくちづけ」
テレビはNTV「ゴールドアイ」TBS「黒い編笠」
海が好きで海と語る事が趣味のセンスのいい男。


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